「忘れてはいない。ただ、用心深くなっているだけだ」
ソフィアに笑顔で答えながらも、その目は鋭く周囲を気にしている。
「昔からお兄様って神経質なのよ。だから、いつまで経っても誰も嫁に来ないんだわ」
いつもはこんな憎まれ口は叩かないのに、何故かこの時ばかりはウィリアムへの不満が炸裂する。
すると、ソフィアの機嫌取りのつもりかウィリアムが手を差し出す。
「私は誰とも結婚するつもりは無い。いつまでもお前のそばにいてお前を守る」
恩着せがましい言葉に聞こえるソフィアがそっぽを向くと、ウィリアムはかなり乱暴にソフィアの手の平を掴み、ギュッと握り締めて市場の方へと向かって行く。
「お兄様、……痛いわ」
半ば力任せに握る骨張った指の圧力が痛い。「誰とも結婚しない」と言うウィリアムの言葉もまたソフィアの心の内まで痛みを感じさせる。
「私のそばを離れるな。私の許可なく勝手に何処へも行くな」
市場ではぐれない為の兄としての命令なのに、とても胸に響く言葉に、握り締められる手の痛みが一瞬にして消え去っていく。
ウィリアムのその一言がソフィアの心を熱くさせる。
「何処にも行かないわ。私はずっとお兄様のそばにいるの」
目を細め嬉しそうに微笑むソフィア。
その微笑みは天使も抗えないほどの魅力があると、ウィリアムに何度も言われた記憶がある。
そんな魅力的な笑みを向けられたウィリアムは、握り締めていた手を離し足を止める。
「何があっても守り抜く。私の命にかえてもだ」
いつもに増してウィリアムは警戒心が強く、神経質にもなっている。
すると、ウィリアムは、ソフィアのベールに緩みがないか首に回した布先を手で撫でながら確認する。
ベールの淵に沿って、ウィリアムの熱い視線と共に指先がソフィアの額から頬へと這っていく。
これまでこんな触れ方をされたことの無いソフィアは肩がビクッと跳ねる。
「大丈夫だ。ベールはしっかり巻いている。ソフィアが少々お転婆しても外れる事はないだろう」
「……か、監視役のお兄様がいるから問題ないわ」
問題があるのは、見つめられるウィリアムの瞳が熱いと言う事。これまでに感じたことの無いウィリアムの熱い視線にどぎまぎするソフィアは、触れられる指先に身体がビクッとして妙な気分になる。
頭の中が熱に侵され顔も熱くて燃え上がりそうで、自分が今想像もできない程に顔が赤く染まっているのだと分かっている。
そんな顔を見せたくなくてウィリアムの肩へコツンと額を当てる。
「お兄様、私はいつまでも子供ではないんだから」
ソフィアは言葉で誤魔化し自分の気持ちを落ち着かせようとする。
「ああ、子供ではないから、さっきの宿屋の男たちに値踏みされる様に色眼鏡で見られるんだ。さっきの宿屋にいた輩がお前を付け狙うかも知れんのだぞ」
常にウィリアムと共に行動を取るようにと、ごつごつしたウィリアムの手で握りしめられる。
ウィリアムの硬くて骨ばったその手は、商人の手とは違いとても逞しい。そして、剣を持つ手の平をしているのをソフィアは知っている。
その手を感じると、ソフィアの熱くなった身体の熱は冷めていき、気持ちもいつもの様に冷静になる。
そして、その手に守られ続けてきた過去を思い出す。
ソフィアに笑顔で答えながらも、その目は鋭く周囲を気にしている。
「昔からお兄様って神経質なのよ。だから、いつまで経っても誰も嫁に来ないんだわ」
いつもはこんな憎まれ口は叩かないのに、何故かこの時ばかりはウィリアムへの不満が炸裂する。
すると、ソフィアの機嫌取りのつもりかウィリアムが手を差し出す。
「私は誰とも結婚するつもりは無い。いつまでもお前のそばにいてお前を守る」
恩着せがましい言葉に聞こえるソフィアがそっぽを向くと、ウィリアムはかなり乱暴にソフィアの手の平を掴み、ギュッと握り締めて市場の方へと向かって行く。
「お兄様、……痛いわ」
半ば力任せに握る骨張った指の圧力が痛い。「誰とも結婚しない」と言うウィリアムの言葉もまたソフィアの心の内まで痛みを感じさせる。
「私のそばを離れるな。私の許可なく勝手に何処へも行くな」
市場ではぐれない為の兄としての命令なのに、とても胸に響く言葉に、握り締められる手の痛みが一瞬にして消え去っていく。
ウィリアムのその一言がソフィアの心を熱くさせる。
「何処にも行かないわ。私はずっとお兄様のそばにいるの」
目を細め嬉しそうに微笑むソフィア。
その微笑みは天使も抗えないほどの魅力があると、ウィリアムに何度も言われた記憶がある。
そんな魅力的な笑みを向けられたウィリアムは、握り締めていた手を離し足を止める。
「何があっても守り抜く。私の命にかえてもだ」
いつもに増してウィリアムは警戒心が強く、神経質にもなっている。
すると、ウィリアムは、ソフィアのベールに緩みがないか首に回した布先を手で撫でながら確認する。
ベールの淵に沿って、ウィリアムの熱い視線と共に指先がソフィアの額から頬へと這っていく。
これまでこんな触れ方をされたことの無いソフィアは肩がビクッと跳ねる。
「大丈夫だ。ベールはしっかり巻いている。ソフィアが少々お転婆しても外れる事はないだろう」
「……か、監視役のお兄様がいるから問題ないわ」
問題があるのは、見つめられるウィリアムの瞳が熱いと言う事。これまでに感じたことの無いウィリアムの熱い視線にどぎまぎするソフィアは、触れられる指先に身体がビクッとして妙な気分になる。
頭の中が熱に侵され顔も熱くて燃え上がりそうで、自分が今想像もできない程に顔が赤く染まっているのだと分かっている。
そんな顔を見せたくなくてウィリアムの肩へコツンと額を当てる。
「お兄様、私はいつまでも子供ではないんだから」
ソフィアは言葉で誤魔化し自分の気持ちを落ち着かせようとする。
「ああ、子供ではないから、さっきの宿屋の男たちに値踏みされる様に色眼鏡で見られるんだ。さっきの宿屋にいた輩がお前を付け狙うかも知れんのだぞ」
常にウィリアムと共に行動を取るようにと、ごつごつしたウィリアムの手で握りしめられる。
ウィリアムの硬くて骨ばったその手は、商人の手とは違いとても逞しい。そして、剣を持つ手の平をしているのをソフィアは知っている。
その手を感じると、ソフィアの熱くなった身体の熱は冷めていき、気持ちもいつもの様に冷静になる。
そして、その手に守られ続けてきた過去を思い出す。
