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昨年の大阪アジアン映画祭コンペティション部門でジャパンプレミア上映された『遭遇』が、7月7日から一週間限定でシネ・ヌーヴォXにて公開される。同時公開されている『大阪のうさぎたち』と二作品で主役を務めたミン・ジュンホさんが、舞台挨拶のため来阪。両作品の監督、イム・テヒョン監督との出会いから、『遭遇』、『大阪のうさぎたち』の撮影秘話、そして今後の活動まで幅広いお話を伺った。

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―――『遭遇』で主演されるまでは、どんな活動をしてきたのでしょうか。

高校、大学とアメリカで過ごしていたときに、俳優になりたいという夢が膨らんできたので、韓国に戻りソウル芸術大学に入りました。チョン・ドヨンさんなど多くの俳優を輩出している大学です。その後軍隊も無事終え、演劇科だったので、卒業後は舞台を中心に活動をしていました。収入面で足りなくなると映画やドラマに出たりもしましたが、本腰を入れてやっていたのは演劇ですね。

韓国に戻ってきた元々の理由は映画俳優になりたいということだったので、演劇の活動をしてきましたが2010年からもっと自分のことを知っていただいて、演技を通じていろんな人に喜んでもらったり、希望を見いだしてほしいと路線を変えて映画、ドラマに切り替えています。演劇とは違って、みなさんとたくさん出会えますから。

そのタイミングで、イム・テヒョン監督が私の演劇をご覧になったんです。『遭遇』のプロデューサーがイム監督に企画をもちかけたところ、「その映画を撮るのなら、私が是非使いたい主演男優がいる。その俳優を使ってくれるなら映画を撮りましょう。」とおっしゃり、プロデューサーからすぐに私のほうに電話がかかってきました。私にとって初めての長編映画で初めての主演でした。

―――イム監督はインタビューで、ミン・ジュンホさんを「ちょっとサイケなところがある。」とおっしゃっていましたが。

ぼくも同じです(笑)。ちょっと違う世界にいるサイケな人です。イム・テヒョン監督はポーカーフェイスなので、監督に対して関心がありました。

―――朝に一枚の絵コンテを渡して撮影するような、脚本に頼らないスタイルの撮影はジュンホさんには合っていたのでしょうか。

イム監督の撮り方は私にはピッタリでした。決められた演技をしなさいと言われると、息が詰まって自分が自由ではいられません。どちらかといえば、ある程度の主題をポンと投げられて、「好きに演じてごらん」と言われるのが合っていました。セリフをしっかりと覚えて臨むスタイルではなく、状況や感情を重視するスタイルなんです。
イム監督作品でも、『大阪のうさぎたち』ではセリフをきちっと決められたんです。映画のスタイルによって撮り方を変えていますね。『遭遇』は私にとって楽しく撮影できた作品でした。

―――撮影が進むにつれ苦悩が深まる監督役がリアルでしたが、実際に演じてみてどんな感想をもたれましたか。

監督って本当に大変な職業なんです。エネルギッシュでないとできません。私はスタッフが準備してくれた囲いの中にいる訳ですが、実際の監督は作るところからやらなければいけないので、演じる監督よりもはるかに大変ですね。無から有を作るわけですから。

―――監督が苦悩を深める一方、途中から登場したエイリアンはどこかファニーで現実的で、どんどん現実逃避していく監督との対比がユニークでした。

エイリアンを演じたのは『さよならいつか』のプロデューサー、チョー・ソンフン氏で、実物もとても面白い人なんです。途中でエイリアンが帰るシーンも、本当にチョーさんに用事が入って帰らなければいけないことになったのを、作品に取り入れています。出演も快諾してくれ、元々ダンサーだったのでユニークなダンスも披露してくれました。昨日彼にメッセージを送ったら、「インタビューで是非自分の話を入れて。」と返事がありました(笑)。

―――『遭遇』でジュンホさんが好きなシーンはどこですか。

自分の昔の家で主人公が思い出の品を探し出すシーンや、夕陽をバックにして主演を演じた青年に「今回この作品をもってカンヌにいけなくてごめんね。」というシーンが気に入っています。

