2011年02月06日

ゲーム論メモランダム

http://togetter.com/li/97227

死に舞さんの統語論と意味論のはなし、どこかでちらっと耳にはさんだことがあって、それをヒントに勝手にいろいろ考えてたところでした。どこかでまとまって参照できないかなと思っていたので、これが読めてとてもよかったです(ちなみにustのほうはみようと思ったんですが音がききとれなくてやめちゃいました)

これを読んで思いついたこととか、いままで考え溜めてたことなど。

■統語論、意味論、語用論

・スーパーマリオの「Bジャンプ」は、「画面上方への移動、減速、落下etc」という統語論と、「跳躍」という意味論のカップリングによって成り立つ(以下、「統語論と意味論のカップリング」を「統語論=意味論」と表記する)

・おなじ「Bジャンプ」が、ブロック頭突きにも、障害物の乗り越えにも、敵踏みにもなるというのが、語用論に相当するのではないだろうか。ゼルダの伝説でいえば、弓矢は、敵を攻撃するという統語論=意味論にも、離れたスイッチをいれるという統語論=意味論にもなる。テトリスやぷよぷよの「連鎖」も一種の語用論かもしれない。

■WPRGとJRPG

・WRPGは、ひとつの「空間」において(物理法則を模範とした)複数の統語論=意味論の束を設計する(その結果、物理空間の再現を目指すことになる)。JRPGは、移動フェイズにおける統語論=意味論の束と、戦闘フェイズにおける統語論=意味論の束が、完全に切り替わってしまう。

・WRPGとJRPGでは、統一した統語論=意味論の束を設計するか(シームレス)、さまざまな統語論=意味論の束を切り替えるか(セパレート)が、異なる。

・WRPGは、複数の統語論=意味論の束をまとめるひとまわり大きな統語論=意味論として、「3D空間」の表象を活用する。3D空間を描写し(意味論)、3D空間の物理法則を再現する(統語論)(以下、複数の統語論=意味論を束ねる包括的な統語論=意味論を、「タグ統語論=意味論」と表記する)

・もっとも典型的なJRPGは、移動フェイズにおけるタグ統語論=意味論として「2D空間」を活用し、戦闘フェイズにおけるタグ統語論=意味論として「時間(ターン)」を活用する。「時間」の活用は、レベル制等にもみられる。

■アリスソフト

・複数のタグ統語論=意味論としての「空間」「時間」を切り張りした作品として、アリスソフトのシミュレーションゲームが挙げられるだろう。たとえば『大悪司』では、暴力団の地域抗争をモチーフに、戦闘フェイズの「空間」、部下管理フェイズの「時間」、捕虜管理フェイズの「時間」、風俗店経営フェイズの「時間」等、1ターンのうちに複数の「空間」「時間」が切り替わる(全体が1ターン進むごとにそれぞれのフェイズを1ターンづつプレイさせられる)

・『大悪司』の真骨頂は、時間Aと時間Bを「キャラクター」が横断するところだろう。たとえば、戦闘フェイズでつかまえた女性捕虜を、風俗店いりさせるとか(!)、序盤で活躍したが役不足になった女性戦闘員を、風俗店いりさせるとか(!!)。ようは、おなじキャラクターが、複数の「時間」(戦闘フェイズ/捕虜管理フェイズ/部下フェイズ/風俗店経営フェイズ)において、複数の役割(敵戦闘員/捕虜/味方戦闘員/風俗嬢)が与えられている。それぞれに固有イベントがあったりするので、全体のボリュームがすごい。

・ほかにも『GALZOOアイランド』では、シナリオとシステムを、キャラクターだけでなくキャラクターの一部としての装備品が横断する、といった一幕もある。

■ノンフィールドやりこみRPG

・逆に、ひとつのタグ統語論=意味論としての「時間」にすべてを還元した作品として、アンディーメンテやステッパーズストップの「ノンフィールドやりこみRPG」が挙げられる(AM系とか雪道系とかいわれる)。

・そこでは、「進む」を選択するとダンジョンを1歩進み(歩数が1増える)、「戻る」を選択するとダンジョンを1歩戻る(歩数が1減る。「戻る」がない作品もある)。ダンジョンというもともと空間的な表象が、進む/戻るという時間的な統語論=意味論で表現されている。

・そして、アイテムの発見、NPCの登場、敵との遭遇、仲間の加入等のイベントが、すべて進むと戻るの操作の延長上に発生する。ほとんどのイベントは文字で表現されたものだが、RPGにありがちなものがひととおりそろっている。進むと戻るという単純な操作だけで、既存のRPGとおなじくらい多様な展開がおこる。その結果、パチンコとおなじような射幸性――1回の「進む」の入力において期待する展開の多様さ――を獲得している。

