歌謡曲だよ、人生は [DVD]

ひめじ国際短編映画祭２０１０のコンペ審査委員長を務めた磯村一路監督の貴重な短編が特集上映され、トークショーが行われました。

まずは、『僕は泣いちっち』（『歌謡曲だよ、人生は』より）

『僕は泣いちっち』（『歌謡曲だよ、人生は』より）（０７日本）

＜監督＞磯村一路
＜出演＞青木崇高、伴杏里

ダンサーになる夢を追うため上京する女。そして、彼女を追って都会へ出てきた彼もボクサーという新しい夢を見つけるが。守屋浩の大ヒット曲「僕は泣いちっち」にのせて若者の栄光と挫折を叙情的に描く。（ひめじ国際短編映画祭公式HPより抜粋）

昭和30年代に大ヒットした「僕は泣いちっち」をヒューチャリングし、その時代の典型的でドラマチックな上京、別れ、再出発が瑞々しく、そして懐かしく描かれます。雪国、電車、東京、踊り子、ボクサー、どれをとっても演歌や映画のシーンで必ず見たことがあるような世界。シンプルな歌詞と「ちっち」というサビの一部分がいつまでたっても耳に残りました。

＜磯村監督トークより＞

Q:映画を撮るようになったきっかけは何ですか？

A：大学時代、仲間と自主映画を作っていました。当時は大映が日活と合体してダイニチという会社を作り、その後日活はロマンポルノを制作するようになりました。東映、東宝ではなく客が洋画を選んで見る時代でした。

私は会社員をしていましたが、その後アルバイト暮らしをしながらJazzバーで短編映画を時々上映するイベントや監督を招いてのティーチインを行っていました。
若松監督が自分の作った作品のことを話しに来てくれたときに、映画を撮ったことがあるんだったら事務所にこないかと誘ってくれました。当時事務所が忙しくて電話番がいないからだったのですが（笑）。一年ぐらい電話番をしてから、翌年には成人映画の監督にしてくれましたね。

カラオケ映像も100本以上撮りました。ワゴンを借りて多いときには1日に2,3本製作することもありました。最初は1本40〜50万ぐらいの予算がついていたので、当時テレビでやっていた「歌う天気予報」を参考に、短編ドラマみたいなものを自由に作らせてもらいました。だんだん、カラオケにいったお客さんが歌う人の歌を聞くだけでなく映像を見ても楽しめるようなものにとニーズが変わってきましたが、いい勉強をさせてもらいました。


Q:どうして数ある昭和歌謡の中から『僕は泣いちっち』を選んだのですか？

A:私はミュージシャンやバンドの映画を撮っていたので、歌謡曲シリーズのオムニバスでいろいろな曲をやるというときに、参加させてもらうことにしました。

『僕は泣いちっち』は子どもの頃にすごく流行った曲で、当時なぜこんなに流行っていたのか分からなかったので、作品にすることで何か見えてくる気がしたのです。

昭和30年代の日活歌謡映画の雰囲気を出してみました。当時日活映画といえば、必ずナイトクラブにダンサーのシーンがありました。島倉千代子が『東京だよ、おっかさん』という歌を大ヒットさせましたが、上京して働くことにひとつの物語があった時代でした。