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あの戦争はまだ終わっていない。そんな想いにまた駆られるような事実を提示され大きな衝撃を受けると共に、異国の地で苦難の歴史をその絵に刻み続けた芸術家の人生と渾身の作品に出会える貴重な機会をもらった。
『空色の故郷』(00韓国)

<監督>キム・ソヨン
<出演>シン・スンナム(ニコライ・シン)、チェ・ワーリャ、パク・ガリーナ

韓国のキム・ソヨン監督がアジアのピカソと呼ばれる画家シン・スンナムへのインタビューを重ねながら、彼の作品世界を浮き彫りにすると共に、1937年にウラジオストクから強制移住させられた朝鮮人たちの屈辱の歴史を明らかにしていくドキュメンタリー。日本のスパイという疑いをかけられ、旧ソ連で沿海州に住む朝鮮人が20万人も中央アジアに強制移住させられ、その移動の間も劣悪な環境で多くの人が命を落としたという。生き残って今も中央アジアに住んでいる人たちへのインタビューを交え、移住当時の様子が赤裸々な証言で浮かび上がる。

まるで奴隷と同じような扱いを受けてきた自分たちをシン画伯は「生きる屍」と表現している。シン画伯が描く絵の中には顔がないものもある。それは自分たちが追放された奴隷と同じだからだと。自らの民族の不幸な歴史をそれでも描こうと決意したのは、こんな不幸が二度とこないようにという切なる願いからだ。むしろでくるまれた遺体、葦で作ったひつぎ、墓地、深い闇・・・。祈りや怒りと共に、刻み込まれるシン画伯の作品の数々は、当時のスターリン体制では発表することすらできなかったという。

苦難の時代を乗り越え、ようやく開催された個展で大きな反響を呼んだシン画伯は、97年6月にようやく韓国の国立現代美術館でその作品が展示された。壁面一面、44メートルを覆い尽くす超大作「レクイエム」が露呈する60年もの彼らの苦しみの歴史は、時を超えてその時代を生き抜こうとし、倒れて行った人たちの魂を伝えていくことだろう。

「自分の民族がどんな歴史的瞬間をたどったのか、それをいかに克服して生きたのか、芸術家は作品を通して表すもの」
芸術家としての自らの使命を語ったシン画伯の言葉を深く心に刻みながら、何度も映し出されるシン画伯の作品をじっくりと鑑賞した。悲劇の記録だけではない芸術的側面からのアプローチが新鮮な、知られざる歴史を語り継ぐ貴重なドキュメンタリーだ。