とうとう"草迷宮"が来てしまいましたね..

と言うのも、この回が私の中で1番の謎で"自分なりの解釈すらもままならない状態"でしてね..

んでも。
いくら私の頭で考えても、現状これ以上のものは出て来なそうなので書いてしまいます。
sac同様、11話に難解なストーリーを持ってくるって偶然じゃないですよねきっと
憎い演出ですね~!笑

さて何から書けばいいのやら...笑


取り敢えず新人の試験関連は飛ばしますよ!



で。


とにかくこの"草迷宮"を解体するのにあたって必要な予備知識は、


泉 鏡花

明治後期から昭和初期にかけて活躍した小説家
1908年に出版された"草迷宮"という小説

謎に満ちたその作品は今もその色を失わず、大学教授、小説家..色々な人が色々な視点から解釈の論文やコメント、評価を発表している


全文は検索すれば出てきますので、興味のある方はそちらをご覧になってみて下さい

言葉がだいぶ違うので読みにくいかとは思いますが..

【今では進んでいる"精神分析学"や"対象関係論"
当時知らなかったであろう鏡花がそれを直感的に理解し、この小説に応用していた】

という"塩田 勉"さんの論文を主にここでは草迷宮を解いていきたいと思います

こちらも検索で出てきますので、見てみてください


取り敢えず、泉 鏡花の草迷宮の表紙に書かれてある説明書き↓

幼な子の昔、亡き母が唄ってくれた手毬唄。
耳底に残るあの懐かしい唄がもう一度聞きたい。母への憧憬を胸に唄を捜し求めて彷徨する青年がたどりついたのは、妖怪に護られた美女の棲む荒屋敷だった。
毬つき唄を主軸に、語りの時間・空間が重層して、鏡花ならではの物語の迷宮世界が顕現する。

以下はざっくりまとめ

主人公の葉越明という少年は、幼き頃に母を亡くしていた
それ故、彼の中での"母親への想い"は異常な程高まっていた
母が唄ってくれた手毬唄がどうしても思い出せず、その唄を知っているであろう人を求めて旅に出た明であった
その屋敷に辿り着き、ようやく掴みかけたが妖怪や化物、美女に阻まれてしまう
ラスト、その美女が二人の母子を想い涙を零しながら紡ぐ手毬唄。
明の胸にはどう響いたのか...
(ラスト曖昧)

とこんな感じですかね..


ここから、攻殻の草迷宮と、泉 鏡花の草迷宮の共通する点のみをあげていきたいと思います

・プロレプシス《話序先取り》

主人公、明は聞くことが許されずにいた手毬唄だが、小説の冒頭にはこの唄の歌詞が書かれていて、読者は最初に聞くことが出来た

"小説の冒頭と結末に手毬唄を書いたプロレプシスが顔を出す"

これは攻殻機動隊sacも2ndも、セリフでですがありましたね

sac#1 公安9課 にて

「全員、装備A2で召集をかけろ。場所は82-D3」
「聞いた?バトー」
「ああ。聞いてるよ」

少し飛んで、素子は9課全員の名前を呼び、状況を確認します

sac#26 公安9課、再び にて

「少佐。全員装備A2で召集をかけろ」
「聞こえた?バトー」
「迎えに来たぜ」

素子は9課全員の名前を呼び、状況を確認します
パズなんかはどちらも同じセリフ「いつでも」

sac2ndでは素子の
「あらそう。じゃあ死になさい」は#1と#26で共通していますね

《プロレプシスは攻殻全体で使われていた技法だった》


・草迷宮の"草"の意味

この小説を知るまで、私はてっきり"草薙"の"草"だと思ってましたが..

小説ではこの"草"は母親の"見てはいけない下半身の秘所を隠す陰毛"という意味で使われているのではないかという論文を見て、なるほどと思いました

明が想像で創り上げた完璧な母親像(手毬唄=母親の良い側面)を知ろうとすればする程、それを阻む化物や妖怪(見せたくないもの=母親の悪い側面)
一緒に生活していれば嫌でも分かりますが、明の場合はこういう形で母親からの自立の道を歩んだのではないでしょうかね..


