October 20, 2015

鍵の掛かった男

 有栖川 有栖 『鍵の掛かった男』。
大好きな作家さんの数年ぶりの長編書き下ろし新刊。

 楽しみにしていたので発売日に買ってきた。
が、読む前に『死者vs探偵。二人の鍵の掛かった男対決の勝者はどちらだ?』な〜んていう殺し文句を新聞の広告を見てしまい
「そうか火村も鍵が掛かった男なんだ。その秘密が少し垣間見られるのか?彼の過去に触れるのかな?」
と思ったら妙にドキドキしてきてしまった。

 火村先生が登場するのは後半になってから。
忙しい火村が現場に参加するまで一人でがんばるアリスに
「お前はよく調べた。がんばってえらかった」とかなんとか、アリスをほめる火村がいつもより優しい。

 実をいうとこれだけ有栖川作品を読んでいるのに、大阪の地は新幹線で通り過ぎたことはあっても、一度も下り立ったことがないので位置関係とかさっぱりわからない。今回の話を読んで初めて本気で行ってみたいと思った。

 大笑いしたところは360P。自分を鞭打ち教徒になぞらえる火村に、
「鞭打ち教徒の探偵というのはどうだろう?捜査に行きづまったり推理が外れたりする度に、上半身裸になってピシリピシリとおのれを鞭打って反省するのだ。書けば前例がないキャラクターになりそうだ」というアリス。
 そんな探偵、確かに前例はないだろうけれどキモすぎて好感度は低かろうと思う。

 作家アリスシリーズでは最長編ということらしいが、面白くてとても短く感じた。
 あの女性の決断。ん〜、私だったらいかに土壇場でもその方法は思いつかないし決断には至らないだろうなと思うが。
 優しい文章はいつも通り読みやすく、時々くすっと笑えて、時にああそれは辛いだろうなと感情移入できて、読後、切なさと感慨深い余韻が残る傑作だと思う。


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July 11, 2012

天地明察

冲方丁の時代小説『天地明察』、今さらですが読了。

友人が「この本、歴史が好きだったら面白いよ」 と貸してくれたのですが、正直な話、ベストセラーでも暦の話はあまり興味ないけどね、と思いながら読み始めたのです。
ところがとても面白く、興味深く一気に読みました。

安井算哲、関孝和、全く知らなかった。こんな天才といっていい傑出した人たちが400年前の日本にいたなんて。
好きな歴史とジャンルが違う、と決め付けて自分からは手を出さなかった一冊でしたが、食わず嫌いは世界を狭めていかんな、とつくづく思いました……。

9月に映画が公開されるようですが、どちらかといったら映画よりもテレビで詳細に連続ドラマ化したものを見たいような気がします。


http://www.kadokawa.co.jp/sp/200911-06/

江戸、四代将軍家綱の御代。戦国期の流血と混迷が未だ大きな傷として記憶されているこの時代に、ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること。武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの計画は、そのまま文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれながら安穏の日々に倦み、和算に生き甲斐を見いだすこの青年に時の老中・酒井雅楽頭が目をつけた。「お主、退屈でない勝負が望みか?」日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描いた新境地。時代小説家・冲方 丁誕生の凱歌がここに上がる!
初出:「野性時代」 2009年1月号〜7月号


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February 22, 2010

和田 竜 『のぼうの城』他

最近はあまり小説を読まなくなっていたのだけれど、なんとなく気が向いて手に取った和田竜の『小太郎の左腕』が面白かったので『忍びの国』『のぼうの城』と続けて読んでみた。
後で気がついたら発売されたのと逆の順番で読んでいたらしい。

『小太郎の左腕』の半右衛門はなかなか魅了な的な男だった。それぞれ面白いしスピード感もあって読みやすい。作品自体短めで軽いので3冊サクサク読み終わってしまう。

なんだかあちらこちらに司馬遼太郎の文体に似ているものがあって微笑ましいものを感じてしまった。

のぼう

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November 20, 2008

天地人

来年の大河ドラマは火坂雅志原作の「天地人」。

大河ドラマの原作にしては驚くほど薄かった昨年の「風林火山」と違い、こちらは分厚い単行本上下巻2冊で、上杉謙信、景勝に仕えた直江兼続の生涯を追った歴史小説です。
直江兼続の小説では藤沢周平の「密謀」が気に入っているのですが、「天地人」が原作としてNHKに選ばれたんですね。
この「天地人」で兼続に絡む女忍びの初音(たぶん架空の人だと思う)の設定は私はあまり好きではありませんでしたが……。

