2018年12月07日

フェルメール展

人気のフェルメール展を鑑賞。今回、当時のオランダの同時代人たちの絵画も同時来日。肖像画、風景画、生物画、そして神話や宗教を題材にした作品、風俗画など17世紀オランダの(おそらく当時は、フェルメールよりも著名だったかもしらない画家たちの)作品も同時に見ることができました。

寡作で知られる(現存する作品は35点)フェルメール。そのうち10点が来日ということでフェルメールファンとしては、万難を排して・・・というところです。

残念ながら日本初公開の「取り持ち女」は、期間限定のため見ることができませんでしたし、「恋文」は大阪展のみ。でも「手紙を書く女」「リュートを調弦する女」「牛乳を注ぐ女」などに再会。時を忘れるひとときでした。

1654年から翌年にかけて描かれた大きなサイズの宗教画「マルタとマリアの家のキリスト」に始まり、ほぼ年代順に並べられた作品8点。青く薄暗いフェルメールの部屋は、神秘と静謐さで際立っていました。光の粒子、布地の感触、肌や瞳や唇の輝き。緻密な構図から浮かび上がる女性たちの息遣いと眼差し。そして独特の色合いにも引き寄せられます。

「牛乳を注ぐ女」の復元は見事!その絵の前からしばらく離れることができませんでした。

出口近くの売店では、現代のハイテクで印刷された製品がたくさんありましたが、やっぱり生で見る実物とは色がかなり異なります。

音楽で言えば、生の演奏会とCDデッキから流れる音と同じくらいの差があるのです。
とは言え、、、「本日の想い出」ということで。チケットケースをゲット。

会場を後にし、久しぶりに上野公園の黄金色の銀杏も楽しみました。


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yuko_hisamoto at 22:09|PermalinkComments(0) 美術鑑賞 

2018年12月05日

日本モーツァルト協会 第604回 演奏会

12月5日に行われた日本モーツァルト協会の演奏会に伺いました。
パスカル・ロジェ氏&東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団によるモーツァルト協奏曲の夕べです。

ピアノ協奏曲 第25番、第26番、そしてロンド イ長調KV386をロジェ氏が弾き振り!
舞台に颯爽と現れる67歳のロジェ氏、エネルギーあふれる演奏でした。ドビュッシーやラヴェル、フォーレなどのフランスもののイメージが強いロジェ氏ですが、明快で硬質な音、小気味良いテンポ、初めて聴くロジェ氏の軽やかなモーツァルトでした。

時に、かなり飛ばし気味。端折ってしまった音に一瞬たじろぎながらも空中分解せず、絶対につけていく手腕は、東京シティ・フィルのコンサートマスターに拍手でした。

第25番は、第26番に比べて演奏機会ははるかに少ないのですが、素晴らしい名曲であることをあらためて実感。そしてロンド イ長調 KV386は、協奏曲に比べて、さらに演奏される機会が少ない曲ですが、ニ長調の「戴冠式」の前に演奏する曲としては、調性の面でもナイスカップリング。このロンドは、以前、故小松一彦先生と共演させていただいたことがあります。しばらく弾いていない曲ですが、また譜面を見てみたくなりました。

新幹線「のぞみ」で走りながら道端の花を見るのは、動体視力を持っていないと不可能です。ロジェ氏の頭の回転、スピードに振り落とされないように、すべての音やニュアンスやハーモニーを聞き取るのは、聴取する側にも集中力が要求されるように思いました。

満員の東京文化会館小ホール。モーツァルトの命日に、日本のモーツァルトファン大集合!という風情の演奏会でした。


yuko_hisamoto at 23:58|PermalinkComments(0) モーツァルト | コンサート鑑賞

調律師とピアニストのコミュニケーション

PTNA音楽総合力UPワークショップ2018第8回の今日は、調律師の小宮山淳さんを講師にお迎えして、コンサート・チューナーとしての日々、ピアニストと調律師の関係などについて楽しいお話をお伺いしました。タイトルは「調律師とピアニストのコミュニケーション」。

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今日は、ファシリテーターを私が務めさせていただき、司会進行をお手伝い。先週まで極寒のロシアで調律をしておられた小宮山さん。日本に帰国したら温かすぎて、気温差はなんと30度。寒さには大丈夫だったのに、日本が温かすぎて喉をやられてしまった・・・とか。「講演は生まれて初めてのこと。緊張してます。。。」と咳をしながら始めた小宮山さんですが、楽しいお話が続き、会場は笑いの渦に。

ショパンコンクールでの話題やロシアのピアニスト、プレトニョフ氏との出会い、そしてコンサートツアーでの日々など、仰天の話題ばかり。

コンクールでの調律は、コンクールが行われていない夜中から翌日の早朝。ピアノを提供している各メーカーが、時間を配分し、作業が行われます。コンクール期間中、4時間以上続けての睡眠がとれたためしがない、という過酷な体力勝負の世界。昼夜を問わず元気でいなければできないし、家族にも会えないし、、、。

