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  『遭遇』のイム・テヒョン監督最新作『大阪のうさぎたち』は、まさに全く新しいタイプの大阪発映画だ。
  2011年映画祭で来日時に、『遭遇』の主演俳優ミン・ジュンホと再びタグを組んで撮影した本作では、『歓待』の主演兼プロデューサーとして来阪していた杉野希妃が急遽撮影に参加。世界中で90%の人類が亡くなった地球で、唯一秩序を維持し、普通の生活を送り続けている都市が大阪という設定のもと、中之島、梅田スカイビル、大阪城など大阪の今を切り取るロケーションで即興的な技法を取り入れながら撮影し、浮遊感のあるSFに仕上がっている。
  大阪アジアン映画祭2012特別招待部門出品で舞台挨拶のために来阪した杉野希妃さんとイム・テヒョン監督に本作作成の経緯や、撮影秘話を聞いた。
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━━━どのような経緯で本作に出演することになったのか。
杉野:当初はイム・テヒョン監督の『遭遇』に出演したミン・ジュンホさんと2人で撮るつもりだったそうです。本当は2人の知り合いの女優と3人で撮る予定でしたが、3月11日の震災の影響で来阪できなくなったのだとか。翌日の12日が撮影日で、監督がキャメラを廻していたのを偶然見かけたので何をしているかお聞きしたら、「映画を撮っている。」とおっしゃって。面白そうと話しかけると、出演を打診されました。通行人ぐらいのつもりが、いつの間にか主役になっていましたね。

━━━大阪のシーンは、一日で全て撮影したのか。
杉野:撮影に参加することになってすぐに「今からツアーに入って。」と言われて、歩いているところをずっと撮られました。ミン・ジュンホが話かけても軽く流すようにと言われ、内容も知らずにドキュメンタリーでも撮るのかと思いながら参加していました。撮影の合間にどんな映画を撮るのか聞いて、はじめてSF映画と知りました。あとは撮影しながら教えてもらった感じですね。
当初から、女優がいないならそれなりに、ミン・ジュンホさんプラスアルファで、流れに身を任せて撮ろうといったスタンスだったようです。人類最後の日、最後はホテルで2人がどうなるかといった設定は最初からありました。

━━━本作でも『歓待』同様プロデュースを担当しているのか。
杉野:もし映画を作るのであれば、日本の映画祭や日本公開についてはこちらで話を進められるので、後乗りですがプロデューサーを買ってでたところ、監督も乗り気になってくださいました。

━━━.ホテルのシーンはどのように撮影したのか。
杉野:12日の夜に作品にも登場する誕生日会があって、そのままイム・テヒョン監督が泊まっていたホテルにみんなで行って撮影しました。朝の5時ぐらいまで、本当に時計を見ながら「あと1時間」と言いながらやっていました。「死ぬ前にホルモンが食べたい。」というシーンも、ホテルまで歩いて帰るときに撮りました。

━━━「ホルモンが食べたい。」は監督のアイデアか。杉野さんのアドリブか。
杉野:全くのアドリブです。好きな話をしてほしいと監督から言われていて、実は死ぬ直前にホルモンを食べたいとずっと思っていたので、この設定(翌朝午前5時に人類が死ぬ)で言うしかないと自然に口から出てきました。

━━━ホテルで午前5時まで2人で過ごすシーンは、どういう設定で撮っていったのか。
杉野:お互いに歌を歌うという部分はあらかじめ決まっていましたが、お互いに歌うことは知りませんでした。私が監督から言われたのは、歌を歌うことと、何でもいいから怒ることでした。その理由は自分で考えてと、それらを撮影直前の私の誕生日パーティーの席で言われてビックリしました。ジュンホさんは歌を歌うこと、錠剤を彼女(杉野さん)に渡して自分は死ぬという設定だけ伝えられていて、お互い何をするのか分からないという状況で投げ出された感じです。
しかも、怒るという状況をすっかり忘れていて、監督に小声で指摘されて、一瞬で思い浮かんだのが、「昔の彼氏に裏切られ怒りが溜まっているけれど、彼は死んでしまって怒りのはけ口をどこに向ければいいのか。」というシチュエーションでした。