・厳密にいえば、ノンフィールドやりこみRPGであっても、戦闘フェイズに入れば異なるタグ統語論=意味論に切り替わる(戦闘ターン)。したがって、ノンフィールドやりこみRPGの革新性は、もっとも上位のタグ統語論=意味論として「時間」を採用し、それを表現する統語論=意味論(ダンジョンの進む/戻る)を開発した点にあるだろう(JRPGももっとも上位のタグ統語論=意味論は空間的なものだ)

・初期のアンディーメンテは時間というタグ統語論=意味論にひとつかふたつのタグ統語論=意味論を付け加えるだけだったが、現在のアンディーメンテは、時間というタグ統語論=意味論にさまざまなタグ統語論=意味論を加算している(開発フェイズ、育成フェイズetc)。FF8以降のフェイズの多元性を受け継いでいる。

・それに対してステッパーズストップの一部の作品(『雪道』や『プロバビリティ・シー』)は、AMの戻ると進むのダンジョンを継承し、時間というひとつのタグ統語論=意味論にこだわりつつ、移動フェイズと戦闘フェイズを横断する基底的な単位(「剣」や「カード」等)を模索している印象がある。そこには原子論的な世界観がうかがえる。

■WRPG、シューティング、ノンフィールドRPG

・JRPGは、ゲーム全体を統合するひとつのタグ統語論=意味論を表現するのは苦手だが(ロマサガも切り張りばかりだ)、一風変わった統語論と意味論のカップリングを考え付くのがうまい。それは、意味論主導で新しい統語論を導きだしたり、統語論の差異化を意味論で説明付けたりすることで、なされる。

・ひとつの成功例として、ロマサガの「閃き」が挙げられるかもしれない。戦闘中にランダムに技を入手するという統語論を、「閃く」という意味論で説明している。

・上記リンクでもいわれていることだが、既存の統語論から差異化するだけで意味論がともなっていなかったり、意味論だけで統語論がともなっていなかったり、といった欠陥もありうる。その最たるものは、JRPGのサイドビューだろう。実質的にはターン制なのに、なぜそのマスにキャラクターがいる必要があるのか?なぜみっつの弾の攻撃エフェクトが出る必要があるのか?あまりにも統語論をともなわない意味論があふれすぎている。

・批評的な文脈で東方のシューティングが注目されている理由のひとつとして、シューティングが、1.キャラクターという単位だけではなく、もっと細かい単位(弾etc)で、意味論的表象を統語論に組み込みやすい、ということと、2.2D空間というひとつのタグ統語論=意味論にゲーム全体を統合できる、ということが挙げられるのではないだろうか。

・そこから東方の革新性について考えると、キャラクターという統語論=意味論と弾という統語論=意味論の中間にスペルカードという統語論=意味論を設定した点にあるだろう(あるいは、ゲーム外の意味論(設定)とゲーム内の統語論=意味論をキャラクターによって担架しているところなど)

・WRPGは3D空間というタグ統語論=意味論にゲーム全体を統合し、シューティングは2D空間というタグ統語論=意味論にゲームを統合し、ノンフィールドRPGは時間(ターン)というタグ統語論=意味論にゲーム全体を統合している。WRPGとシューティングはリアルタイム制のことが多いが、ノンフィールドRPGは非リアルタイム制=ターン制だ。

■2Dターン制シームレスRPG?

・では、2D空間というタグ統語論=意味論によって統合されたターン制RPG、すなわち2Dターン制シームレスRPGは存在するのだろうか。おそらく、ウルティマやローグが近いだろう。

・JRPGのタグ統語論=意味論の切り替え性は、ウィザードリィに範をとったものだといえる。ウィザードリィはみかけは3Dダンジョンの表象で統一されているが、移動モードの操作系と、戦闘モードの操作系が異なる。つまり、ひとつの3D空間の意味論的表象に対して、ふたつの統語論が切り替わる(ドラクエになると移動フェイズと戦闘フェイズが完全にべつのタグ統語論=意味論にわけられている)

・それに対してウルティマ1、2やローグは、2D空間というタグ統語論=意味論によって統合されている。現代においてウルティマおよびローグの文脈を復活させている作品として、『elona』を挙げたい。

・『elona』は、移動も戦闘も2D空間でおこなわれるし、移動時も戦闘時も操作体系はおなじだ。世界地図や各街はすべてのプレイで共通しており、この点はランダム性のないウルティマと似ている。ダンジョンはローグライクのように自動生成する。ウルティマとローグの折衷として初心者にもとっつきやすい。

