2017年09月20日

ロヴェレートからの手紙

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帰国翌朝、朝9時に大学に出講。帰国届を出し、夜6時まで講義とレッスン。日本での日常に戻りました。
夜、「イタリアモーツァルト協会一同より感謝を申し上げます」という下記のメールが新聞記事とともに届きました。

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御無事に日本に戻られましたでしょうか。今回は遠路はるばるお越し下さり、美しい音楽と交流を通して、得難い忘れがたい経験をさせていただきましたことを、私個人に加え、関係者一同から感謝申し上げます。
協会の方であなたのCDを聴いていましたが、今回改めて生演奏を鑑賞するのみならず、お人柄にも接することでき、大変光栄でした。

本日の「Trentino」誌に掲載された記事も添付します。
記事の後半がアラでのリサイタルの内容になります。
『アラのピッツィーニ邸で午後に開催されたコンサートでは、モーツァルト自身が何度も演奏した同じ部屋で、日本のピアニスト久元祐子さんがフォルテピアノを演奏した。彼女はこのザルツブルクの作曲家に捧げたCDを数多く録音しているが、この日は幻想曲ニ短調と一連の変奏曲に加え、モーツァルトの最もよく知られているピアノソナタのうち3曲(有名なトルコ行進曲付きのイ長調K.331、ヘ長調K.332、変ロ長調K.333)を弾き、非の打ちどころのない演奏で聴衆を歓喜させた。イタリア・モーツァルト週間音楽祭の芸術監督マルビ・ザノーニ氏は、「久元さんのフォルテピアノによる演奏は(ピアノの時の演奏よりも)さらに優しく、尚且つトルコ行進曲は輝かしく威厳があった」とコメントしている。』

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今回の演奏会でお世話になりました皆様、本当にありがとうございました。
遠い日本にいるピアノ弾きを温かく歓迎してくださり、心から感謝しています。
音楽を演奏する、という行為は、言葉の壁、国籍の違いを超えて、人と人が互いを感じ、分かり合える幸福を感じる時間でもあります。モーツァルト演奏において、多くの貴重な経験をさせていただけましたことに御礼を申し上げます。またお会いできる日を楽しみにしています。 Yuko
 



yuko_hisamoto at 23:03|PermalinkComments(0) モーツァルト | 久元 祐子・旅

2017年09月18日

アリヴェデルチ!ロヴェレート

アラでのリサイタルを終え、夜は、音楽祭フィナーレのコンサート会場へ。

リニューアルしたばかりのロヴェレート・ザンドナイ劇場は、イタリアのオペラ作曲家リッカルド・ザンドナイ(Riccardo Zandonai 1883-1944)の名にちなんだオペラハウスで、素晴らしい音響で知られています。
「フランチェスカ・ダ・リミニ」などで知られるザンドナイですが、昨夜のパーティで彼の室内楽のCDを頂戴しました。日本に帰って聴いてみたいと思います。

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Roberto Cappello、Alexander Romanovsky、Alberto Noseの3人男性ピアニストにより、「3台のピアノのための協奏曲 ヘ長調 KV242」が演奏されました(指揮:Andrea Fuoli、オーケストラ:Orchestra Giovanile Trentina)。ザルツブルクで作曲され、ロドロン家の伯爵夫人、令嬢2人に献呈された曲です。

ステージでは、はじめにロドロン伯爵夫人が、流暢なイタリア語、ドイツ語、英語3か国語でご挨拶。
そのあと、イタリア・モーツァルト協会のヴォラーニ会長が、突然「ベーゼンドルファー・アーティストであり、日本のピアニストであり、フォルテ  ピアノ奏者でもあるYUKO HISAMOTOさんも会場にお招きしています。」と桟敷席の私を紹介してくださいました。

「フォルテピアノ奏者」というところでフォルテとピアノの間を大きく開けたのは、一種のかけ言葉だと通訳の出口さんがあとで教えてくださいました。フォルテピアノ奏者であり、フォルテなピアニスト=「強力なピアニスト」という意味で言ってくださったそうです。会場からの温かい拍手と、リサイタルを聴いてくださった皆さんにお礼のお辞儀で応えました。

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今夜のメイン曲「ロドロン協奏曲」は、普段、コンサートでほとんど演奏されることはありません。3台のピアノ、3人のピアニストという大がかりな設定で、いろいろな意味でハードルが高い曲の一つだからでしょう。