しかもメーカーの威信をかけてピアノをステージに乗せるまでにも、調律師としての高い技術のみならず、意地、情熱、語学力、音楽への深い理解、そして人間力が問われることがよくわかりました。

そしてピアニストによって音に対する趣味と要求と表現はまちまち。「冬の木漏れ日で白いレースのカーテンが揺れるような音を出してほしい、、、」というような表現をするピアニストもいるそうです。整音をしたピアノを弾いてもらいにんまりしてもらう瞬間、ほっとするとか。ペダル、タッチなど好みを知っている旧知のピアニストの場合は、リハーサルまでにそれに合わせて調整をしておけるけれど、初めてのピアニストのときには、それができません。リハーサル開始後、早いタイミングでのコミュニケーションがありがたい、とのことでした。

ところで、プレトニョフ氏はモスクワから400キロの都市でのツアーのために、自ら操縦する自家用ヘリコプターでモスクワまで迎えに来てくれたそうです。ところが小宮山さんは、大の高所恐怖症。手からも顔からも脂汗だったそうですが、操縦席から「大丈夫か」と聞かれ、「怖い」と言えず「は〜い。元気!」と後ろの座席で答えたそうです。調律師さんってやっぱり大変!

ピアニストの希望に近づき、ピアノのコンディションをベストに持っていき、音楽にひたすら奉仕する職業。私達演奏家にとり、調律師さんは、共同作業の相棒であり、かけがえのない存在であることをあらためて感じました。




yuko_hisamoto at 22:45|PermalinkComments(0) ピアノ(楽器)について 

2018年11月30日

英語FB

大学ではFB(Faculty Development) が定期的に行われています。教育能力を高めるための実践的方法を学ぶことを目的としたもので、他の科目の先生の授業を見学できる貴重な機会です。
けれど自分の授業やレッスンが目いっぱい詰まっていて、チャンスを逃してしまうことがほとんど。

今日は、ラッキーなことに英語の中西千春先生の英語の授業を拝見させて頂くことができました。
朝8時55分。廊下を歩く中西先生は、踊るような軽やかな足取り!
先生のエネルギーは、学生たちにも波及し、眠たげな顔で入ってくる学生たちが、授業を受ける中でどんどん元気になっていくのが手に取るようにわかります。

手作りの名札が机に置かれてあり、ファーストネームで呼ばれる学生たち。先生との距離感が近く、積極的に質問したり、挙手したり、発言したりしやすい雰囲気が、すでに出来上がっていました。控えめが美徳とされる日本で、一歩前に進んでいくことが英会話の第一歩。クラスの皆で手を取り合って歩みを進めているようでした。

90分という時間を能率よく使っておられ、出席をとるタイミングも無駄が無く、テスト形式で理解度を確認しつつ一人一人のレベルに合う指導を行い、ヒントを与えたり、励ましたり、見守ったり・・・。
ペアになってロールプレイを行い、互いに答え合わせをする中で、60パーセントに満たない場合は追試を行い、確実にフィードバックとフォローが行われています。

ネイティブスピーカーのリスニングも含めた最近の英語教材の充実もあらためて知ることができました。

授業の最後は、プレゼンテーション。題材は、学生が普段から馴染みのあるyou tubeやアプリについて。一人一人、自分のお気に入りのサイトなどを紹介していくのですが、私の知らないものばかり。
元気と笑いの中で英語を学ぶ楽しい授業でした。

挨拶や礼儀も含め、学ぶ姿勢を英語の授業の中で自然に身につけることができる・・・幸せで恵まれた学生たちの姿にほっとするとともに、中西先生の牽引術に拍手!でした。



yuko_hisamoto at 22:56|PermalinkComments(0) 国立音楽大学 

2018年11月28日

デームス先生90歳記念ピアノリサイタル

紀尾井ホールで開催されたイエルク・デームス90歳記念ピアノリサイタルに伺いました。

10年ほど前、デームス先生のマスタークラスで薫陶を受けたとき「バッハは、私の頭脳を常に明晰にしてくれる。自然の静けさは、私の心をファンタジーで満たしてくれる。歴史的ピアノは私に多くの事を教えてくれる。」という言葉が印象的でした。それは今でも私の座右の名になっています。

前半は、バッハの「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調」 に始まり、モーツァルトのイ短調の「ロンド」、そしてベートーヴェンの「ピアノソナタ作品111」。そして後半はドビュッシーの「映像」全曲とフランクの「前奏曲、コラール、フーガ」。

全て先生の十八番の作品が並びました。調性的にも考え抜かれたプログラミングで、全体が一つのデームス・ワールドとして完結しており、アンコールのドビュッシー:「月の光」、そして自作の「ひまわり」まで「音楽」に身を捧げた一人の芸術家の姿が立ち上るステージでした。

レッスンでは、指使いをすべての音符に書き込み、念入りに彫琢し、妥協を許さない厳しい方です。人にも自分にも茨の道を求める中で、時とともに「音楽の真髄」と「演奏の悦び」だけが残っていくように感じました。まさに鍵盤上の草書の世界です。