元軍人、少佐であり9課の現場指揮官でもある素子
あまりのストイックさに感嘆する程、誰もが敬意を表する人であるが..
その素子が抱える人並みの少女の様な顔を、視聴者は草の根を掻き分けて(女の部分を)垣間見れる訳です

きっとここでの"草迷宮"は、"女"である素子の迷宮(素子ですら答えの見つからないもの)ととってもいいんじゃないでしょうか


・球体=母親のイメージ


小説では珠、西瓜、手毬、満月など球体がごろごろ出てきます
そしてそれは、丸く完遂された(慈悲深い)、柔らかく白い乳房=母親(幼少に母を亡くした為に強く恋い焦がれ、妄想にも似た想いから)
小説のラストは満月にかかる横雲を見て「横雲が..」で終わるんですが
攻殻の草迷宮でラストに流れる満月にかかる飛行機のシーンの元ネタはこれだと思います

反対に刃物や塔などもごろごろ出てきますがこちらは反対に"男根"を表している
それが"対象関係論"と言う事でしょうか?
クゼは日本刀を持っていましたね


・成熟を拒否した人間


「母から分離し、個を確立する事が成熟の第一条件だとするなら、明は幼児期に母と包まれていた宇宙的な合一感に執着し続け、成熟を拒否している人間である」

"不在によってその存在を誇張される"とはよく言ったものですね..

亡き母に焦がれるのは"退行"ととってもいいでしょうか..
"胎内回帰"..エヴァのゼーレもこれが望みだった様な気がします

母親が健在の方は何だかイメージしにくいですよね?
かく言う私の母もバリ元気なんで何だか..笑
ちょっと脱線して二つ程歌詞を紹介しましょうかね

The gazette in blossom

【揺り籠の中眠る 理想は消えてくれない】

揺り籠の中って何も不快な物は無いでしょうね
そして見護られているという絶対的な安心感
物心ついた頃から、そういう物はどんどん離れていきますね..
"理想は消えてくれない"だから余計苦しい..

kagrra, 沙羅双樹の子護唄

【幼い頃を抱き締め歩く 目隠しのまま神の指先を】

幼い頃の母との暖かい思い出を胸にすれば、危険だと思われた周囲の一切、自分の道は、実は見えない手によって常に護られていた..そしてその神の手は母である..と

特に男の人に、母に焦がれる傾向があるんじゃないかと思いますね..
そういう泉 境花も、10歳で母を亡くし、幼少の心に一生の傷(後にそれが小説の才能へと昇華する)を負ったと言う

私、クゼもそうなんじゃないかと思うんですよね。
幼い頃両親を亡くしてしまったと言うのもありますが、
"不自由な体を捨て、ネットの海へ漕ぎだしたいと考えていた"
"上部構造への移行"と言っていますが、それは"胎内回帰"願望と同等なんじゃないのかなと..
進化の果ては退行..と言う見方も出来ますが。
"俺は、ずっと探している"
とクゼが言った様に、"心を許せる誰か"を探しに行く事が動機となり全身義体を決意したとしたら..?

明もクゼも"それ"を探している事は共通していますね


・手毬唄を忘れた明

幼い頃に聞いて、"知っているはずの唄"を忘れてしまっている主人公
これはクゼと素子とダブるんじゃないでしょうか
二人はこの過去の出来事を"知っているはず"なんです
いや..もしかしたら.."ありもしない記憶"なのかもしれない
これは後で書きましょ


と小説絡みはここまでにしましょうかね

キリがないので。笑


さて。


素子は新人の試験中、裏路地の階段へと踏み出します
落ちて来た黄色いボールを何の気なしに手に取り、また歩を運ぶ..

ちょっと待ったあ!

この路地に貼られているポスター
気付いた方はいらっしゃいますか?

sac#12 タチコマの家出 映画監督の夢で登場した、"神無月 渉"の映画ポスター
sacでも、素子が神無月渉の電脳に潜った際、至る所に貼られていた物です

男女の顔と共に、"サンドイッチの味""have a mayonnaise?""いけない恋でしょうか?"

"サンドイッチの味"という映画みたいですが..遊び心満載ですね。笑
後にサイボーグ食のサンドイッチを食べて「まずいわね」とこぼす素子の心情か?

取り敢えず、何故ここに神無月 渉の映画のポスターがあるのか?
しかもその路地を抜けた辺りにも、"形式主義の神話""私たちの周りをつつまれるものは愛である"と言うポスターまであります

どちらも"監督 神無月 渉"

ここで監督さんについておさらい

神無月 渉

sac#12で登場した。
得意な作家性に固執するあまり、資金や人材を集められずまともな作品は一つも作れなかった
その為神無月は自分の電脳の中に、理想とする映画を記録し、自身の肉体から切り離した

一部でカルト的人気を誇る様になり、入り浸った人間が意識を取り戻さず死亡した経緯を受け、警察が回収に乗り出していた
オリジナルは9課の手によって回収済みである

sacから2年後の2nd。
"回収は済んでいない"と見るか、もうあの路地から不思議な世界へ"半歩踏み出している"と見るか..謎ですね

もっと言えば、このポスターは"牢記物店"内にも飾ってあります

何故そんなに神無月渉を推すのか?
うーん..むりやり仮説を立てるとすれば..

