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(左)ヤン・イーチェン監督、(右)ジェイムス・シュープロデューサー

アジアの中でも台湾映画は右肩上がりの成長を続けており、台湾国内でも若い層をはじめ、多くの支持を集めている。その勢いそのままに、今年のOAFFでは昨年台湾をはじめアジアで注目を集めた3本の最新台湾映画『BBS住人の正義』、『GF*BF』、『ポーとミーのチャチャ』が日本初上映された。

台湾映画の現在、そしてこれからを探るトークセッションが16日(土)シネ・ヌーヴォXにて開催され、満員の観客の中、
ヒーロー・リン監督(『BBS住人の正義』)
ヤン・イーチェン監督(『ポーとミーのチャチャ』)
ジェイムス・シュープロデューサー(『ポーとミーのチャチャ』)
ヤン・ ヤーチェ監督(『GF*BF』)

の4人が自作の制作秘話や資金回収の状況など、ここでしか聞けない台湾映画製作者の試みや悩み、今後の展望など1時間という短い時間の間に次々と話が展開。特に若い映画人たちの中で、一回り年上のヤン・ヤーチェ監督が、大陸での映画制作、上映の難しさを語りながら、台湾映画人たちが今岐路に立っていることを示唆し、香港映画人とはまた違った葛藤を抱える姿も垣間見えた。さすがアニキ!この日は、『GF*BF』上映後のQ&A,、そしてサイン会後のインタビューと、丸一日ヤン・ ヤーチェ監督節を聴くこととなるのだが、映画もしかり、自身のポリシーをしっかり持ち、一見静かな中にも闘志がみなぎるヤン・ヤーチェ監督の内面にも触れることができた。まずは、このトークセッションの模様をご紹介したい。

―――台湾映画の制作事情について教えてください。
ヤン・イーチェン:台湾国内で、台湾映画が活発になってきており、若い監督の入る余地があります。私はもともと脚本を書いていましたが、短編を作り、そして今回初の長編作品を作りました。

―――『ポーとミーのチャチャ』の企画はどのように進めていったのですか?
ジェイムス・シュー:私は今回初めてプロデューサーを務めましたが、アン・リー監督のもとでプロデューサーを務めた方が手伝ってくれたり、美術面ではホウ・シャオシェン監督の元でやっていた方が助けてくれたり、台湾映画界は先輩方が後輩を手伝ってくれるので、本当に助けられました。中央政府や高雄市(ヤン・イーチェン監督と共に高雄市の出身)が資金を出してくれたので、恵まれた環境で映画を作ることができました。

―――台湾映画界では、ホウ・シャオシェン監督以降、新人が出にくかったようですね。
ヤン・イーチェン:あまり人気がなかった台湾映画が変化しだしたのは、2008年ぐらいからです。ウェイ・ダーション監督の『海角七号/君想う、国境の南』以降、その流れが変わってきました。

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(左)ヒーロー・リン監督、(右)ヤン・ヤーチェ監督
―――『BBS住人の正義』、『GF*BF』の企画の意図は?
ヒーロー・リン: 『BBS住人の正義』は日本やアメリカの文化を吸収した産物です。ネットを題材にした映画は他にもありますが、アニメ制作を映画の中に放り込む形で作ってみました。アニメというカテゴリーだと資金調達が難しいので、実写を取り入れ俳優も入りやすいようにしました。ハリウッド映画の『マトリックス』の影響を受けていると思います。生の人間がアニメとミックスすることで風格が出て、若い人たちにも受け入れられやすいのです。

ヤン・ヤーチェ: 『GF*BF』は、1985年から現在まで30年に渡る二人の男性と一人の女性の友情や愛情を描いた物語です。戒厳令時代から自由な時代を迎えた社会的背景を描きながら、今になってもはっきり解決しない感情を表現しました。近年台湾が沈んでいる感じがするので、社会が熱気を取り戻してほしいと思い、作りました。

―――作品の制作から資金回収までの状況を教えてください。
ヤン・イーチェン: 『ポーとミーのチャチャ』は宣伝しているときはいいと言われていましたが、興行収入は芳しくなかったです。同時公開が『アメイジング・スパイダーマン』と『ダークナイト・ライジング』だったのも影響しました。知名度がまだまだ不十分でしたが、高雄の町が舞台なので、高雄では一番長期間ロードショーされました。

ヒーロー・リン:アニメ会社を作っているので、アニメ制作はその会社に下請で出し、コストを削減しました。今のところ『BBS住人の正義』の収支はトントンといったところです。

ヤン・ヤーチェ: 『GF*BF』はやや儲けがでている状況です。コストが非常にかかって、回収するのが大変でした。台湾映画は、中華圏で上映されないと資金回収するのが難しいですが、まだ中国に入れていません。
台湾の映画制作者にとって興行先は中国市場か、シンガポール・香港・日本などのアジア市場の2つのルートがあります。中国市場は台湾と社会や文化の差が大きいので、なかなかうまくいきません。一方、台湾・香港・日本向けだと製作費を多くは望めないのですが、題材の制限がないのはメリットと言えるでしょう。今、台湾の映画製作者はどちらに進めばいいのか、岐路に立っていると言えます。
『GF*BF』は台湾にいる中国華僑の人から出資もしてもらっています。学生運動や同性愛、混愛などのストーリーを見たら、99%大陸に向けて上映することは不可能です。ただ、グイ・ルンメイやジョセフ・チャンは中国でも有名なので、インターネットでこっそりこの作品をチェックしている人も多いようです。徐々に受け入れてもらうことで、中国の規制の門が開き、時代の自由を求める機運が高まればと思います。

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―――インターネットで勝手に観られてしまうことについて、許容されているようですね。
ヤン・ヤーチェ:中国大陸の観客が受け入れてくれることはうれしいです。中国の配給会社は出資の大きい歴史ものやスターものしか扱わず、中小規模の映画が取り上げられていません、近年台湾映画界が活気づいていますが、中国大陸でも多種多様な作品作りができることが望まれているのではないでしょうか。例えば『ポーとミーのチャチャ』のような作品は中国大陸では全然ありませんから、知ってもらいたいです。先ほど話した『GF*BF』に出資してくれた華僑のオーナーは、「台湾映画の多種多様な風格を維持してほしい」と言ってくれました。

―――好きな映画や影響を受けた作家は?
ヤン・イーチェン:中学時代はアン・リー監督の『ウェディングバンケット』を家族で観に行った記憶があります。ホウ・シャオシェン監督作品は、映像がとても美しいですね。

ジェームス・シュー:ハリウッド映画が好きでした。大学に入ってからアン・リー監督の『飲食男女』などに惹かれました。将来は『ラストエンペラー』や『イングリッシュ・ペーシェント』などの歴史ものを作ってみたいです。

ヒーロー・リン:学生時代はハリウッド映画が好きで、日本のドラマにもはまりました。台湾ドラマと違って10-11回で終わるので、展開も早くていいですね。アニメ業界に入ってからは日本やアメリカのアニメを観ました。将来は『電車男』のようにネットから題材をとってやりたいです。

ヤン・ヤーチェ:ハリウッド映画も『スーパーマン』も大嫌いでした。(会場爆笑)古い映画や文学的な映画が好きです。モノを書く仕事をしているので、向田邦子さんなど日本の脚本家はすごいと思います。人の感情を取り上げた作品が大好きで、黒澤明監督の『生きる』が好きです。