たんこぶ 590回 2019.08.13『匂いでわかる』
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 若い頃は、50歳まで必死に働いて経済基盤を作り、50歳から社会問題に声を上げ、60になったら、今度は若い人たちの下支えを、というふうに考えていた。現実には、41歳で「石原三国人発言」とガチに渡り合うことになった。辛淑玉連載 たんこぶ

 ふと周囲を見渡すと、先輩世代は今も元気に世直しのために声を上げている。頑張っているなぁと思うのだが、勘違いしている人も少なくない。弾よけにもならない「オレが」「オレが」がどうも鼻につくのだ。50を過ぎたらステージを20代30代に明け渡し、私たちは若者たちの応援団と尻拭いだけでいいのではないだろうか。

 先日、貧しい中で子どもたちに絵本を贈り続けている友人が、ある図書館の司書の人の話をしてくれた。 

 彼女の知り合いの児童がいじめにあい、避難先に選んだのが学校の図書館だった。図書館で時間を過ごすことが長くなった児童の教室の机に、ある日、ちぎれた紙が置いてあった。手にとった児童は、その紙に「図書館の匂いがした」ので、何かあると思い、そのままポケットに入れた。

 すると、翌日もまたちぎれた紙が机の上に置いてあった。何日か経って、集まったちぎれ紙をパズルのようにつなぎ合わせてみると、赤いハートの形になったという。組み合わせて、これを発見した児童は、どれほど嬉しかっただろうか。

 子どもたちの避難場所になり、必要な知識を与え、そして、「大丈夫だよ、私が応援団だよ、あなたを愛している人がここにいるよ」と、メッセージを贈り続けた司書。

 児童が、切れ端に図書館の匂いを感じることができたのは、それまでに児童と司書との間に深い、そして暖かいつながりができていたからこそだろう。私は、そんなふうに子どもを包み込める大人になりたい。

 若者の嗅覚は鋭い。理論ではなく匂いや直感で理解する彼らは、大人の嘘をちゃんと見抜いている。そして、助けてくれる大人がいないからこそ、忖度して強い者に迎合するのではないか。
 大人が、ちゃんと大人にならなければ。

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