My Fatherがくれた1本のビデオ・テープ。お正月に観ようかと思いながら・・・やっと観ました。その番組は昨年放送の○HKの「知るを楽しむ」という番組で、今や出版業界でもすごい勢いの幻冬舎を立ち上げた見城徹氏を取り上げた特集モノでした。”出版界の風雲児”という言葉がピッタリの雰囲気の人。

彼と尾崎豊との深いつながりを特集した第3回目。「尾崎豊 内臓同士の擦りあい」というタイトルもすごいですが、本当に尾崎とは戦友めいた関係だったんだということが伝わってきて、思わず見入ってしまいました。

尾崎と言えば、私と尾崎との最初の出会いはラジオ。ラジオから夜中に流れてきた「17歳の地図」を聴いた時に鳥肌が立ったことを今でも覚えています。歌がうまいとか下手とかそんなんじゃなくて、彼の声の持つ妙に人の心を捉えて離さないパワーというか、オーラというか。そういうモノを瞬時に感じたんですよね。ファンと言えばファンでした。もっとも、彼をカリスマとして崇めている尾崎ファンとまではいかないですけど。

見城氏と尾崎の出会いもレコード・ショップから流れてきた1曲がきっかけだったようです。その曲は「シェリー」。そこから彼は尾崎のアルバムを聴きまくり、尾崎と一緒に仕事をする機会を作ろうとオファーをしたようです。尾崎にまさに惚れ込んだという感じ。

その後尾崎は覚せい剤で逮捕され、当然見城氏と尾崎の関係も一度はそこまでになったわけですが、全てを失ってボロボロの尾崎との再会はジムだったという、二人の運命を感じたエピソードです。ジムで走っている白髪交じりで、ダボダボの体の青年?もっと年齢がいっている?そんな後姿を見て、この人の隣で走りたくはないと思った見城氏がサウナへ行きかけた時「見城さん?」とその人から声をかけられたそうです。「尾崎ですよ」でも、余りにも自分の知ってる尾崎とかけ離れたその姿に尾崎豊とは分からなかったらしいです。

尾崎がそこまで落ちぶれた姿を当然私たちは知る由もなかったわけですが、当時見城氏は仕事に対する情熱を見出せなくなっていて、尾崎の再生を自分自身の仕事の情熱の再生とダブらせて、再び尾崎とどっぷりの関係を始めた。尾崎のために会社に内緒で銀行からお金を借りたりして、まさに尾崎と心中するくらいの勢いだったんだと思います。SONYのスタッフ以外で、尾崎のためにこんな働きをした存在がいたことを初めて知ったので、正直驚きました。

尾崎は見事「誕生」というアルバムで、新生尾崎としての再スタートを飾り、初登場オリコン1位という結果。二人で泣いたそうです。でも、尾崎の深い孤独というか、信じた人にはとことん自分を愛して欲しいというわがままというか、それに見城氏がついていけない感がここら辺から出てきたようです。


ツアーには全部ついてきて欲しいだとか、今のレコード会社には信じられる人がいないから、見城さんレコード会社作ってよ・・・尾崎は唯一信じられる見城氏に、真っ向からぶつかって、見城氏はそれを受け止め切れなかった。そこから二人の関係は疎遠になっていったそうです。

尾崎が亡くなる3週間前に尾崎から久しぶりに電話があったそうで、その時も見城氏は尾崎に対してそっけない態度を取ってしまった。あの時「今から来いよ・・・」と言ってやれば良かったと今でも後悔している部分もあるようですが、それでも、あれで良かったと、そう言ってました。

尾崎の訃報を知らせる留守番電話が34件も入っていたそうで、その中で唯一、尾崎再生に向けて一緒に闘ったSONYのスタッフにだけは電話をしたそうです。その人が見城氏に「正直、ホッとしました」という言葉を言ったそうです。普通に考えればひどい言葉に聞こえますが、見城氏も同じ気持ちだったと。

尾崎自身、自分は太く短く生きるから、それについてきてくれ・・・というようなことをいつも言ってたらしいですし、その短い人生を、ものすごいスピードで駆け抜けた尾崎の姿を目の当たりにしていたからこそ、これでやっと楽になれるんじゃないかと、そう思ったからこその「ホッとした」という言葉だったんだと思います。これは尾崎の身近にいた人間たちは、みんなそう思ったのかもしれないですよね。尾崎の歌の圧倒的な存在感は、だからこそ出せたものだったんだと思うし。

第4回の「笑って死ねたら」というタイトルの回では、見城氏は自分の寿命を70歳に決めているというような内容があって、彼自身も常にリスクと隣り合わせで、博打的なことも仕掛けてきて、結果彼は勝ってきて今に至るわけですが、彼自身の心の奥の中は誰ものぞけないものがあるんだろうなぁ〜と感じました。

彼もまた尾崎と同じように、太く短く生きるということをモットーにしているんだろうなぁ〜と。人間は時には息抜きして、休み休みいかないと辛い生き物だけれど、そうじゃなくて、休むことをしないで常に前へ前へ進んでいないと辛い人もいるんですよね。きっと。

久しぶりに尾崎のアルバムを聴いてみようと思います。「誕生」を。