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ホラーからはじまり、夫婦愛、そしてとんでもないラストに飛躍していく超娯楽作『へんげ』。関東につづき、関西でもシネドライブ2012で一足早く上映されたばかりです。関西の公開に先駆け、シネドライブイベントで来阪した大畑監督を独占インタビューしてきました。

監督の口から飛び出したキーワードは『娯楽映画』。自主映画の監督さんの話を聞いている中で、このキーワードを聞いたのは初めてかもしれません。大畑監督の『娯楽映画』にかける確たる想いが伝わってきましたよ。

━━━本作を作るに当たってどういった構想からはじまったのか。
自主映画だけれど、特殊メイクなどを使った変身ものの映画を作ろうと思いました。日本の一般家庭を舞台に、真っ昼間のリビングに堂々と化け物がいるというコンセプトでスタートしました。家族の中で誰を悪者にしていくかと考えたとき、旦那さんがへんげしたらより一層迷惑でいいのではないかと。女の人は何かに呪われてとりつかれたりするのが結構ありますが、大人の男が錯乱状態になると一層迷惑じゃないですか。

そういう設定だけ考えながらJR中央線に乗って窓の外を見たら、新宿新都心のオフィスビル群が目に入って、それを見たときにラストシーンが浮かんだんです。そのシーンを思いついたときに、僕自身は電車の中で涙ぐみました(笑)。そんなラストを迎える夫婦はどんな人たちで、どんな出来事があるのかと考えて作りましたね。

━━━こんなラストを迎える夫婦とは、監督の中でどんな夫婦なのか。
旦那は何者かにとりつかれたような形で体が変身して、精神的にもへんげしていくことに受け入れて順応してしまう。旦那がやってはいけないようなことをするのを見て、奥さんは無意識のうちにグッときたのではないか。 この人がどうなるのか最後まで見たいと思う願望があるはずです。シナリオでは終盤にあった自慰シーンを編集で冒頭に持ってきた意味というのも、やましい欲望を抱えた人であることを見せておきたかったんです。

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(C) 2012 OMNI PRODUCTION
━━━最初にこの脚本を見たとき、主演の森田さんはどんな反応をしたのか。
分からないところがあるかと思ったけれど、森田さんは「(分からないところは)全然ない。」という返事でした。こういうことになる女の人のことを分かっちゃう人なんですね。役者さんとしてとても勘の鋭い方なので、そこは読みとってくれたんじゃないかと思います。

━━━森田さんと初めて一緒に仕事をして、何か発見はあったか。 大工原正樹監督の『赤猫』や磯谷渚監督の『わたしの赤ちゃん』という映画に出演されてるのを拝見していたのですが、本当になまめかしい色気があって奥行きのある役者さんです。劇中の衣装は森田さんの私物ですが、衣装あわせで持ってきてもらうときに、そんなに細かく決めずに「主婦っぽくて、それなりにファッションに気を使っている人」という伝え方しかしてなかったんです。実際に森田さんが持ってきた衣装というのは、体にフィットする、ボディラインがよく分かるものでした。「森田さんはこの映画のことを一番良く分かっている。」と感じましたね。

━━━化け物に変化していく主人役の相澤さんの反応はどうだったか。
相澤さんも昔『超光戦士シャンゼリオン』に出演されていたので、心構えはできていたと思います。特撮ものの現場を体験していたのでそんなに不安はなかったみたいですね。 特殊メイクが結構あったので、顔にもベッタリマスクを付けられて、そういうストレスはあったみたいですね。

━━━のたうち回ったり、激しい変身ぶりだったが。
すごくしんどかったらしいです。結構二人で練習したんですよ。大広間みたいな広い場所を借り切って、いかに気持ち悪い動きをするかの研究をしました。幼稚園児みたいに二人でのたうち回って、「こういうのがいいんじゃないか。」みたいに。

━━━怪物のデザインに関してポイントはどこか。
特殊メイク自体は東京ビジュアルアーツの生徒が作ってくれたんですが、宇名川祐さんという方が絵も描けるし経験も豊富だったので僕とやりとりをしながら作っていきました。
何にとりつかれているかといえば、人間以外の全ての存在が主人公である吉明に乗り移るというコンセプトなので、つかみどころのない形で、絶対に気持ち悪いものをとお願いをして作ってもらいました。

━━━ラストの特撮は大変だったと思うが。 特技監督で参加してくれた田口清隆さんのおかげで、迫力があって、自主映画だからといってなめられることのないようなシーンになったと思います。田口さんの技術力あってのものですね。

━━━映画美学校の同期である加藤麻矢監督や瀬川浩志監督ら作品にもおばけやホラーテイストの作品が登場するが、そういう娯楽映画を好む傾向にあったのか。 自主映画だから自分の身の回りだとか自分の心情をテーマにした映画を作ることはよくあります。でも映画美学校の同期は、そうではなくて娯楽映画にかける人たちが多かった気がします。

『大拳銃』も修了制作なのですが、修了制作で選ばれた映画というのがこれと『魔眼』(伊藤淳監督)という作品で、そんなタイトルの二本が選ばれたというのも自分たちの期を象徴してますね。

━━━どんな娯楽作品に影響されてきたのか。
子どもの頃によくテレビで見た日曜映画劇場や、『ロボコップ』、『ターミネーター』、『ザ・フライ』が大好きです。

━━━最近の自主映画について思うことは。 どんなやり方であれ、その人がやりたいことをやって、それがその人にとって最善の方法であればいいと思うし、僕もそれが面白いと思います。でも僕がやるなら絶対に娯楽に徹したいです。オタク的なジャンル映画好きにしかアピールしないものではなく、老若男女に見てもらえるような娯楽映画をやっていきたいです。

━━━『へんげ』もかなり様々なエンターテイメントの要素が盛り込まれているが。
ホラーもアクションも特撮も恋愛もあって、一概にホラーといえるものではないです。 たまに「へんげ、怖そうだからやめておきます。」とか「ホラー苦手だから。」と言われることもありますが、そんなことありません。最初の変身部分を耐えたら、女性が見ても大丈夫です(笑)。

━━━今までごらんになったお客様からどんな反応があったのか。
劇場から出てくるときの顔で大体分かります。遊園地のジェットコースターからでてきたみたいな顔をしていると「よし!」と思います。なんか知らないけれど、ちょっと笑っているみたいな顔をして出てきてくれるとうれしいですね。

━━━監督から最後に一言。
どこか大それたような娯楽映画を作りたいと常々思っているので、お客様には気構えずに、怖そうとか思わずに、なるべく映画館の大きいスクリーンでみてもらいたいですね。