今日のステージでは、3台とも鍵盤側を客席に向け、並べて置くスタイル。3人の背中と手の動きが見えて、面白く拝見しました。若手のロマノフスキーさんが第1ピアノを担当し、ロマンティックでアグレッシブなモーツァルトで飛ばし気味。アンコールは、仲良く3人でラフマニノフの6手連弾「ロマンス」を演奏。

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音楽祭打ち上げは、DOGEというイタリアモーツァルト協会本部の近くのレストランで。

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教会の地下をレストランに改造し、聖遺物が納められていた部屋がレストランになったということでした。

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皆さんと「アリヴェデルチ(また会いましょう)!」とハグして別れたあと、夜の静かなロヴェレートの街を散策。噴水のある広場や路地を星明りの中で歩きました。

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翌朝、すでに秋の気配のレオンドーロ・ホテルからヴェローナ空港へ。

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空港で、サラダと珈琲の軽いランチ。
サラダには、オリーブオイル、バルサミコ酢、塩、胡椒がついてきて、自分でかけるイタリアン・スタイルです。
サン・ベネディクトのお水に、サン・フランチェスコのバルサミコ。ありがたい名前がお皿の前に並びました。

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yuko_hisamoto at 21:34|PermalinkComments(0) 味探訪 | 久元 祐子・旅

2017年09月17日

フォルテピアノリサイタル@アラ(ロヴェレート音楽祭)

朝10時半、ロヴェレート近現代美術館(MART=Museo D'Arte Modern)へ。

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マウリツィオ・ポリーニは、ロヴェーレート出身のピアニストですが、彼のお父さんは有名な建築家で、お父様が亡くなられたあと、毎週お墓詣りにロヴェレートにいらしていたこともあるそうです。そしてポリーニのおじさんにあたるファウスト・メロッティもロヴェレートを代表する造形芸術家。メロッティの個性的な作品が多く展示されていました。

シュールレアリスムの画家、ジョルジョ・デ・キリコの絵画や ロヴェレート出身のフォルトゥナート・デ・ペーロの作品など明るい自然光の中でゆったりと鑑賞することができました。

ランチは、再びペッティロッソへ。
野菜サラダ
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鱒のムニエル
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で腹ごしらえのあと、アラに向けて出発。

途中事故渋滞発生。大破した車とバイクを目の当たりにし、背筋が寒くなりました。

会場に着いたのが1時間遅れでしたが、素敵な雰囲気に気を取り直してリハーサル開始。

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モーツァルトが演奏会をしたピッツィーニ邸でのリサイタル。モーツァルトと時を超えて出会えるようで、心ときめきます。

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窓から見える風景・・・モーツァルトもこの自然を見ていたのでしょうか。たくさんの鳥の声が聴こえてきます。
モーツァルト時代の鳥たちの末裔でしょう(笑)。
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一昨日の演奏会場から運ばれてきたヴァルター・モデル(Paul Mc Nulty 2009年制作)のフォルテピアノ。
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楽器を運び調律をしてくださったのはFrancesco Zanottoさん。

天井画が描かれた美しい空間。修復作業が終わりリニューアルしたばかりです。

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フォルテピアノの残響をほどよく残してくれる音響。石と木で造られた部屋自体が楽器という感じがしました。

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今日は、調律のザノットさんの都合がつかず「立ち合い&直前調律」がありません。調律用具を置いていってくださり、演奏会直前の手直しは私が行うことになりました。これまで自分のクラヴィコードやフォルテピアノの調律はしたことがありますが、他人の楽器、しかもPaul Mc Nultyの名器を調律するなんて・・・。少し戸惑いましたが、リハーサル後、唸りかけていた音程の箇所などの調律を行いました。

この「調律」の行為によって、楽器と自分の距離が縮まったように思えます。 楽器の強音、弱音のレンジの広さやハンマーが弦に当たる瞬間のタイミング、ハンマーヘッドに巻かれた皮の状態などが直に伝わり、「自分の楽器」という愛着感が湧いてきす。演奏が終わればもちろんザノットさんにお返しする楽器なのですが、演奏している瞬間は一体とならなければ自分の息遣いは出せません。

