気軽に楽しく美しく

アンテイーク着物コレクターのYUKOが着物の女の写真を中心に、短・中編のお話や詩を組み合わせて織りなす、時限を超越した世界です。サブのコレクションページ「銘仙の時代の女」http://blog.livedoor.jp/yukononono-12/も合せてどうぞ。

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小娘だった頃のあたしはコンプレックスの塊だった。
今ひとつ熱の感じられない彼氏のセックスについて人生の大先輩の女性に愚痴をこぼしたことがある。
「私に魅力が足りないのかしら?」
その時、その女性は鼻で笑って言ったのだ。
「女の体はね、好きな男に思いっきり愛されれば、その男に合わせて変わっていくものなのよ。あなたの彼氏があなたに満足してないとしたら、それは男の愛し方が足りないからよ。」
それを言われたのは十代の頃。何を言われているのかまるっきりわからなかった。
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それから長い時を経て、幾人もの男を渡り歩いて。
今は、その言葉の意味がわかる。
だから私が若い人に伝える番。
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美しくいたければ
魅力的でいたければ 愛されなさい。
愛されたければ 
自分自身を そして相手を 愛しなさい。
自分自身を愛するためには 魅力的であろうとするでしょう。
くたびれて、だらけた自分を愛せないでしょう?
まず自分自身が愛せる自分を作ったなら
きっとその自分を愛してくれる人に出会えるはず
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私は今、あの人生の大先輩の言葉を若い人に送りたい。
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椿が落ちるときは特別な音がする。
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雪の降り積もる音とも違う。
枯葉の舞う音とも違う。
その音が、古い桜に住まう女を呼び起こす。

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椿さんえ。
この春は少々早うないかい。あたしゃまだ、寝足りないよ。


椿の葉がさやさやと笑う。

桜さんえ。
そうひどく早いこともないさえ。ほれ、土筆も菫もお待ちかねさ。
水仙さんもそろそろおねむであくびをしとる。早う支度をおしな。

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桜の女は長い長い髪を振ってううん、と伸びをして、高くなってきたアマテラスを目で追いかける。鼻をひくひくさせて、風の中の梅や沈丁花の香りを嗅ぐ。

おや、本当に、もう頃合いのようだ。椿さんや、起こしてくれてありがとうなぁ。

また来る年もつつがなく会いたいねぇ。

何十年も繰り返されてきた挨拶をかわして、椿はほとりほとりと眠りに落ちていく。
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桜は天に手を伸ばし、アマテラスに目覚めの挨拶を送る。陽の神は気がついたのか、気が付かぬのか。代わりに周りの大地がさんざめく。おはよう。桜さんや、待ちかねたよ。
答える桜の微笑みに、花もない枝がふわりと桜色に染まる。

桜が開けば春風が遊びにやってくる。気の早い蝶や蜜蜂も春の舞を始める。
そうして春は今年も繰り返される。

椿さんえ。お休みなぁ。 
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梅が咲いた。
「まるで君のような木だね」とあなたが言うから
「1年のうち、ほんのわずかしか咲かないということでしょうか」と拗ねたら
 小さな花のひとつひとつを指して、
「これは君の優しさ」「笑顔の可愛らしさ」「拗ねた顔の愛おしさ」などと、ひとつひとつ真面目な顔で唱え始めた。私が赤面して止めようとしたところで、笑って木を抱くように両手を挙げて、
「小さな美しさが集まってこの美しい木になるのだね。たくさんの愛しさが集まって君になるように」と振り返った。
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 嬉しいやら、照れくさいやらで照れ隠しに「でも、梅はすぐに枯れてしまいますよ」と返した。
「そりゃあ、生きているうちには辛いことも悲しいこともいろいろとありますよ。辛かったら泣けばいい。愚痴を言ってもいい。あたってもいい。僕が受け止めてあげるから。そしてまた、笑顔を咲かせればいい。その笑顔に僕は癒されて、助けられる。もっと頑張ろうと思える。人の関わりはそうやって巡っていくのですよ。そうでしょう。」
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 抱きしめる腕にあがらう力はもう、無かった。
   鶯が、からかうように鳴いている。
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撮影:関健一
文:YUKO

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