2015年08月25日
真の心は隠す物
ついったーで滾ったので久々に。
酷く乱暴な怒号と共に鷲づかみにされていた胸元は声と同じかそれ以上に乱暴に突き放された。黙って微笑みの一つでも浮かべていれば愛らしい顔は今、誰が見ても明らかな怒りで赤く染まっている。 そんな三月の顔を、ありかは平然とした顔で見返していた。 「なら、どうするの?」 「決まってるだろうが。てめぇに言うまでもねぇ!」 「そう」 まるで気のないようなそっけない返答に、三月は忌々しげに舌打ちで返す。その苛立ちは、目の前でまるで平素と変わらずに乱れた胸元を直しているありかに向けたものだけではなかったのだろうが。 雪のように白く長い髪を翻し、その場を去っていく後姿を、ありかは目を細めて見送った。 きっと、彼女はまた戦いに行くのだろう。自分達など影も形も無かった大昔から紡がれ続けた、彼女の家の「悲願」と言う名の歪で腐りかけた楔と。 彼女なら。 もしも彼女が「桃園寺」ではなく、「深草」なら。 彼女はその願いとも戦うのだろうか?そんな不毛な考えを、ありかは小さな吐息と共に体外へ吐き出した。 そもそも、「願い」の本質も中身も違うのだ。考えても無駄な事である。 何より、ありか自身は己の家の「宿願」への道程と己自身の「悲願」の道程が重なっている今の現状を甘受しているのだから、三月のように家と変えたいとも変えようとも思っていない。 しかし、それでもありかにとって、三月の背中は少し眩しいものだった。 ああも真っ直ぐに生きることができたなら――― 「……馬鹿みたい」 つぶやかれた言葉は、彼女に向けてか、それもと己に向けてか。 数度、頭を振ってありかは脳内を切り替える。 さしあたって、羨望などという不毛な考えをめぐらせるよりもありかにはやる事があった。 少なくとも現時点で先ほどまでの己よりももっと馬鹿げた妄想にとらわれているであろう、「友人」と名乗っていた男に一言言いたいことがあったのだ。 @@@@@ 腑抜けていた目が少し活力を取り戻した、ように見えた。 それでもありかが見慣れていた、あの多少怪しいがどこか子供っぽい好奇心に光る目には何かが足りなかったが、数分前よりは随分とマシか、と結論付け、ありかは康秀のほほを包んでいた手を放した。 この先、どう行動するのか、もしくはしないままなのか。 それはこの男次第である。これ以上に深入りするほど野暮にもおせっかいにもありかはなるつもりは無かった。 「……最後に一つ、貴方に言葉を返してあげる」 それでもこんな事を言う気になってしまったのは、過去に彼自身に言われた言葉を、ありかなりに少しは考えたからだ。 「貴方、いつか私に言ったわよね?「友達は頼るものだ」って。貴方の周りには、少なくとも私よりはその「頼れる人」が多いと思うけど?」 少し目を丸くした康秀を、ありかは見下ろしながら肩を竦めた。 「自分にしか目を向けないで一人になった気で居るのは愚かを通り越して滑稽よ。貴方が本当の馬鹿じゃないのなら、少しは周りを見たら?」 寂しいと、暗く荒れた部屋で一人呟かれた言葉。 かすかに聞こえたそれに、少しだけ、応えてやりたくなった。 ただ、それだけなのだけれど。 @@@@@ 日永さん宅、三月ちゃんと康秀さんお借りしました。 素直に「一人じゃないよ」「貴方を必要としている人は他にもいるよ」「寂しくないよ」と言わないのがありかクオリティ。 ちなみに、「友達は頼るもの」云々はいつぞやの絵茶で康秀さんにありかが言われた事を私がしつこく覚えていただけですすみません。
「そんな訳ねぇだろうが!!」
ありか的には、今までの犠牲と過程を間違っていると全部捨てて作り変えた三月ちゃんの事は「これまでの家の犠牲を無駄にした」 人とは思っているけど、そういう思い切りを羨ましくも思ってるイメージ。
三月ちゃんには何かとつっかかり気味なのも、嫉妬が含まれている所がある。
けど、深草は桃園寺さんちみたく変えられない(流石に根本的な事情が違うので)のでありかは三月ちゃんみたいな真似は今の所絶対にできない。
だからこそ羨ましい。