日本ですと、コンサート前ギリギリまで調律師さんが面倒を見てくださって、私は弾くだけ・・・ということがほとんどです。今回、図らずもいい経験ができたと思っています。

オルガンも演奏できたモーツァルト。この部屋を飛び回りながら、自由闊達な演奏をしたことでしょう。
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モーツァルトが寝泊まりしたお部屋が、今回の楽屋です。この部屋でモーツァルトは眠り、この部屋が一番のお気に入りだったそうです。
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yuko_hisamoto at 20:03|PermalinkComments(0) 久元祐子コンサート | ピアノ(楽器)について

2017年09月16日

モーツァルト漬けの1日@ロヴェレート

ロヴェレート音楽祭でのリサイタルは、明日で通算5回目となります。これまでは、本番前は、練習に明け暮れていましたが、今年は、あらゆる催しに参加し、「インプット」の毎日です。

昨夜、スリル満点?!のドライブのあと、夜中3時にベッドに入ったのですが、朝6時起床。モーツァルト学会が行われるコングレスホールへ。重厚で美しい建物です。
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音楽美学のCLAUDIO BOLZAN氏の「ピアノ協奏曲KV271、挑発、ユーモアと演劇性」は、ちょうど6月に神奈川フィルさんと共演したばかりの曲で、大変興味深く拝聴。そういえば、そのとき指揮をしてくださった伊藤翔さんは、ニーノ・ロータコンクールの優勝者。昨日、演奏会場で第2位になった若き指揮者にお会いしました。世の中、狭すぎ・・・です。

若き音楽学者MARCO BIZZARINI氏のモーツァルトの「ファンタジー」についての発表も、今回の私のプログラムの曲と共通しており、実演を伴っていたため、大いに共感できました。

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ピアニスト、ALEXANDER LONQUICH氏は、「モーツァルトは自作をどのように弾いたのか」について演奏を交えて、プレゼンテーション。これは、かつての私の小著「モーツァルトはどう弾いたか」と同じ視点で嬉しくなりました。1904年のライネッケによるKV488の演奏における自由な装飾について述べられ、即興性への回帰を主張しておられました。

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他の音楽学者の皆さんは、スーツ姿できちんとした「学会」の雰囲気なのですが、LONQUICH氏は、よれよれのTシャツにジーンズ。インターネットで見ることができる「歴史的演奏」を自分のスマホにマイクをつけてプレゼンテーションをしたり・・・。「現代のピアニスト」として個性的なオーラを出していました。

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学会後の昼食会。
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レストランは、最初の晩に連れてきていただいたのと同じ、ペッティロッソ。以前は宿屋だった建物で、モーツァルトが宿泊したことがあるそうです。

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そこから伸びる「パガニーニ通り」。まさに音楽の街!
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昼食後は、ANNA NEZHNAYAさんの展覧会鑑賞。「モーツァルトとロドロン・ファミリー」を題材に、多くの作品が展示されていました。会場のVILA LAGARINA PALAZZO LIBERAは、3年前に私が演奏会をさせていただいた場所。会場のスタッフの方たちが、覚えていてくださって「CIAO!!」と陽気に話しかけてくれました。

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作曲家でありフィレンツェのモーツァルト協会会長でもあるCESARE VALENTINI氏とピアノを弾きながらKV332のアナリーゼについてお話ししたり、ショパンを聴いていただいたりして、楽しく過ごしているうちに、時計を見ると17時5分!

17時開演のロドロン家で行われる室内楽コンサートに間に合わない・・・と焦りましたが、イタリア時間で始まるコンサート。問題なく席につくことができました。どうやら私もイタリア式の行動になってしまっているようです。M.NOSTITZカルテットによるモーツァルトのカルテットKV458などが演奏されました。マイクを入れているかと思うほどの豊かな残響に驚きました。

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ロドロン家の伯爵夫人は、上品でチャーミング。モーツァルトが曲を捧げた貴族の末裔とお話しできるなんて、
光栄な時間でした。「伝統を守るということは大変なの。時々、肩の荷が重い。。。て思うこともあるのよ。でも幸せなことだから、幸せに前を向いて生きていくしかないわ。あなたは必ず音楽の道を究めてね。」とにこやかな笑顔で励ましてくださいました。

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夜は、ロヴェレートホテルで行われたターフェルムジーク。管楽アンサンブルによるディベルティメントやオペラのアリア、そしてマルツェミーノワイン。スピーチやお土産コーナーなど、陽気な歓声が飛び交うパーティとなりました。

