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映像、音楽、どれをとってもとにかくカッコイイ『ミロクローゼ』。
一番の見どころであるタモンの立ち回りシーンにかぶさる音楽がメチャクチャカッコよくて、ジンジンしていたのですが、それがmama!milkが手掛けた音楽と知り、さらに興奮(笑)インタビューで絶対聞きたいと思ってました。

新型インフルの時に神戸で撮影したときの話(半分は神戸で撮影したそう、熊谷ベッソンが歌い踊るのは大丸前撮影!)や、燃費がリッター2kmというベッソンカーの話題など合間でも色々話をお聞きしながら、あっという間のインタビューでした。

渾身の立ち回りシーンの作り込み方など、石橋監督のこだわりと想いが伝わるインタビュー、ご覧ください!
━━━一度見たら忘れられない個性的なキャラクター(オブレネリ ブレネリギャー、熊谷ベッソン、タモン)ですが、どうやってこれらのキャラクターを作っていったのですか?
 いつもの作品の作り方としては、まずビジュアルのイメージや断片的なキャラクターのアイデアを先にいくつか出していき、形になりそうなものを広げていく形です。その中で、オブレネリ ブレネリギャーに関しては、絵本のようなお話で、かつ本人は特に大したことをしていないけれど、ナレーションでヒーローのように語り継がれていくような設定が面白いのではないかと思いました。タモンに関しては、長回しによる立ち回りのシーンを作りたかったので、男らしい一途な人物を作っていきました。(熊谷ベッソンは)コミカルながら男臭さがかっこよかった日本の70年代のキャラクターです。他の2人は恋に一途ですが、一途な人ばかり登場するではなく、恋の悩みをコミカルに相談に乗っていくような話が面白いのではないかと、最終的にこの3つで組み立てていきました。

━━━最初から3つのキャラクターを一人で演じてもらうつもりだったのでしょうか?
 もともと5つぐらいのエピソードがあって、女性が登場する話もあったのですが、今回は3つに絞って、すべての役を一人の俳優に演じてもらう様に最終的にまとめました。人間の様々な側面を3つの話で別々に描きながら、観終った時に一人の人間を想像できる様な新しい映画の作り方に挑戦しようと、山田孝之さんにお願いしました。

━━━その3役を一人に演じてもらうと決めた段階で山田孝之さんのキャスティングは視野に入っていたのでしょうか?
 早い段階でそれが演じられる人を考えていました。演技しすぎて、観終ったときに役者のイメージだけが残ってしまうと映画として成立しないので、表現力があり、自然に演じられる人ですね。タモンの役が一番しっくりくると感じて山田さんにお願いし、あと二つ全然別のキャラクターを演じられるか相談しました。彼自身も一つの映画で3つの役を演じられる仕事はなかなかないので、自分自身のチャレンジとしてもやりたいと快諾して下さいました。コミカルなキャラクターはあまり演じたことがないとおっしゃっていたので、ベッソンをどういう笑いにしたいのか割と細かく伝えましたが、タモンは本当に山田さんご自身で組み立てていらっしゃいましたね。(オブレネリ ブレネリギャーは)本人が一番悩んでいました。

━━━女性が非常に美しく描かれていますが、女性を撮る際のこだわりはありますか?
 美しく撮りたいと常に思っています。力強い女性像を好んで撮る傾向があり、メイクや衣装を含めて女性の色気があってかつ強いという感じです。ミロクローゼ自体もやさしい役ですが、完全にオブレネリより上の立場です。そういうイメージは自分の中で女性というものがいつまでたっても分からない。おそらく分かり合えないものだと思っていて、だからこそ神秘的で追いかけていけるような気がします。女性への憧れがあって撮っているつもりです。

━━━原田美枝子さんの起用の理由は?
 原田さんのファンだったので、やってもらえるならと壷振り師お竜の役をお願いしました。原田さんは最近悪役がないし、殺陣をやりたいが機会がなかったと今回喜んで参加していただけた上に、撮影現場でも一番楽しんでいただけました。結構刀は重たいのですが、それをスッと抜いて、サッと戻したりする動作など練習してきて下さり、非常によかったです。唐突にどんどんキャラクターが出てくる突飛な話の場合、演じている方に存在感がないと軽いものになってしまいますが、その中で原田美枝子さんや奥田瑛二さん、鈴木清順さんなどその人の存在感が際立って、映像の中にも効いてきますね。

