二日目は台風の影響もあり、由香里達は予定していた瀬戸内海への旅を楽しむことは出来ませんでした。

貴子さんからの電話では、倉田さんは一夜を過ごした由香里に対して、自分自身の心の中で決別することに苦しんだそうです。
二度目の夜、由香里はもう一人の男性である中井さんと過ごす約束になっていたからです。

もちろん倉田さんは、貴子さんとのセックスにも心を惹かれてはいました。ですが独身の彼は、一夜を過ごした由香里を「理想の妻」として想いをつのらせるようになっていたのです。

食事の時に料理を取り分ける妻の仕草…
目にする神戸の街に様々な興味を持ち、倉田さんの説明に頷く妻の姿…

何気ない由香里の振る舞いが、倉田さんの心を魅力したのでしょうか。
その場にいなかった私は、貴子さんからの電話とメール、後日に聞いた妻からの告白からしか伺い知るしかありません。

倉田さんは今夜、中井さんと愛し合う由香里の姿を目の当たりにする…
一夜を過ごした「妻」が他人と交わり合う傍で、他人妻の貴子さんを愛する…

いくら倉田さんが葛藤を感じようとも、私が他人に抱かれる由香里に対する想いとは比べようがありません。それでも、例え僅かではあっても、私の抱く感情と同じものを味わって欲しいと願いました。
いつか私が倉田さんと会う日がくれば、その事を確かめたいと思っています。

夕方、由香里と貴子さんは二人でホテルのテナントを見て歩いたそうです。部屋に帰った時、それぞれのベットの上に、倉田さんと中井さんからのプレゼントの包みが置かれていました。

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中を開けると、それは美しい柄の施されたチャイナドレスでした。
由香里には純白の生地に淡い色の花、貴子さんには黒に鮮やかな縁取り模様… 予め倉田さんと中井さんがこの日のために用意してくれたものです。

貴子さんはその事を事前に知っていたそうです。
一日目の夜は互いを「夫婦」として…
二日目の夜は「娼婦」として、二人の男性に性の接待を…

それが今回の旅行で貴子さんが計画した演出でした。

―   由香里さんは今夜、娼婦として過ごします
―   チャイナドレスを着て男性を迎え、性の御相手をしていただきます
―   奥様はこのお仕事は初めてだそうですが、御安心下さい

貴子さんからのメールに私は心を揺さぶられました。
添えられた白いチャイナドレスの写真が鼓動を激しく煽ります。

娼婦を演じながら、男性と夜を共にする由香里…
妻でありながら、他人の性欲を満たすために体を差し出す由香里…

私にとって胸を掻き毟られる想いのする光景です。
もちろん、それはあくまで擬似の売春行為… 性行為を彩るための舞台演出であることは承知しています。
しかし、由香里に対する「娼婦」という言葉が、私を狂おしい昂ぶりへと駆り立てたのです。

―   構いません 貴子さんにお任せします
―   どうか、由香里がお客様に失礼のないように教えてやって下さい

私は短い文章に様々な想いと願望を込めてメールを送りました。擬似の演出とはわかっていても、私の心の中では娼婦としての由香里に対する愛しみが込み上げてきます。

チャイナドレスで性の接待をする妻の姿…
男性の茎に舌を這わせ、強張りを愛おしそうに見つめながらも、客との受精を拒む避妊の膜を被せる美しい指先…

夫でありながら私は「娼婦」を演じる由香里を想い浮かべ、下腹部から込み上げる欲望を手で慰めたのです。

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間もなく貴子さんから電話がありました。私が心の奥で求めている実世界との交差を、誰よりも彼女は知っています。彼女は言葉だけで私を妄想の奥へと導いてくれました。

「先程、奥様に御指名がありましたので一応、お知らせします」

私が自慰に浸っていることは、既に彼女もわかっていました。

「奥様はこれからお客様と部屋に入ります。御伝言があれば私が承ります」

私は返す言葉すら思い浮かばない程、自慰での快楽に酔いしれていたのです。
荒れた息遣いから流れる由香里への想いを、貴子さんから妻に伝えて欲しかったのかも知れません。

「川島さん… このまま射精して下さい… 私が最後まで聞き届けますから」

ベットの上で、私は貴子さんと電話で結ばれたまま、滾る精液を放ちました。シーツに白濁液を散らしながら、由香里と貴子さんを喘ぎの中で愛したのです。

彼女は小さな声で頷きながら、恍惚の中で果てる私を慈しんでくれました。

聡明な彼女だからこそ、由香里を託せる…
もし、この後に妻と貴子さんが肌を重ね合っても、私はそれを許し、受け入れられる…

その日の夜、私は貴子さんからのメールをどれ程の想いで待ち焦がれたことでしょう。
暗い寝室の中で、電話を枕元に置いたまま、眠ることも出来ない時間を過ごしたのです。

再びメールが届いたのは深夜を過ぎてからでした。
私は震える手で添付された写真を開きました。

白いチャイナドレスの胸元に置かれたコンドーム… 膜の裾からは「客」の精液が零れ、美しい生地に染み込んでいます。
もう一枚の写真は黒のチャイナドレス… 胸元から襟にかけて幾筋もの白い飛沫が染みとなって残っていました。

私はそれらの写真を心から美しいと思えたのです。息が詰まるほどに喉が収縮し、自分の身体を流れる脈拍が不貞の欲望を激しく煽ります。

二人の娼婦が他人に体を捧げた証…
白と黒の美しいドレスを彩る欲望の跡…

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貴子さんからのメールには、次の文が書き添えられていました。

―   今夜の由香里さんの御客様は二名さまでした
―   二人とも、奥様にとても御満足して下さったようです

夫でありながら、「娼婦」としての妻を自分自身の目で見つめ、狂おしく反り返る肉茎で奥深くまでを貫きたい… 満たされた願望は次の欲望へと繋がり、私の中で果てしない連鎖を繰り返したのです。