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このあと、「ムゼッタのワルツ」を披露されたソプラノのMARGRIET BUCHBERGERさん。前奏中にピアノの蓋を閉め、歌いながらピアノにひょいと乗り、脚線美も披露。日本ではあり得ない際どい演出?!に度肝を抜かれた次第です。

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yuko_hisamoto at 23:45|PermalinkComments(0) コンサート鑑賞 | 久元 祐子・旅

祈るしかありません・・・

イタリアに来てから、物事が時間どおりにいくことがまずありません。

8時45分開演は明らかに遅刻者を想定しての時間設定。9時をゆうに過ぎてからおもむろに始まる演奏会となります。

7時開演の10分前にステージマネージャーさんが「オン・タイムでいきます。」と楽屋に来られ、3分前に「出番です、お願いします」とノックされる、、、という日本スタイルに慣れている身としては、戸惑うことの連続。

「日本の新幹線でたった2分遅れただけでお詫びのアナウンスが入った!」と観光に来たイタリア人が仰天したそうですが、「遅れ」や「待つこと」に慣れなければイタリアでは生きていけません。そのたびにいらいらしていたらこちらの身がもたないので、ふうっと深呼吸して時計の針をゆったり回し、気持ちを切り替えるようにしています。

イゼーラでの昼食は、本番さえ入っていなければゆったり楽しめるクオリティの高い郷土料理のお店でした。

「楽しくなければ文化じゃない」が口癖のイタリアの人々にとってゆったり楽しむ食事も文化の一つです。

まずは黒トリュフ入りカボチャのスープ
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キャベツの入ったクリームラビオリ
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ポークの煮込みのあとに
デザートが続きました。
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コンサートのための食事としては明らかに食べ過ぎの量なのですが、「郷に入れば郷に従え」ということで。。

夜は、イゼラからレビコへ。トレントのさらに東。温泉地でもあり、観光地でもあります。ここで、ユース・オーケストラの演奏会。トレントを中心にした18歳から30歳の若者が、のびのびと演奏。(これまた予定どおり?!開演時刻が30分遅れました)

音楽祭がプロによる演奏会だけでなく、地元若者の刺激と教育の場にもなり、プロとの共演の機会となることは素晴らしいことだと思いました。

終演後、打ち上げにも参加。エネルギー弾ける若者、指導者、共演ピアニストやスタッフのみなさんと交流。

17時からの私の演奏会は晴天でしたが、夜に入って雨が強くなり、かなり寒くなってきました。

今回はヴァルター・ピアノを弾き、移動は、たまたま同じ名前のヴァルターさんの車。ホテルまで1時間ほどの道のりを送っていただくことになりました。

何故かヴァルターさんは、行きと違った道に入りました。車が一台すれすれに通ることが出来る極端に細い道。

地元の人は近道を知っておられるからだろうと、はじめは不思議に思わなかったのですが、どうやらヴァルターさんは道を間違えてしまったようです。

雨は激しく降り、真っ暗闇。おまけに左はすぐ湖です。少しでもハンドルさばきを誤れば万事一貫の終わりです。

30分ほど走ったところで、事もあろうに目の前の橋に通行止めの石が置かれていて、先に進むことが出来なくなりました。まさに「お先真っ暗!」

イタリアは山道が多くオートマティックだとわずかにタイミングがずれるそうで、ほとんどの人がマニュアル車を運転。普段は縦列駐車も器用にこなし、快調な運転が持ち味のヴァルターさんですが、やむなく今来た危険な細道をバックで戻り始めました。

オーマンマミーア!

オペラ好きのヴァルターさんの車はいつもお気に入りのアリアが甲高い音で鳴り続けていますが、タイヤが土に巻き込まれエンストを起こすたびに、音が止まり車内が真っ暗になります。

木や石に当たり、車はボコボコになっていきます。しかも湖の縁を走る危険なバックです。

いろいろなことが頭をよぎりました。湖に落ちたらまず窓を開けて自力で脱出しよう。トランクに入った楽譜は諦めるしかない。命があれば勉強し直しせばいい。出発前に生命保険をかけてきたけど、部屋の整理をしてこなかった。。。

「ベニスに死す」でなく「ロヴェレートに死す」じゃ洒落になりません。音楽祭の写真入りの記事が昨日大きく載ったけれど、明日の新聞はもっと大きい記事になってしまうだろう、、。

イタリアに来て、時間どおりにいかないとき、連絡がつかないとき、うまくいかないとき必ず返ってくる言葉が「祈るしかありません」。

全てを天に任せよう、と思った矢先、少し広い道に出て無事Uターンが出来ました。ブラーボ!!

