1.の【あった記憶論】行きますか

の前に。

細かい所追って行きましょ。


素子が路地を出て、新人やバトーが彼女を見失った時

壁に貼られている注意書きの様なものに目を凝らすと..

"不患人之不己知、患己不知人也"の文字

どうやら孔子(紀元前552年生まれの中国の思想家、哲学者)の論語の様です

意味"人が自分を認めてくれないことを心配するのではなく、自分が人を認めようとしない事の方を心配しなさい"

なんだか..合田を諭す様な文句ですね

ここだけならまだしも、この言葉は牢記物店内にも飾ってあります

もしこれが合田によるプロデュースだとしたなら、この様な言葉をチョイスして入れるか?

....。


牢記物店の"牢記"とは"しっかり心に留めて忘れないこと"と言う意味がある様で

あの店内の"残留思念"を放つ"物"達はその"誰か"にとっては忘れてはならない大切な記憶そのものの様です

ではあの牢記物店に雑然と並べられた"物"達は誰の"しっかりと心に留めて忘れてはならない物"なんでしょうか

パッと見、私が見つけた物を上げていきましょう

まず素子が入って直ぐの壁に下がっている"POST."はsac#4視覚素子は笑うで山口が封書を入れたPOSTの文字体にそっくりですね

そして天井に下がっているのは神無月 渉の"サンドイッチの味"のポスター

パトカーの玩具が見えるシーンでは、隣のBOXの影に見えているグローブ..これ多分左利きなのでsac#11亜成虫の森での左利きのキャッチャーミットじゃないすかね

突き当たりに置かれている"ローラースルーgogo"

って..ローラースルーgogoで分かりますか?笑

これ、素子がクゼの病室で乗り回していた物じゃないすか?

後はスーツの胸ポケットにさされた金クリップのボールペン

これはsac#4視覚素子は笑うで、素子と荒巻が笑い男について話すシーンが一番分かりやすいと思いますが、荒巻のボールペンであり、荒巻のスーツじゃないすかね?

階段を登った2階の部屋の隅に置かれている熊のぬいぐるみは、sac#8の恵まれし者たちに出てくる6歳で事故に遭ったものの、全身義体を免れた女の子が病室で抱いていたものかな?

孔子の論語が所狭しと並んでますね

吊るされたeast airの飛行機は事故に遭ったあの機体なんでしょうか?

他にも色々ありますが割愛。笑

私はこの牢記物店内の物は、"誰か一人の人の大切な物"だと思っていたんです

例えばクゼの。とか
素子の。とか..
でも2人の知らない物まであるという事は"一人の"大切な物達では無いという事ですね

未だになんの基準でこの物達が描かれているのか、その共通点が見つけられずにいます
誰か教えて下さい。笑


さて。

では行きましょか。


まず"これが本当の事なら何で素子とクゼはすぐ思い出せなかったの?"

と言う疑問は、"外部記憶装置"に答えがありますね。

sacの解説の何処かで外部記憶装置について書きましたが
"外部記憶装置に記憶を預けると、その記憶は頭の中からなくなる"らしいんですね。
攻殻機動隊の小説"stand alone complex"のパズの台詞からそれが分かります。