━━━怒りをジュンホさんに向けるシーンでは、かなり激しくジュンホさんを叩いて、今までにない杉野さんの表情が出ていたが。
杉野:本当はもっとジュンホさんを叩きたかったですけどね。あのシーンだけでは背景が分かりづらいので、チョンジュ映画祭でお会いした松永大司監督にお願いして、映画祭の会場から監督の別宅に行っていただいて追加撮影しました。

━━━どうして大阪でSFを撮ろうと思ったのか。
監督:『ブレイドランナー』の始まりが大阪を背景にしていて、SFっぽいイメージがありました。エキゾティックな感じに魅力を感じていたんです。昨年の大阪アジアン映画祭で、関西国際空港からバスに乗ってくるときにSFっぽいイメージであることを再確認しました。

━━━本作の構想は昨年の初来日以前に考えていたのか。
監督:大阪アジアン映画祭に招待されて、大阪に行けると分かってから考えました。来たこともないのに、勝手に想像していました。

━━━かなりオリジナリティーのあるSFだが、監督が考えるSFとは。
監督:大層なSF映画でもその中で小さい話があると思います。自分はその中の小さい話を撮ったと考えています。

━━━大まかな設定は決めているけれど、かなり役者に委ねるスタイルは、最初からそういう風にするつもりだったのか。
監督:前作の『遭遇』もそういう風にして撮った作品です。朝起きて紙一枚ぐらいにその日の内容を書いて、皆にやってもらうというスタイルでした。『遭遇』以降は役者を自由にやらせるのが楽しいし、演技をするときの緊張感が保てるし、役者の良さもでるので、今は自由にやらせるスタイルにしています。

━━━2作連続で主演を務めているミン・ジュンホさんの魅力とは。
監督:とりあえず親しいからです(笑)。ジュンホさんは真剣にやってもサイコみたいなところがあって、人が見るとちょっとおかしい部分があります。そんなところがすごく好きで、『遭遇』のときにジュンホさんがiPhoneを見せるシーンは、実際に私にやったことを取り入れたりしています。

━━━プロデューサーとして、女優としての杉野さんをどう見ているか。
監督:はじめはジュンホが主人公だったのですが、撮影、編集をしているうちに、杉野さんに人を惹きつける力やオーラがあるので、主人公を杉野さんに変更しました。
プロデューサーとしての杉野さんですが、プロデューサーの質は二つに分けられます。一つはどれだけお金を集められるか。もう一つは人です。お金の部分はまだ分かりませんが、一緒に仕事をできる人を集める力はすばらしいです。偶然この大阪アジアン映画祭でお会いして、映画を作ろうという話になったという意味でも人を惹きつける力や挑戦するパワーがあります。初対面の監督に一緒に映画を撮ろうと言われたら、普通は拒否をする人が多い中で、「やろう」という彼女の大胆さが素晴らしい。無理を承知で依頼したのですが、それを真剣に受け取って形にしてくれたのが、とてもありがたかったです。

━━━作品のみどころは?
杉野:この作品は震災の次の日に一日で撮った作品ですが、まさに日本のそのときの大変な状況が写り込んでいる作品だと思います。現実とフィクションがシンクロしていて、見ていて緊張感があります。映画は準備をして、脚本を書いて、作るまで時間がかかるのが普通ですが、この作品のように映画がもっと身近なものであると感じていただけたらと思います。

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  インタビュー終了後、舞台挨拶に駆けつけた主演のミン・ジュンホさんは、本作について「地震の混乱や恐怖、人が死ぬという感情が俳優たちの表情だけではなく、風景も含めて表現できた作品。」、「この映画が一つの表現で、その瞬間を暗い状態なら暗いままで捉えている。」とコメントし、共演の杉野さんについては、「集中力が本当に素晴らしく、準備期間がない中で、いつでも状況を理解する力があった。」と賛辞を惜しまなかった。
 韓国でのシーンを交え、日本のシーンでも韓国語と日本語が入り混じる『大阪のうさぎたち』は、映画作りの新しいスタイルを提示してくれた。映画祭がきっかけで誕生する大阪発映画としても意義深い作品だ。関西先行公開となる本作で、いつもの大阪がスクリーンでどのように映し出されるのか目撃してほしい。

<シネルフレ掲載>