無事ホテルに着いたのが夜中の2時。長い一日が終わり、ベッドに倒れこみ、命があることを神様に感謝しました。






yuko_hisamoto at 14:03|PermalinkComments(2) 久元 祐子・旅 

イタリア・ロヴェレート国際モーツァルト音楽祭@イゼラ

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イタリア国際モーツァルト音楽祭でのリサイタル、今年はフォルテピアノでの出演となりました。最新リリースのCD「優雅なるモーツァルト」でフォルテピアノと現代のベーゼンドルファーの両方で同曲を演奏し、またKV331の自筆譜発見バージョンと旧バージョンの両方を演奏した本邦初のCDを高く評価してくださったイタリア国際モーツァルト協会の企画で、フォルテピアノでの演奏会が実現しました。

ヴァルター・モデルのフォルテピアノがトレントから運ばれ、制作者のポール・マクナルティの工房にいらしたこともある調律師さんによって朝から念入りに調整が施され準備万端。リハーサル後も手を入れてくださる真面目な調律師さんでした。

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私のヴァルター・モデル(ペトロゼッリ制作)の楽器に比べて乾いた歯切れの良い音がします。おそらくハンマーの皮がよく張った状態にあるのでしょう。

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石造りの建物はよく響くため、フォルテピアノの演奏にはありがたい限り。お客様が満員になって、ほんの少しデッドにはなりますが、細やかな変化を楽しんでいただける空間でした。日本では、「短足台」と呼ばれる板が使われますが、膝レバーを押し上げてダンパー解放を行うフォルテピアノの場合、膝から下が短い日本人には必要不可欠な板です。日本を出発前にイタリアモーツァルト協会に連絡したところ、「こちらでは、使う人がいないので、、、、」という返事。ほうぼうを探してくださり、舞台の大道具なども担当しておられる美術家が貸してくださることになり一安心。

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モーツァルト協会会長とイゼラ市文化担当官によるコンサート前のご挨拶も会場を笑いの渦に巻きこみ、まさにサロンの雰囲気です。マルツェミーノを飲んで会場入りした私も今日は、イタリアスタイル。インスブルックから音楽祭のツアーが組まれて、観光バスで現地入りされたお客様もいらして、会場は熱気にあふれています。新聞記事の効果もあってか、満員御礼となりました。

下の写真は、演奏会後の打ち上げではなく、演奏会前のひとときです。イゼラという街は、ワイナリーがあり、ドン・ジョヴァンニの台詞に出てくる「素晴らしいマルツェミーノワイン」の醸造で知られています。
「飲んだら弾くな、弾くなら飲むな」という師匠の教えを守り、演奏会前にはアルコールご法度と決めている私だったのですが、「モーツァルトが愛したワインを少し飲んだほうがいいモーツァルトが弾ける」という強い勧めに従い?!ちょっといただきました。マルツェミーノワインにもいろいろランクがありますが、緑のボトルの濃厚なかなり美味しいワインでした。

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一番手前がイゼラ市の文化担当官。一番奥がモーツァルト協会会長。私の左の男性が移動の際、毎回お世話くださっている方です。この男性の運転した車が、夜大変なことになるのですが。。。このときはまだ知る由もありません。

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コンサート前のひととき、風光明媚な風景とマルツェミーノの香りを楽しみました。

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続く・・・

yuko_hisamoto at 02:27|PermalinkComments(0) 久元祐子コンサート | ピアノ(楽器)について

2017年09月14日

Orchestra Haydn di Bolzano e Trento

チェック・インを済ませ、部屋の片づけをしたあと、夕食に繰り出そうと思いきや、どこのレストランも7時半からとか。6時から開けてくれる日本とは違います。カバンの中から羊羹を一切れ。血糖値を少し上げたあと仮眠をとりました。ふと目が覚めると8時10分。慌てて用意をしてロヴェレート・ザンドナイ劇場へ。8時45分開演にギリギリ間に合いました。この劇場は、モーツァルト時代に建てられ、2年前に長い改築工事が終わり、ようやくリニューアルオープンしたところ。素晴らしい音響と雰囲気で、モーツァルト時代にタイムスリップしたような気持ちになりました。

