90bd9e54.jpg「3時1分前、君は俺といた。この1分を忘れない。君とは1分の友達だ・・・」
こんなセリフを言えるのはレスリーしかいません!
「欲望の翼」“阿飛正傅 DAYS OF BEING WILD”(90香港)

<監督>ウォン・カーウァイ
<出演>レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディー・ラウ、ジャッキー・チャン、トニー・レオン他

 ウォン・カーウァイ監督の名をこの世に知らしめ、カーウァイ&レスリーのコラボが
香港映画に新しい可能性を開き、ハードボイルド、カンフーだけではない香港映画を私達に見せてくれたメモリアル的作品。

 サッカー場の売り子をしていたリーチェン(マギー・チャン)に誘いをかけたのが、
自分を生んだ母親への思いを募らせながら、足のない鳥のように彷徨い続けるヨディー(レスリー・チャン)

「3時1分前、君は俺といた。この1分を忘れない。君とは1分の友達だ。」と声をかけられ、1分が2分、10分、1時間・・・二人は恋仲になったのだが・・・

 リーチェンと別れたあとヨディーと恋仲になったダンサーのミミ(カリーナ・ラウ)、
ヨディーの友達でミミを想っているサブ(ジャッキー・チャン)、ヨディーのことを忘れられず苦しむリーチェンを慰めながらも恋してしまう警官(アンディー・ラウ)と
それぞれが重なるようで重ならない関係の中で、淡々と話を紡いでいきます。

 足のない鳥のエピソードで、「止まるときは死ぬとき」とヨディーが話していましたが、今から思うとヨディーの姿ははからずしも、ヨディーを演じたレスリーに重なります。
人一倍愛してくれる人を求めていながら、自分を愛してくれる人を受け入れきれず突き放してしまうナイーヴで不器用なヨディー。受け入れきれずというよりは、生みの母親に捨てられたという自分の生い立ちが、これ以上愛する人に捨てられたくないというトラウマになっているのかもしれません。
 ランニングとトランクス姿でヨディーが部屋でタンゴを踊るシーンはとても印象的。何を言おうというシーンではないのでしょうが、この映画にはカーウァイ監督特有の
口で語るのではなく、人物のしぐさで見るほうが感じ取る空気が流れています。

 船乗りになった警官が、母親を探しにフィリピンにいたヨディーに会い、銃で撃たれて絶命寸前のヨディーにリーチェンが忘れられない1分のことを聞いたとき、ヨディーは「あの女といた。肝心なことは忘れない。」と言います。
忘れられない1分、たかが1分、されど1分。リーチェンとヨディーのエピソードはほとんどないのですが、そのセリフだけで二人が一緒にはなれなかったけれど、愛し合っていたことをほのめかしてくれています、ニクイ!

 「花様年華」、「2046」と並んでカーウァイ監督の60年代トリオロジーの1作目とも言われている本作。レトロさと湿っぽさの独特な雰囲気を醸し出す一方で、オープニングとエンディングは密林の映像とムーディーでトロピカルな音楽。この映画にしかない空気感を作り出しています。

 そして、ラストに登場するギャンブラー、スマーク役のトニー・レオン。身支度をして髪をとかしつけるというだけのシーンで実は続編が作られるはずであるための出演という話もありますが、こんなところもカーウァイ監督っぽい(笑)作られなかったから余計にミステリアスなシーンとしてこれまた印象に残ってしまう・・・(爆)

 語り始めればキリはなし、誰も真似できない、このキャストだから作れた唯一無比の青春群像劇です。