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最新作『グレートラビット』がベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞を受賞したことを記念し、和田淳全14作品一挙上映が10月13日(土)より第七藝術劇場、神戸アートビレッジセンターで開催される。
短篇アニメーションを観るのはひめじ国際短編映画祭以来。あのときも、短篇アニメーションのインパクトの強さや作品の個性、質感に感動したのだけれど、今回は世界レベルの短篇が勢揃い。

そして、神戸出身の和田淳監督の作品が、また素朴でシュールで、どこか可笑しくて見入ってしまうのだ。
シャープペンシルで描かれた絵のぬくもりや、独特のささやき声、そして人間も動物もボーダレスな中での和田ワールドはちょっと中毒性もあり。一年間のイギリス滞在を終えて帰国した和田監督に、『グレートラビット』制作秘話や短編アニメーションの魅力を語っていただいた。
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『グレートラビット』”The Great Rabbit"
(2012年 フランス 7分)
監督・脚本・アニメーション・編集 和田淳
(c)Sacrebleu Productions - CaRTe bLaNChe - Atsushi Wada - 2012

━━「不服従」というテーマから、どのようにして本作の着想に至ったのか?
はじめにイスに乗ったウサギと、玉みたいなものを触ってもらうために並んでいる子どもの絵が浮かんでいたんです。その後「不服従」というテーマを聞いて、その絵とつながったものができるのではないかという考えがありました

━━━「不服従」をネガディブなイメージで捉えているのか?
はじめは、もっと軽い感じでいこうかと思ったのですが、真剣に捉えなければいけないなという部分はありましたね。服従ということを前提として、それに逆らうという意味があるわけですが、では何に服従させられて、何に逆らおうとしているのか分からなくなってきているというのが実感としてあります。誰が一体悪いのかが見えにくくなっているので、それは今回のテーマとも関わりがあるのではないかと思います。

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━━━和田監督の作品を通して、宗教的な儀式性や反復性の末のズレがよく描かれているが。
直接信仰ではありませんが、今回に関して言えばウサギを神聖なものとして描いています。玉に触ってもらおうと並ぶ子どもが、通り過ぎた後服を投げるシーンがあって、信仰世界ですら立場があやふやになっているといったところが「不服従」につながっているかもしれません。何か輪になって大きな力に動かされて一生懸命やっていることを描くことに興味があって、いろんな作品に出てくるモチーフではあります。輪になって踊ったり、何かに操作されているとか、ある一連の動きがあって少しずつ変わっていくとか。

━━━ささやきやつぶやき声が印象的だが、音に関してどんな部分でこだわってるのか?
できる限り自分が出す生音を使いたいと思っていて、自分がイメージした音を自分でできるのがいいなと。『わからないブタ』までの作品はほとんど家で音を撮っていました。家の中でいろいろ叩くものを探したり、体を叩いたり、それが結構楽しいです。『わからないブタ』や『グレートラビット』はサウンドデザインの方にお願いして、録音ブースで音を撮ったので、人と一緒にやることの戸惑いはありましたね。

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━━━アートアニメは海外では一般的なのか?
海外でもあまりその言い方は使われていなくて、何て呼べばいいのか難しいところがあります。
しかも短編は上映が難しいので、ただ作るだけではどうにもなりません。作品をどうやって売り込むか、どうやってお金をもらって制作するかを考えていかなければならないのです。現在CALFという企画・宣伝のメンバーになっていますが、短編アニメーションの普及や制作環境の整備をやっていこうという団体で、今回もその活動の一環として上映させてもらったり、オリジナルを制作していこうとしています。

━━━監督にとって短編アニメーションの魅力とは?
アニメーションを作り始めた頃から長編は念頭になくて、必然的に短編になった感じです。長編と短編は、企画や発想の段階で考え方が違って、一つのアイデアがあって、それをパンと見せるのが短編でできることかなと思います。

━━━短編アニメーションを作り始めたきっかけは?
落書きがきっかけで、自分の納得できる絵が描けたときに、「これを動かしてみるとどうなるのかな」と思ったのがきっかけです。アニメーションに興味があったと言うより、絵を動かして、時間軸に並べることによって生まれる緊張感や間を表現したくて作った部分が大きいです。

実写になるとカメラに入った部分全てが作品になってしまうので、背景も含めて自分ではコントロールしきれません。逆にアニメーションでは、自分で作り込めるところがあるのでそれができるのが大きいです。一人でやりたかったので、そういう意味でアニメーションというのが自分に合う手法だと思っています。

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━━━映像やアニメの原体験を振り返って影響を受けたと思う作品は何か?
僕はアニメーションをすごく見てきたり、それらが好きだったわけではなく単純に作りたかったんです。影響でいうとコント、松本人志さんの『ビジュアルバム』を見ていて、それの発想とか間がすごく影響があると思います。

━━━これからご覧になるみなさんに、メッセージをお願いします。
自分の全作品を上映することは滅多にありませんし、Aプログラムの海外短編アニメーションも見てもらえるいい機会なので、是非これらの作品に触れてほしいです。観てもらったら、どこかにひっかかるものがあると思います。

<シネルフレ掲載>