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ボルツァーノのハイドン・オーケストラによる演奏会。指揮とピアノは、アレクサンダー・ロンクイッチさん。イタリア出身でバトラ・スコダ氏のもとで学ばれたピアニストです。モーツァルトのコンチェルト第17番ト長調が、明るく生き生きと奏でられ、引きこまれました。ロンクイッチさんのピアノは、まるでフォルテピアノを弾いているように、透明感があり、すべての音が明快ではっきりと主張する音楽です。オーケストラの音の清潔感と躍動感も特筆に値します。古典奏法は、ビブラートをほとんどかけないので、あらが目立ちやすく、歌うのが難しい、、、といやがる奏者の方も多いのですが、古典奏法によるモーツァルト演奏の素晴らしさを実感した一夜でした。

清潔感を保ちつつ、息遣いと方向性と情感を表すのは並々ならぬエネルギーと技術とチームワークが必要ですが、彼らの演奏はそれらが揃っているように思えました。ロンクイッチさんの指揮により、続いてハイドンのシンフォニーニ長調 N.80。モーツァルト時代、マンハイムオーケストラはこんな演奏をしたのかもしれない、、、と想像してしまいましたが、急激なクレッシェンドやスビト・ピアノ(突然に弱音にする効果)などの変幻自在な
演奏に、大拍手!

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後半のモーツァルト・ピアノ協奏曲第27番も、装飾を加えた自由な演奏で、見事でした。静謐さよりエネルギーが前面に出ているようなところも感じましたが、この晩年の名曲を単に神秘的で肩の力が抜けた天上の音楽としないところもロンクイッチさんの個性なのでしょう。

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終演は午後11時過ぎ。夜7時に始まり、9時に会場をあとにする日本のコンサートとは2時間ずれています。
これでも「北に行くほど開演時間は早い」」そうで、スペインは11時始まりのコンサートもざらだとか。

コンサートの余韻に浸りながら、イタリアモーツァルト協会のヴォラーニ会長とザルツブルクから打ち合わせに来られていたドクター・チヴィディーニと3人で夜のバーに繰り出しました。なんと、そのバーは、その昔モーツァルトが滞在したホテルだったそうです。それを聞いて「え〜!すごい!」とはしゃぎ、写真を撮ろうとする私を制してヴォラーニ会長は「なにをぐずぐずしておるんじゃ。早く中に入って。君はおなかがすいているんじゃなかったのかね。」と一喝。ヴォラーニ会長は、コンピュータ関係のビジネスマンでイタリア人らしからぬ”せっかちさん”です。

モーツァルトが滞在、モーツァルトが演奏、モーツァルトが・・・となると我々日本人は興奮してしまいますが、考えてみるとそこらじゅうに、歴史が残る彼らにとっては、いちいち立ち止まるほど珍しくないのでしょう。

チヴィディーニ氏とは、モーツァルトの使用したヴァルター・ピアノのこと、ハンガリーで発見されたKV331の自筆譜の話題で盛り上がりました。

2000年頃ハンガリーから送られてきた手稿譜を2014年に「自筆譜」と鑑定したのが、ザルツブルク・モーツァルテウム財団。その鑑定に必要なのは、透かし模様で、すぐに判断可能だったそうです。当時の透かし模様を入れる仕組みを教えてくださいましたが、日本の割り印のように、重ねればすぐに鏡のようにわかる仕組みです。

「すぐに判断可能なのに、なぜ4年かかったの?」と尋ねる私に、「それは僕にもわからないなぁ。」と。
ハンガリーの政治的事情など、複雑な理由があるのかもしれないし、単に他にたくさんの事項が山積みだったのかもしれません。いずれにせよ、モーツァルト研究今世紀最大の発見が世にでるまでに、4年の歳月を待った、ということです。

明日は、この自筆譜発見バージョンで、モーツァルト時代のヴァルター・モデルのフォルテピアノで演奏します。

yuko_hisamoto at 23:59|PermalinkComments(0) モーツァルト | コンサート鑑賞