実はこの作品のときは、わざと太っているんです。監督には「私の映画でカッコよく映ろうと思うな。」と言われたんです。カッコいい人が演じる監督ではなく、純粋な”監督”を要求されました。観客がみたときに、本当に監督らしいと思ってほしいので、少し太って、髪もボサボサにしました。

また、映画には登場しないエピソードもあります。私は涙腺が堅くて涙が出ないのが弱点で、監督にもそういうシーンがあるなら期待しないでと話をしていたのです。激しく地面を掘っていくシーンで陶酔してしまい、本当に自分の妹の何かを探し出したような錯覚に陥ってしまい、初めて涙がでたんです。本当に『遭遇』の中の監督、ミン・ジュンホになれたと実感したシーンです。イム監督にすれば、まさかそのシーンで泣くとは思っていなかったので、「カメラを回せ!」と。でも結局は泣かないシーンを採用しました。イム監督は涙を使うのは映画の中で一度だけと思っていたので、そのシーンで使ってしまうと、妹に会ったシーンで使えなくなるのです。妹と抱き合ってのシーンでも1、2テイクはダメでしたが、3テイク目で涙が出て、私の持っているジンクスを破ってくれました。本当にイム監督には感謝しています。

―――昨年の大阪アジアン映画祭でジャパンプレミア上映されましたが、そのときのお客様の反応はどうでしたか。

韓国と笑いをとるシーンが違いましたね。日本のお客さんの方がたくさん笑ってくれました。韓国では長くて少し飽きのくる映画みたいに思われました。エイリアンが出るシーンでも日本のお客さんの方がたくさん笑ってくれましたし、監督が「カット、カット、カット!」と言うシーンでもたくさん笑ってくれました。なぜここで笑うのかなと思いましたが(笑)。ちなみに、映画の中でUFOの写真を見せるシーンがありますが、実は実際にぼくが撮影の2日前偶然撮った写真なんですよ。ちなみに、『遭遇』は韓国でも上映される予定になっています。

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―――昨年の大阪アジアン映画祭で初来阪されたそうですが、大阪にはどんなイメージを持っていましたか。また現在はどんなイメージを持っていますか。

大阪に来る前は、大阪のお笑い芸人に関心がありました。大阪は韓国の釜山にすごく似ていて親しみも湧きました。いろんな情報を入手して、実際に来てみると、とても面白い街でした。東京に行っても、ソウルに比べるときれいだけれど、名古屋や大阪の方が「日本に来た!」という気分になります。

―――『大阪のうさぎたち』は、企画段階からイム・テヒョン監督と話し合ったりしていたのですか。

企画の段階では何も私はタッチしませんでしたが、大阪アジアン映画祭に『遭遇』を出品し、来阪することになったので、イム監督が「せっかく大阪に行くのだから、何か一本撮らないとね。撮りたいよね。」と淡々とおっしゃったんです。私はイム監督に対して信頼度100%なので、「いいですよ。」と。イム監督は作品に没頭して、作り上げるんだという意義の方が大きくて、その後についてくる利益や出演料など関係なしなのです。監督が「撮るよ。」といえば「やります。」といった感じで、監督は僕が出演料を要求しないから使ってくれるのかなと思ったり(笑)。

―――撮影の前日に地震があり、その翌日に撮影したといった特殊な状況でした。

もともと韓国の女優さんを使うつもりでしたが、地震のため来阪はキャンセルするし、スタッフもパニックになりました。イム監督は、「何とかなるだろう。ここにいる人で作ればいいじゃない。」といった感じで、杉野さんに出演を打診してみると言ったんです。私は止めた方がいいのではと思って、部外者のふりをしていたんですが(笑)。杉野さんはすごく人が良くて、クールにOKしてくれました。違う人にお願いしていたら、きっと敬遠されていたと思います。スタッフにキリスト教信者が多かったので、「神様が助けてくださった。」とみんなで話していました。でないとあり得ないですよね。まさに奇跡です。

―――元々はジュンホさんが主役だったそうですね。
撮影に入って少しして、「私が主演するよりも、杉野さんが主演の方がいいのではないか。」と監督に提案したんです。実は大阪アジアン映画祭で来阪していたので、大阪をもっと楽しみたい気持ちが正直ありました。主演になると考えなくてはいけないことや、没頭しなければいけないことが増えるという時間的な面、責任感から解放される面や、杉野さんは日本語がしゃべれるので、日本語で伝わりやすいような話にするには、彼女が主役がいいのではという部分もありました。