直江兼続の一生は殆ど景勝と共にあったので、今までの戦国時代を扱った大河ドラマでは多分スルーされていたであろう「御館の乱」も当然丁寧に描いてくれるのでしょう。その辺りは今から楽しみです。
上杉謙信亡き後、謙信の甥景勝と北条氏康の息子で謙信の養子となっていた上杉三郎景虎が家督を巡って争った「御館の乱」。
あちこちの家に養子としてたらい回しにされ、最期まで実家と養子先の権力争いに振り回された上杉三郎景虎に関しては正統派の歴史好きよりもコバルトの「炎の蜃気楼」ファンの方が詳しくて思い入れも強いかもしれません。「天地人」では景勝×兼続の視点から描かれるので、戦国一の美少年だったという景虎はちょっとぞんざいな扱いをされています。それにしてもこの人の生涯は気の毒だ…。

与板城主直江景綱の娘お船もかなり出てきて頑張ってます。このお船さんはミラージュでその実像よりも別の存在感で有名になったかの直江信綱の奥方で、信綱が論功行賞のトラブルで殺された後で兼続と再婚し、兼続、景勝を支えて活躍した女傑でした。
兼続に妻夫木聡さん、上杉景勝に北村一輝さん、上杉景虎に玉山鉄二さん。なんだか期待できる配役ですね。今年の「篤姫」は興味が持てなくて見ませんでしたが、来年の「天地人」は出来るだけ欠かさずに見てみようと思っています。

天地人





天地人公式サイト(NHK新潟)

昨年の「風林火山」ではかなり活躍した春日源五郎こと高坂弾正も「天地人」上巻で少しだけ登場します。
これが本当に出てきたと思ったらあっという間に死んでしまうというあっけなさ……。もうちょっと活躍させてもらいたいところですが、景勝、兼続とは年齢差があるのでまあこんなものかなと…。
高坂弾正と直江兼続の絡みが面白いのは以前も触れたことがある井沢元彦の時代小説「信濃戦雲録」です。こちらは春日源五郎(後の高坂昌信)に興味がある方にはとても面白い小説なので、いつかこちらを大河ドラマにしていただきたいなあ…なんてムリかな?!

兼続の有名な「愛」の兜といえば何年も前に行った上杉祭りの際にしっかり見てきました。
ばかでかい「愛」の一文字はやはり強烈な印象が残っています。他にも謙信の胴着や、金の兜、毛氈鞍覆い、謙信着用の衣装などが展示されていました。印象では謙信の鎧や衣装はとても小さくて兼続の鎧は比較的大きく見えた記憶があります。
米沢の市内を流れる浅い川の河原で見た、いやにノンビリとした川中島の合戦も今では懐かしい思い出です。

高坂弾正昌信こと春日源五郎についてはこちらをどうぞ…

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August 31, 2008

妃は船を沈める

妃は船を沈める















最近読んだ一冊。有栖川有栖のミステリー「妃は船を沈める」。
犯罪学者火村英生が探偵、作家有栖川有栖が助手を務める作家アリスシリーズで、時間を置いて発表された中篇2本を繋げて長編に組みなおした最新作です。
火村助教授も2007年の学校教育法改正によって火村准教授となっていました。
そういえば去年くらいから時々「准教授」という言葉を耳にして、聞きなれない言葉だなと思っていましたが、そういう名称の変更があったのですね。
「火村准教授」……いまいちスッキリしない語感ですが、建前では助教授というのはあくまで教授の補佐であって、准教授の職務は教授と同等、ということになるらしいので火村センセはいっそう研究やフィールドワークに従事しやすく(いっそう休講も多く)なるのでしょうか? 

さて「妃は船を沈める」
願い事を3つだけかなえてくれるという「猿の手」を手に入れた妃といわれるやり手の女と、彼女のまわりに吸い寄せられるように集まる若い男たち。そこに起きる殺人事件。そして臨床犯罪学者火村英生とアリスは事件解決に挑んでいくが…
「第一部 猿の左手」の消化不良気味に終わる犯罪から「第二部 残酷な揺り籠」では一転して火村先生の一刀両断で幕を閉じます。それにしても、なにかもの悲しい結末ではありましたが。

この話の中で火村准教授が地震国日本を指して「この国は残酷な揺り籠みたいなもの」と表現していましたが、たしかによく揺れる国ではありますね。
火村、有栖、他担当編集者の片桐、アルマーニ森下、鮫山警部補も少しながらちゃんと出てきて役割を果たしています。面白かった!

江神シリーズ「女王国の城」も発売日に購入したものの、かなり厚みがあるので手が出ないまま、今だ読まずに本棚に並んでいます。火村先生が好きなのでどうしてもそっちは後回しになってしまうのだな、たぶん。

また秋には火村&アリスの短編集「火村英生に捧げる犯罪」が発売されるようで、こちらもとても楽しみです。
表題作の「火村英生に捧げる犯罪」だけは今年の初め頃雑誌で読んだのですが、タイトルの割りに火村先生の出番は少なかったような…。
アリスが何もしないで(というかある場所に出かけただけで)美味しいところを持っていってましたが、センセーもなんかいい感じにくだけていました。

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