・最後にローグライクRPGとして『ディアボロの大冒険』(公開は終了している)を紹介したい。

・『ディアボロの大冒険』は、『ジョジョの奇妙な冒険』の二次創作だ。したがって、ゲームにさきだって膨大な意味の体系がすでに存在していたことになる。そのような意味論的表象の束を一貫して表現するタグ統語論=意味論として、ローグライク的な2D空間が選択されている。

・『ディアボロの大冒険』でおこなわれていることは、『ジョジョの奇妙な冒険』の膨大な意味論的表象を、和製ローグライクRPGの系譜(トルネコ→シレン)のギミックのこれまた膨大なストックと、一対一対応させてゆく、という作業だ。このふたつは量的に拮抗しており、統語論が意味論を導く場面も、意味論が統語論を導く場面もあったことが、さまざまな点からうかがえる。

■追記1

https://docs.google.com/document/d/1dGVVAWuw7qXZsBOXcTLscAy3N_iAC-IukDZ_Ixq5srM/edit?hl=ja&authkey=CLaqycAC

こっちは読んでなかった汗

ジャンル化というのは、関係が固定化した統語論と意味論のカップリングの束、とは考えられないだろうか。だから、そこでは意味論が抜け落ちる(前提と化す)こともあるし、語られたとしてもステロタイプなものにとどまる。

そうゆう意味では、洋ゲーもそれなりにジャンルを形成しているのではないだろうか(わからないが)

そのうえで、洋ゲーと和ゲーは、既存の関係が固定化した統語論と意味論のカップリングの束に対して、統語論と意味論のカップリング全体を差異化するのか、統語論単独ないしは意味論単独をとりだしてきて差異化するのか、が違うのではないだろうか。

即興の例だけど、「いままで戦闘が終了するとゴールドが入手できたので、これからはモンスターを倒すごとにゴールドが入手できるようにしました」→「どうゆう設定?」みたいに、統語論単独で差異化してしまったり、「この武器は二回連続で斬る攻撃エフェクトにしました」→「ダメージは一度だけ?」みたいに、意味論単独で差異化してしまったり、といった事態のことを想定している。

(もう一点、洋ゲーはおおまかなジャンルを共有して、統語論と意味論の関係性全体を暫進的に改良していってて、和ゲーは個々のエレメントごとに差異化していっているかんじもする。これはようはどれくらいの大きさの統語論=意味論を対象化するか(全体か部分か)ということであり、タグ統語論=意味論が単数か複数かということとおなじか)

ゲームをマッピングする軸として、

・タグ統語論=意味論の単数性←→複数性

・統語論と意味論の双対性←→独立性

のふたつがありえるのかもしれない(シューティングやローグライクは、タグ統語論=意味論の単数性と、統語論と意味論が双対性が、共通している)

どちらにしても、和ゲーは統語論と意味論のどちらも膨大なストックをもっており、そのデータベースを徹底的に評価することからはじめるべき、ということは疑いえない。そのうえで、データベースのあり方・利用方法について、いくつかの軸(タグ統語論=意味論の単数性/複数性、統語論と意味論の双対性/独立性etc)をたてつつ、意識化すべきだろう。

■追記2

・厳密にいえば、意味論だけをとりだして差異化する、ということはできない。たとえばFF8やFF9では、攻撃エフェクトの長さをゲームの統語論に利用することができる(長い攻撃エフェクトのあいだ、△連打で必殺技をねばったり、リジェネで回復したり)。というか、攻撃エフェクトの派手さを追求してたんに技を増やしただけであっても、技が増えるということ自体がゲームの統語論に影響をおよぼしている。

・それから、あらゆる統語論はかならずインターフェイス上で表現されなくてはならない以上、統語論だけをとりだして差異化することもできない。「○○は技を習得した」というそっけないメッセージであれ、豆電球のドット絵であれ。

・そうゆう意味では、ゲームは統語論と意味論が分離できないという前提にたったうえで、統語論と意味論が分離できるという幻想・イデオロギーをも、分析の対象にしなくてはならない。



yukiyukio_kun at 02:54│Comments(2)clip!

この記事へのコメント

1. Posted by 井上明人   2011年02月08日 19:42
あら、音聞き取れなかったですか。申し訳ありません。
お手数でなければ、イヤホン付けていただければ聞き取れるかと存じます。
2. Posted by swampman   2011年02月09日 10:22
コメントありがとうございます!

ustとパソコンの音量をマックスにしても、僕には音がちいさくて聴き取りにくかったのですが、いま試したら、むしろイヤホンをとったほうが聴き取りやすかったです。あとで聴きなおしてみます。

どちらにしても、僕は子供のころから音より文字のほうが頭に入るタイプなので(音が聴こえても内容がつかめなかったりします)、気になさらないでください。

有益な放送をありがとうございました。

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