クゼはここに記憶を"預けて"いると老婦は語っています


そして素子の場合、sac#24の台詞

「状況に応じて義体も脳殻も変えてきた..なら記憶も変えるまでよ」や

sac 2nd#15の台詞

「そんな些細な思いすら、お前達は消し去るのか?」という有須田に対し

「そうよ。それが体制に何かを明け渡した代償に力を得た者の禍福」

この台詞は案に素子自身そうだったと言っている様に聞こえます

素子は軍時代やその後の9課で、生き残り、更に力をつける為に徹底的に"感傷"を捨てて来た人なんだと思います

sac#24で感傷的な言葉を発したバトーを即座に否定したり、感情の様なモノを会得したタチコマを即座に切り捨てるなど、そういう部分を持たない様徹底しています

と言う事は..これは憶測ですが、素子は"故意的にその記憶を消していた"んじゃないかと思うんですよね私。


そして牢記物店の老婦は、
「この2つの義体は、今では立派な成人になった男の子の方がずっと大切に保管していたものなの」から始まり、

女の子の義体は、男の子が大学の研究室に保存されているのを見つけた事。
でも義体をリサイズした女の子の行方は掴めず仕舞いに終わった事。更に

「だから女の子の方の記憶は今でも空っぽのまま」

と来た。
と言う事は男の子の方は記憶が"ここにある"
と言う事ですね

上で説明した裏付け..になるかは分かりませんが、取り敢えず合点がいきますね


そしてね。ちょっと私"神無月 渉"について新たな発見をしたんですよ

神無月 渉の映画のポスターに、

【浮輪】ーgo see bananafishー

と書かれてるのを発見したんです


sac#10 密林航路にうってつけの日の解説で詳しく書いてるんですが、

"PTSD"が鍵を握ってるんじゃないかと思ったんです


「男の子は今...?」と素子が老婦に尋ねた際、

「大戦の末期、外国に出兵して、それっきり。あれから一度もここには来てないから、死んでしまったのかもしれないわね」

と答えます。


sac2nd#16でクゼの軍歴からイシカワが半島に出向き掴んだ過去。
後で詳しくやりたいのでそれは割愛するとして、重要なのは

その時クゼは"PTSDを発症した可能性が高い"と言う事です

"義体の髪がすっかり白くなっていた"という言葉もありますし、相当のショックを受けたんではないでしょうか


"PTSD"の特徴は何と言っても"記憶"に関する物が大きいと思います

これもsac#10で詳しく書いてますので見てみて下さい

サリンジャーの短編小説"バナナフィッシュにうってつけの日"の主人公シーモアや、サリンジャー本人、サンセット計画を遂行していたマルコも"PTSD"らしいんですが、

その診断には

"現在から過去に遡る出来事に対する記憶が重要"みたいなんです

一緒にしていいのか分かりませんが、認知症は"過去の重大な出来事はきちんと覚えている"にも関わらず"日々の瑣末な出来事"の記憶は消えてしまう傾向にありますよね

これをクゼに当てはめると、
"折鶴を折り続けていた幼少期の記憶から、無意識に折鶴を折る時がある"

少し前に船着場で鶴を折った筈なのに、素子に「鶴を折れるか?」と言われてもピンと来なかった理由はこれ..?

"記憶を預けた記憶が飛んでいる"

大切に義体を保管していたのに大戦後は一度もここを訪れていない理由かな?


クゼの記憶の喪失の原因は"PTSD"だとするなら、この二人の過去話は真実だったと思ってもいいんじゃないでしょうか?

二人ともすれ違いですが...
切ないな。泣


そして話を聞き終わった素子は、

「話してくれてありがとう。きっと女の子も、初めて好きになった男の子を、今でも探しているんでしょうね」

と砂糖の包み紙で折った鶴を置いて、その店を後にします


クゼが預けた外部記憶を、素子が偶然...いや"必然"的に知る訳ですね

そして素子は手にしていた黄色いボール..
病室でクゼへと投げたあのボールですよね?

きっとこれが牢記物店へと誘った鍵だと思うんですが、これをあの路地に放る


その跳ね返り方と言うか..何だかもう一度素子が下から来て、そのボールを受け取る様な
...不思議な感じがしましたね


その後の「アイスティーの氷が溶けてるぞ~」と言うバトーと素子の構図ってか、

sac#12のラストにそっくりじゃないですか?

神無月 渉の映画を見て涙を零した後の、感傷的な素子と..

バトーは自分が素子に巻かれた事で、新人達にもう一回チャンスをやって欲しいと頼む訳です


「そうね。確かに初めから上手くできる人なんて、いないかもね」


と優しい一言。



予想外の返答にバトーも戸惑っていますが。笑


折鶴の件で..思う所があったんでしょうね..



では次回に。
※追記

泉鏡花の"草迷宮"の主人公

"葉越 明"

の名前の由来は、

母の秘所を隠す陰毛の意味で用いられているとみられる"葉"を"越えて"その謎を"明"らかにするという意味が込められているのでは

と言う論文を見て、"草薙 素子"の名前の由来も


我々が想像するようなレベルを超えてそこにいる、世に潜む(草藁の中に潜む)悪を

"草"もろとも(悪をも)"薙"ぎ払い、"素"(何も手を加えられていない、地のまま)の姿へと戻す者

という意味がこめられているんじゃないかとふと思いました

"葉を越えて"よりも更に強引に"草もろとも薙ぎ払って"という辺り、とっても少佐らしいなと。笑

何となくしっくり来たので追記しました。