―――ホテルのシーンでは、2人それぞれに3つの条件が与えられていて、相手はそれを知らずに演じていたそうですね。

杉野さんには突然叩かれて、いったい何が起こったのか、この状況をどう理解したらいいのか本当にパニックになりました。カットがかからないので、そのまま撮影を続けたわけです。これも一つの経験になりましたが、もう一度同じことをやってとお願いされたら、そのときは多分ちょっと首をかしげるでしょうね。『大阪のうさぎたち』スタイルはちょっと難しいです。セリフはなくても、私が内容を把握した段階で撮影に入りたいという想いはありました。

―――これからの活動についてお聞かせいただけますか。

韓国のテレビドラマで『バンパイヤー刑事』Part2への出演や、新ドラマ『1000人目の男』、KBSの時代劇にも出演します。今年の冬ぐらいまではドラマ中心の活動になります。私という人物を知ってもらうのにドラマは早いですから。ドラマに出演するのもいい映画を作るためのステップです。

―――『遭遇』出演のあと、監督として短編『ドメスティック・バイオレンス』も作っていらっしゃいましたね。

『遭遇』で監督役をやったことに触発されました。実際に自分で監督をしてみると、大変だけど楽しいんです。変な話ですが、俳優も監督も同じ楽しさでした。苦労の度合いからみると監督の方が遥かに多いです。撮影が終わって夜中家に戻り、顔を洗ってふと顔を見ると、自分の顔が骸骨に見えたことがありました。このまま死んでしまうのではないかと思いましたね。私のエネルギーを全部吸い込んでしまって、しっかり気を持たないとという恐怖感がありました。でも、映画が完成してみると、なんとも言えない充実感がありました。結果、俳優も監督も面白いということです。

―――日本での活動も精力的に行っていかれるのでしょうか。

日本でもすぐに映画やドラマは難しくても、CMや朝のエンターテイメント番組に少しずつ出演できればと思っています。タレント性の高い俳優みたいな形でも面白いと思っています。現在は二週間に一度、韓国で録音したものを日本のラジオでオンエアしています。

―――すでに何回か日本でファンミーティングをされているそうですが、日本のファンは韓国のファンとは違いますか。

すごく義理がありますね。韓国のファンも情熱的ですが、イ・ビョンホンのドラマが始まれば、イ・ビョンホンファンに、チャン・ドンゴンのドラマが始まれば、チャン・ドンゴンファンにと目移りが激しいです。日本のファンは一度この人と決めるとずっと応援してくれます。私もたまに、日本のファンを家族のように感じる時があります。もしも私がビッグスターになったときでも、今応援してくれているファン、目の前の人たちを忘れてはいけないと思っています。彼女たちがいてくれるので、とても心強いです。

―――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

まだまだ韓国での活動が多いので、日本のファンたちにどれだけたくさん私の姿をお見せすることができるか約束はできないのですが、私に会えない期間が長くなったとしてもぐっとこらえてください。我慢に値する大きなプレゼントをもってみなさんの前に現れます。それは約束します!

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インタビュー終了後、途中から『遭遇』を鑑賞。昨年鑑賞より、この作品の空気感やユニークさ、韓国映画らしくないニュアンスのある表現を心地よく感じることができた。

鑑賞後のミン・ジュンホさんトークでは、開口一番「退屈な映画でしたが、寝ませんでしたか?」と掴むサービス精神旺盛な一面も垣間見せながら、フェイクドキュメンタリーから劇映画に変わっていくイム・テヒョン監督の撮影秘話に触れ、「監督にとってもはじめての挑戦で、すべての制約を取り払って、心の向くままに撮ってみた映画」と語った。イム監督自身の姿が投影されている部分や、常に疑問を持たせる映画の形になっていることにも触れ、来場の観客からも熱心な質問が出される非常に盛り上がった公開初日だった。

映画というものは、そのときの観る者のコンディションが印象を左右するのかもしれない。今の私には、アコースティックな音楽や、田舎の風景に癒され、そして予測不可な展開を心から楽しめた。なかなかないタイプの作品、明日もミン・ジュンホさんによる舞台挨拶が予定されているので、是非この機会をお見逃しなく!