━━━ビジュアルのこだわりに並々ならぬものを感じる一方で、日本人が作っているのにボーダレスな雰囲気があったり、70年代の男が色気のあった時代を見せたりされていますが、本作においてビジュアル的なものでテーマを決めたりされていたのでしょうか?
 特にテーマは決めていませんが、最初に映画のアイデアを考えたり、シナリオハンティングをしていく中で、自分が影響を受けたものがここに入ってきていますし、やりたかったことや、今まで溜めていたことが反映されています。例えばねぷたのような行灯の前に立っている岩佐真悠子さんのシーンは、初期の頃からイメージがありました。シナリオハンティングで弘前に行ったときねぷたを見て、行灯の前に立っている女性のイメージがふっと湧いたので、それをシーンに入れ込んだ形です。立ち回りのシーンも、7月半ばに開催される土佐の絵金祭りに行ったときに、歌舞伎絵の絵師・絵金の描写に触発され、長回しの殺陣シーンを思いつきました。

 このように、「こういうシーンを作りたい」というビジュアルイメージの集約になってくるのですが、その中で一つ一つのデザイン面でも細かい部分も出てきます。例えばタモンの着ている着物柄は茨(いばら)ですが、「茨の道を進む」というストレートな意味もありつつ、身体にまとわりつくものです。また岩佐さんが着ている着物は、蔦が絡まってくるようなデザインになっており、着物のデザインも身体との関係を持たせました。前面に出すことではありませんが、きっかけとしていくつかこだわって作った部分はあります。

━━━タモンの立ち回りシーンは観終わった後もジンと余韻が残るカッコ良さでしたが、どうやって撮影されたのですか?
あのシーンを撮りたかったからこの映画を作ったというぐらい思い入れがあります。色々と段階を踏んで作っていきました。最初にイメージコラージュで写真を撮って、こういうレイアウトでやっていこうというイメージの絵巻物的なものを作り、次はどれぐらいの尺に収めるかという部分で写真を切り貼りしたムービーコンテを作りました。そこからアクション監督と話をしながら殺陣のアイデアを盛り込んでいき、完成したものをビデオに撮って、山田孝之さんに殺陣を習得してもらい、その上でリハーサルを繰り返して本番と、結構時間がかかりました。

 殺陣も大事ですが、この映像で一番こだわった部分は、いくつかのレイヤー(層)があり、手前だけではなく奥の方にも色々なドラマが起こっているようにしたかったのです。それぞれの層を別々に撮って、後で合成する方がコンポジションがうまくいきますが、それをやると臨場感がなくなり、前と後ろの人が絡み合わなくなってしまいます。役者さんには負担を強いましたが、何度か練習をしていいポジションでくるようにし、一発撮りしました。
とにかく奥の人が大事なので、手を抜かないようにと奥の人ばかり細かい指示をしていました。スローモーションですから、どの絵もいい絵になっていないといけないし、そうでなければ絵巻物は成立しません。どのコマも完璧にするには、常に全身に神経を行き渡らせなければいけないので、(山田さんは)かなり体力的に大変だろうと思いつつも、奥の人達の動きに指示を繰り返し出していました。

━━━立ち回りの音楽のカッコ良さがさらにシーンの迫力を増していましたが、音楽担当のmama!milkさんをはじめ、本作の音楽に対するこだわりをお聞かせください。
 mama!milkは15年以上の付き合いで、バリエーションの多い音楽をお願いし、タイプの違う曲をたくさん作ってもらいました。ベッソンに使う音楽やタモンに使う音楽など、雰囲気を変えていきますから、そういう意味でかなり引き出しの多いミュージシャンだと思います。音楽のカッコ良さは、映像もそうだと思いますが、その人の持っている瞬間的に作り出すセンスやニュアンスにシビレる部分にあって、(mama!milkには)僕はグッとくる部分がたくさんあるんです。メロディーももちろんいいのですが、特に清水さんのベースの入り方とかカッコ良くて、普通じゃないです。

