「おや、まあ、お嬢さん。お美しいお嬢さんにはこれなどどうだね? 金色にキラキラ光る石入りの反物だよ。それに、その白い肌に映える紅色の薄絹はどうかな? 後ろの色男との夜にはしっかり楽しめる代物だよ」
反物の説明がだんだん卑猥な言葉へと変わり、終いには兄のウィリアムをそんな目で見られたソフィアは顔を真っ赤にして「この人は私の兄です」と大声で叫ぶ。
ソフィアの甲高い声に周辺の者まで驚いて視線を集めてしまう。人目を気にするウィリアムが「興奮するな」と宥める様に声をかけるが、周りの者は皆、何事もなかった様に買い物へと戻って行く。
「おや、すまなかったね。全く似ていないから兄妹とは思わなくて」
「いえ、ごめんなさい。大声上げて」
ウィリアムの恋人か愛人だと誤解されたソフィアは、異母兄弟とは言えそれ程似ていないものだろうかと、後ろに立つウィリアムの顔を見上げてジッと見つめている。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「ううん、何でもないわ。トッド叔父様はどれがお好みかしら?」
慌てて視線を反物の方へと向けたソフィアは、ウイリアムの彫の深い顔立ちと自分ののっぺりとした顔立ちが確かに似ていないと感じる。
男女の差はあっても、口元や鼻の格好、瞼や額の大きさなど、どこをどう見ても少しも似ているところは確かにない。
(私は母親似でお兄様は父親似かもしれないわ。そうしたら兄妹でも似ていなくて当然だわ)
反物を売るこの商人の言葉が気にかかり、ソフィアはお土産の品を選べずにただ目の前に並んでいる反物を眺めているだけ。
「ソフィ、トッドにはこれはどうだろうか?」
反物の並びに紛れ込んだように置かれていた煙草入れをウィリアムが見つけた。
それを手に取り蓋を開けてはケースの作りを見ている。
「トッドは反物よりこう言うのが喜ぶだろう」
ウィリアムは麻袋を足元へ下ろすと口を括っていた頑丈な麻紐を解き、中から小袋を取りだすとお金を商人へと手渡す。
「旦那、こんなにもいいのかい?」
「その代わり、そっちの反物を頂く」
お金の入った小袋の口の紐を引っ張りしっかり結ぶと、それを麻袋へ仕舞い込んだウィリアムが、商人の足元近くにあるモスグリーンの薄絹と反物を指さす。
客側に並んでいる反物とは質が違い、品のある輝きを放つその反物は極上の絹で出来ていると、明らかに安物とはひと目見て違いが分かる。
まさかそれを差し出せと言われるとは思わず、冷や汗を掻きだした商人が、
「ご冗談でしょ、旦那。これは極上の品物ですよ。これっぽっちの金じゃ買えませんぜ」
そう言うと、受け取った金を返そうと、慌てて金を握った手を差し出す。
しかし、ウィリアムにギロリと睨まれ肝を潰した商人は渋々差し出した手を引っ込めてしまった。
反物の説明がだんだん卑猥な言葉へと変わり、終いには兄のウィリアムをそんな目で見られたソフィアは顔を真っ赤にして「この人は私の兄です」と大声で叫ぶ。
ソフィアの甲高い声に周辺の者まで驚いて視線を集めてしまう。人目を気にするウィリアムが「興奮するな」と宥める様に声をかけるが、周りの者は皆、何事もなかった様に買い物へと戻って行く。
「おや、すまなかったね。全く似ていないから兄妹とは思わなくて」
「いえ、ごめんなさい。大声上げて」
ウィリアムの恋人か愛人だと誤解されたソフィアは、異母兄弟とは言えそれ程似ていないものだろうかと、後ろに立つウィリアムの顔を見上げてジッと見つめている。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「ううん、何でもないわ。トッド叔父様はどれがお好みかしら?」
慌てて視線を反物の方へと向けたソフィアは、ウイリアムの彫の深い顔立ちと自分ののっぺりとした顔立ちが確かに似ていないと感じる。
男女の差はあっても、口元や鼻の格好、瞼や額の大きさなど、どこをどう見ても少しも似ているところは確かにない。
(私は母親似でお兄様は父親似かもしれないわ。そうしたら兄妹でも似ていなくて当然だわ)
反物を売るこの商人の言葉が気にかかり、ソフィアはお土産の品を選べずにただ目の前に並んでいる反物を眺めているだけ。
「ソフィ、トッドにはこれはどうだろうか?」
反物の並びに紛れ込んだように置かれていた煙草入れをウィリアムが見つけた。
それを手に取り蓋を開けてはケースの作りを見ている。
「トッドは反物よりこう言うのが喜ぶだろう」
ウィリアムは麻袋を足元へ下ろすと口を括っていた頑丈な麻紐を解き、中から小袋を取りだすとお金を商人へと手渡す。
「旦那、こんなにもいいのかい?」
「その代わり、そっちの反物を頂く」
お金の入った小袋の口の紐を引っ張りしっかり結ぶと、それを麻袋へ仕舞い込んだウィリアムが、商人の足元近くにあるモスグリーンの薄絹と反物を指さす。
客側に並んでいる反物とは質が違い、品のある輝きを放つその反物は極上の絹で出来ていると、明らかに安物とはひと目見て違いが分かる。
まさかそれを差し出せと言われるとは思わず、冷や汗を掻きだした商人が、
「ご冗談でしょ、旦那。これは極上の品物ですよ。これっぽっちの金じゃ買えませんぜ」
そう言うと、受け取った金を返そうと、慌てて金を握った手を差し出す。
しかし、ウィリアムにギロリと睨まれ肝を潰した商人は渋々差し出した手を引っ込めてしまった。
