気軽に楽しく美しく

アンテイーク着物コレクターのYUKOが着物の女の写真を中心に、短・中編のお話や詩を組み合わせて織りなす、時限を超越した世界です。サブのコレクションページ「銘仙の時代の女」http://blog.livedoor.jp/yukononono-12/も合せてどうぞ。

 着物の中でもアンティーク着物をこよなく愛する私としては、大好きな着物が着られなくなった時というのが一番悲しいのです。
 好きな着物は洗張りをしてでもと思うのですが、実際、持っていっても「これは無理」と判断されることが多数。持って行くまでもなくどう見ても無理(⌒-⌒; )ってのもあります。布が擦り切れたり、ひどく虫が喰ってたり(これは虫が喰っていること前提でお安く購入したものがほとんど。今のマンション暮らしでは虫食いにあうことはほとんどありません。)となると泣く泣くさよならすることになるのですが・・・

 捨てるのは絶対ヤダ。
 誰も喜ばないような布草履とかにされるのもヤダ。
とデットストック化していたのです。

 それがしばらく前に「一閑張 misato」さんに出会ってから着物達を安心して次の命に送り出すことができるようになりました。

 例えば、シミだらけ(購入時から)&裾の擦り切れでお嫁に行ったこの着物はこんな素敵なバックに。
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布が弱って、ピーッと裂けてしまうようになったこちらの着物はこんな感じに
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布が弱って裂けまくりだけど、せめて撮影だけでもとがんばったこの着物
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こんな風に生まれ変わらせていただきました。

かわいい着物達の行く末はやっぱり気になるもの。第二の命をもらったこの着物達に幸多かれと一時の宿り木であった私は橋渡しとなれて幸せです。

misatoさん、ありがとう(^^)これからも宜しくお願いします




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祟りがあると言われて人の寄り付かないこの入江では、魚も気が緩むのか驚くほどよく釣れた。今日の大物はオオウナギ。さて、この白焼きで飲む酒はさぞかし旨かろう。
帰り支度の背にふと視線を感じて目をやると、妙に古めかしい女がいた。
いつからいたのだろう。どきりとしたが、たかが女だ。

「のう、お前様。ものは相談じゃが。」
女が口をきいた。言葉までが古めかしい。

「その魚籠のウナギを放してやってくれんかな。」
驚いた。そんなところまで見てやがったのか。
だが、黙って放してしまうのはあまりに勿体無い獲物だ。

「放してやらないわけでも無いが」
つられてこっちまでおかしな言葉使いになってくる。
「それで俺にはなにかいいことがあるのかね?」
「いくら眷属とはいえ、餌と見ればすぐ喰らい付くからこんなことになるんじゃが・・・」
女の言葉は妙に大きく響いた。「眷属?」バケツの中でウナギがぱしゃりと動いた。
「お前様の言うこともわかるが、そやつを連れて行かれると話し相手に困る。生まれついての水の生き物は話相手になるほどの心がないからの。長く水に住み着いているといずれわすれてしまうのだが、そやつはまだ話ができるからなぁ。それともお前様が我の話し相手になってくれるかの?おお、それも良い。お前様を引き込んで鮒にでもなってもらおうか。話し相手が増えるのは嬉しいぞえ。」
夏だというのにぞわりとする冷たい風が吹き付けて思わずバケツを取り落とした。
水の中に立つ女の背後から無数の視線が刺さるのを感じる。いる・・・!何かいる・・・
女の手がゆらりと動いた。声ならぬ声が頭の中でワンワンと響く。
おいで・・・オイデ・・・

「うっ、うわわ・・」何もかも振り捨てて脱兎と逃げ出す目の端にウナギが嬉しげに水に戻るのが見えた。頭の中を女の高笑いが響く。
ソノ命、アズケテオコウゾ。眷属ヲ、戻シテクレタ礼ジャ

もちろん、それ以来、あの入江には近づいて無い。

撮影:関健一
文章:YUKO
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 都を荒らしまわった酒呑童子と茨木童子が源頼光によって滅ぼされた後、大勢の女達が残った。
 それは全員が拐われてきたものであったが、長く鬼の気にさらされてきたものは、その性根が汚されており、その見た目は美しくとも心の根というか、なにやら大切なものが失われていると思われるものが多かった。 
 さても、懲する訳にもいかず、都へ返す算段をしていたところ、四天王の一人が頼光にどうも毛色が違う女がいると耳打ちした。

 女達が集められている岩屋へ赴けば、女達が我先に頼光に群がる。名のある鬼の一団を誅したなら今後の出世も見えようというものだ。女達の媚には苛立ちこそすれ、心にそよぐものはひとひらもない。
その中にその女がいた。

 顔立ちはそれなりに美しいのに、他の女達と違って華美でない小袖をまとい、やたらと媚をうることもしない。呼びたてると訝しい顔をしながら丁重に手をついた。 
「端女にも見えぬが、その成りはこの中では珍しいな。」頼光が言えば
「私は山のふもとの村の村長(むらおさ)の女房でございます。御姫様がたと同じように振る舞うことなどできませぬゆえ」
 背筋を伸ばして凛と答える姿はなるほど、毛色が違う。
「近隣のものか。では、姫がたのようにあれこれ手続きを踏む必要もないな。女房といったな。村に帰るがよいか。実は共に鬼を退治たものが、お前に心を寄せておる。鬼に拐われたなら、夫(つま)も諦めてもおろう。お前が良ければ話をしてみぬか?」
 女、平伏して言うには
 「夫はとうに亡くなりました。私の村が鬼にみまわれた時、夫は私を守ろうとして茨城さまの逆鱗に触れて。気が付いたら、私を守ろうと立ったそのままの姿で木の姿になっておりました。」
 女の頬を涙がぼろぼろと溢れる。
 「私も死にたかった。でも、舌を噛むなどいくら試みてもできぬ。鬼が殺してくれぬかと言うことには兎角あがらい、楯突きましたがなぜか殺してくれません。私は、命と引き換えに私を守ってくれた夫を裏切ることはできません。どうぞ、汚されたものとして成敗してくださいませ。自分で死ぬことはどうしてもできなかったのです。」
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 頼光は話半分と女に心を寄せる金時をつけて女を村へ送らせた。
 鬼に拐われた女の帰還を心から歓迎するものはあまりない。ましてや山の村では余計だろう。つめたくあしらわれれば気持ちが変わるだろうという意趣もあった。

 女は村に着くとまっすぐにかつて自分が住んでいたという家に向かう。その家は誰も継ぐものがおらぬらしく、風雨にさらされてぼろぼろになっていた。その小さくはない屋敷の中で迷いもなく女の足が向かったのは屋敷に負けずぼろぼろになった柱のように仁王立ちした男の木像の前。見上げた女の頬を幾筋も涙がつたう。

 「あなた。長いこと、待たせてすみません。会いとうございました・・・」
木像にすがって泣く女をなぐさめるすべはなかった。

 その後、女がどうなったかは伝えられていない。木像はその細やかな作りを評価され、幾つかの収集家の間を転売されたという。その木像も時の中で崩れ落ち、無くなった現在。仲の良い庄屋夫婦の魂が再び寄り添っていることを願う。

  *      *       *
この写真は2015年に関健一さんにより撮られたもので、それから内容をずっと温めてきましたがなかなかしっくりハマるシュチュエーションを思いつかずにおりました。
やっとできたと思ったけど、平安時代ってあまり資料がないんだよね。
細かい呼称に少々不安は残っておりますが、お友達の考古学の人とか、日本語教師さんとかから、愛のムチが飛んでくることを期待しております(^^;保存

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