「100歳まで演奏し続けることを決めたよ。」と75歳のデームス先生が私に仰ったことがあります。オーストリアのガーベルクでのマスタークラスが終わり、山道を一緒に歩かせていただいているときでした。今日の「月の光」を聴きながら、そのとき見た月の美しさと明るさと大きさを思い出しました。100歳まで・・・の言葉はそのとおりになるような気がしています。

60歳くらいでリスクを恐れて暗譜をしないことを選択するピアニストが多くいる中で、すべての曲を暗譜で演奏するデームス先生。単に暗譜ということでなく、心で弾くには暗譜が必要である、というお考えを貫いておられます。そのためのリスクは厭わない潔さと矜持、そして並外れた記憶力に感服した一夜でした。

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yuko_hisamoto at 22:24|PermalinkComments(0) コンサート鑑賞 

2018年11月23日

つかの間の休息

大学のキャンパスの銀杏も色づき始めました。

今日は、大学の試験が少し早めに終わったので、昭和記念公園まで足を伸ばし、雑木林を散歩。

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風に吹かれ、落ち葉を踏みしめ、木漏れ日の中でしばしの珈琲タイム。
赤い蔦がからまる古木も風情があります。

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1時間半のリフレッシュのあとは、気持ちもすっきりしていつもより練習がはかどりました。

あんなに暑かったのに、しっかり秋が来て、冬が来る・・・。四季の移り変わりに感謝!です。

ところで、先週の「演奏解釈」の時間に、チャイコフスキーの「四季」を取り上げ、それぞれの曲を味わいました。もともとペテルブルクの出版社からの依頼で月刊誌の付録としてチャイコフスキーが作曲した12曲。それぞれの曲には、同時代の詩がセットになっています。24人のクラスですので2人で組になって1曲ずつ担当。

ペーターズ版などに、抜粋の4行だけ掲載されているのですが、その詩の原文を調べてくる、、、という課題を出したところ、国会図書館のサイトや大学の図書館で調べあげて、発表してくれた人もいました。リサーチ能力に拍手!

私が若い頃は、遠くまで足を運び、手探りで膨大な時間をかけて探していたものが、ネット時代の昨今、クリックひとつで見つかったり、図書館のスタッフの方がすぐに見つけてくださったりします。

そして「ぐぐる」(GOOGLEで調べる)ことが当たり前の世の中になり、わからないことをずっと覚えていて探求していくという姿勢は持ちにくい時代と言えるかもしれません。逆に、簡単に手に入る膨大な情報量をどのように整理し、自分の中に取り込んでいくのかが、新しい課題。大切なことは何かを、選び取る鋭い感性が要求されているように思います。

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yuko_hisamoto at 23:01|PermalinkComments(0) 雑感 

2018年11月16日

やわらかな糸 黄昏れゆくウィーンのしらべ

MUSICASAで開催されましたソプラノ安田久美恵さんのリサイタル「うたvol.6」の伴奏をさせていただきました。

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19世紀末ウィーンで活躍した作曲家を集めた素敵なプログラム。ロット「すみれ」、シュレーカー「遊糸」、コルンゴルト「夏」など初めて演奏する曲もたくさん入っていて、音楽との新しい出会いが嬉しい一夜でした。

「ウィーンで活躍」と一口に言っても、世紀末を生きたそれぞれの作曲家の人生は十人十色。ブラームスのように若くして頭角を現し、充実した音楽人生を送った作曲家もいれば、H.ロットのようにブラームスから手酷くけなされ、ウィーンから去る電車の中で体調を崩し、失意のうちに亡くなった作曲家もいます。ロットの「すみれ」には、その儚さ、あやうさ、悲しさの響きが満ちていて、弾いていても胸がしめつけられるような感じがしてきました。そしてR.シュトラウスの「赤いばら」からあふれ出る官能の響き、ヴォルフの「ミニョン」に見られる圧倒的なドラマなど、この2ヵ月あまり、合わせ練習を重ね、準備に取り組む中で、次第に虜になっていきました。

繊細でチャーミングな歌唱と温かなお人柄の久美恵さんを応援するファンが詰めかけ、会場の皆さんの感性と私達奏者の「やわらかな糸」もしっかり結ばれたようなひとときでした。

そして、その傍らではベーゼンドルファーのウィーンナートーンが、ウィーンで生まれた音楽に寄り添い、包んでくれました。

天井が高く、奏者を取り囲むようなMUSICASAの空間がリートの演奏、聴取にピッタリで、隅々まで歌の細かなニュアンスが伝わっていく実感がありました。アンコールの最後は、ロットの「すみれ」に冒頭の音型がそっくりの「この道」。

打ち上げは、近所の居酒屋「どろまみれ」へ。モーツァルト研究の安田和信先生、今回ドイツ語の対訳をされた船木篤也先生、ベートーヴェン研究の沼口隆先生らと遅くまで音楽談義に花が咲きました。 

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yuko_hisamoto at 10:30|PermalinkComments(0) ホール・音風景 | 久元祐子コンサート