1.神無月 渉のゴーストが入ったミニシアター箱と同じ様に、"電脳内での出来事"ということの示唆

2.老婦人が語る少年と少女の過去を映像で観る事が出来たのは、sac#12で素子が涙を零した映画がまさにこれであると言う示唆


私は未だに1.と、2.の可能性が自分の中で半々です
でももし2.なら......


まずは2.の【無かった記憶論】の可能性から紐解いていきましょうかね

2ndを何度も見ている内に.."まさかね..?"と信じ難い方向へと向かってしまう自分がいました
それは何かと言うと..


【sac#3のジェリとマクラクランの様に、
素子と思われる少女と、クゼと思われる少年の過去話の元ネタは"神無月 渉の映画"であり、実際は"なかった"
合田によってプロデュースされ、造られた記憶だった】

あー!自分で言っておいて嫌ぁー!

でも可能性があるなら考慮しなきゃ...汗

私が引っ掛かっているのは、#9絶望と言う名の希望で素子がデカトンケイルに侵入した事実を知った合田が漏らした

「予想より遅かったな」

の一言。
素子がデカトンケイルに侵入し、自身の仮想人格を創り上げ、個別の十一人への関与について聞き出すのは"想定内"だった

分かっていて、あの合田がタダで情報を与えるか?
何かしらのトラップを仕掛けてたんじゃないの?
デカトンケイルは膨大な情報の塊..素子の体験した白昼夢と何か関係がありそうですが理解不能です

そして2.の"なかった記憶"論を後押しするのはもう一つ
"クゼが折鶴を折っているシーンは皆無"という事

更にラストの素子とクゼのセリフ
"お前、鶴を折れるか?"
"鶴?"
"ああ。それも左手だけで"
"制御ソフトを使えば誰でも折れるだろう?"
"そうじゃなくて.."
"お前は折れるのか?左手で"
"今はな"
"お前も孤独を生き延びた人間らしいな"

クゼ、何もピンと来てないじゃん。っていう

この話の前にも、エトロフでクゼと対面した時に港に置かれていた折鶴
え?クゼが折ってたんじゃないの?
そんなちょっと前の記憶も飛んでる訳?
..."クゼが折った物じゃない"って事..?
内庁の人間が難民に扮し、クゼと行動を共にしていて、その演出を担っていたとしたら..

だとしたら合田の目的は、9課の"現場で指揮をする要"の素子の心を揺さ振り、クゼの行動を止めずらくする
あわよくば素子をクゼ側に加担させ、"要を失った9課を混乱の中解体、難民と共に消去する"でしょうか

でも例え"合田にプロデュースされた記憶によって引き合わされた二人"というこの過程を踏んでいたとしても、ラストは感動的です

"お前には心を許せる誰かいるか?"
"いなくはないが.."
"そうか。俺は、ずっと探している"

の後、2人はゆっくりと抱き合います

....。

あの瓦礫に閉じ込められた僅かな時間の中で、クゼは"心を許せる誰か"を"初めて"見つける事ができた

目の前の"名前さえ知らない"女性に

多くは語らなくとも、似た様な境遇に強いられながらも今日まで生きてきたであろう同志の様な..

"恋"だとか"愛"だとかいう言葉すら軽いと思わせる程の"魂を揺さ振られ、尚且つ安らぎを感じる相手"


詳しくはラストにとって置きましょう

※追記

sac#5 マネキドリは謳うで、ナナオの証言をした人間達の記憶が"造られた記憶"であると断定したイシカワの台詞を抜粋します

"必ずナナオを賞賛する傾向が認められた"
↑これは"強制認識言語プログラムによる傾向と思われる

素子はクゼを"聖域に入っている"や"(その妄想を)軽く笑い飛ばせるものではない"と賞賛していた様な..

ナナオに対する証言は何人かの人格を合成して作った物のため一人称をなしていないにも関わらず、写真を見ると"ナナオである"と断定している
↑造られた記憶と断定できる


少年時代の顔しか知らないはずのクゼを、何故クゼと素子は断定したのか?

...やはりこれは造られた記憶なのか.....




ここまでが、2.の解釈の場合でした。


次は1.の【あった記憶論】で紐解いてみましょう

長くなってしまったのでここら辺で区切ります。
私は出来ればあの2人の話は"真実だった"方を推したいんです!!笑
次記事まで頭を整理します...