 立ち回りのシーンでベースがソロに入ってきて、タモンが手前にどんどん向かってくるところが一番カッコいいです。映像と音楽が何ともいえないぐらいマッチすると、頭に焼き付きますよね。映像と音楽を一緒に覚えて、思い出に残るのが映画の良さだと思います。
久保田修さんの曲もすごくいいですし、熊谷ベッソンのダンスミュージックは私が作曲しているのですが、すべて思い入れがあり、サウンドミックスもすごくこだわっています。5.1チャンネルサラウンドで体感してもらうとより一層ノリが良くなるので、DVDで観るよりも劇場で観てもらって音楽を楽しんでいただきたいです。エンドロールの主題歌がONE OK ROCKの書き下ろしですが、エンドまでノリ良く作っていますので、音楽と映像を同時に楽しんでもらえればと思います。

━━━香港映画祭から世界の映画祭を回られ、かなり熱狂的に受け入れられたそうですね。
 「好きだ」と言ってくれる人は、本当に気に入っていただいているみたいですね。例えばモントリオール国際映画祭のディレクターは「今年はとにかくこれがベストだ」と自分の作品のように大事にしてくれ、賞を取ると自分が取ったかのようにすぐに連絡をくれ、とにかく喜んでくれました。ありがたいです。
この映画は、観るというよりも体感するというか、「この映画に遊びに行こう」といった感じで劇場に来てほしいなと思っています。海外の方は元々そういう風に映画を楽しめる傾向があり、特に香港ではおおいに盛り上がりました。

━━━『ミロクローゼ』は今の日本映画に風穴を空けるような衝撃がある作品でしたが、石橋監督ご自身が今の日本映画に感じることは?
 映画作りをされている方は、どの映画もすごい情熱を持ってやっていらっしゃいます。ただ全体的な流れとして、作りたいものがあるのになかなか作れないジレンマが、自分も含めて皆さんあるのではないかと思います。テレビドラマの映画化や原作マンガの映画化というような一つの流れができてしまっていることへの危機感や、それだからヒットするということに「それでいいのか」という気持ちがあります。その流れを変えていくには、時間がかかっても映画を作り、成立させていくことが大事だと思いますし、(『ミロクローゼ』が)一つのきっかけになってくれればと思います。見に来る人たちが少なくなっているので、それを変える方法を考えていきたいですね。

━━━今まで影響を受けた監督や、お気に入りの作品を教えてください。
 スタンリー・キューブリック監督はどの作品も好きなのですが、最近特に好きなのが遺作の『アイズ・ワイド・シャット』(99)です。キューブリック独特のエロシチズムや、色合いや、カメラワークがすごく出ていると思います。最近観た映画では『パフューム ある人殺しの物語』(06)がここ10年で一番です。匂いというテーマで映画を作っていて、観ているときに匂いがするわけではありませんが、匂いを感じさせようとする努力や手法、アイデアを使っています。非常に美しい映像で匂いを感じさせようとする試みが、新しい気がしますね。新しい試みをしている作品を観ると「やられた」と刺激になります。観るだけではなく、サウンドも大事ですし、五感を刺激するようなことは映像にはすごく大事だと思います。

━━━斬新な映像や個性的なキャラクターが繰り広げる物語は愛や恋に繋がっていきますが、直接異性に向き合うことが怖いという草食系男子が増えてきた今、あえて愛や恋を描いた意図は?
 恋をすることで、その先に大きな愛につながるのですが、きっかけは問わず、恋愛をすることはすごく大事だと思います。その話をこの間インドでもしたのですが、インドでも男の子たちが恋をしないでネットやゲームで満足してしまうそうで、全世界的にそういうことが起こっているようです。バーチャルなものだけでは、人との関係を薄くさせてしまう。やはり人のことが気になって、好きになって、はじめて大事に思ったり、それが大きな愛につながって、好きな人以外に対する優しさにも広がっていきます。しかも恋は楽しいし、とても自然なものですから。

━━━最後にこれからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
 ストーリーを追いかけて観る映画ではなく、それぞれのシーンを楽しんでもらいたいです。このシーンが好きとか、このキャラクターが好きとか、アトラクション的な楽しみ方をしてもらえたらと思いますし、映像と合わせて音楽も楽しめる作品になっていますので、できるだけ多くの人に観ていただいて、日本映画の更なる可能性に繋げていけたらと思います。

<シネルフレ掲載>