リエに一方的に別れを切り出して二日が経った。颯は改札を出ると派手にため息をついた。「大人の女」…少し裾の長めのタイトなワンピースに黒の短めなカーディガン、前に持ったクラッチバックに適度な高さのヒール。さっぱりした物言いに後腐れの無い関係と勝手に判断した「俺のミス」が待っていた。すれ違いざまに低い声で

「…もう、会わないって言ったはずだ。」

と告げる。「大人の女」が豹変する。

「いやよ。私はもう後へはひけないのっ。両親にもあなたと結婚するって言ってしまったし、会社だって辞めてしまったのよ。」

と周りに気を使うはずの「大人の女」が声を上げる。もっと低い声で

「それは君の問題だろう?俺は結婚するとも、会社を辞めてくれとも言ってない。」

と言い返した。不意にリエが両手を顔に当てて泣き出した。

「…酷いわっ。」

「やめろ。人が見ている。」

颯は顔色も態度も変えずに

「じゃあ。」

と少しだけ頭を下げて、通り過ぎようとする。

「…あの、金髪の高校生ね?」

顔から手を放して言った。その言葉に流石に颯が反応をする。

「…あの子は関係ない。」

「関係なくは無いでしょう?親戚でもない子供がなんであなたの住所にいるの?未成年で、それに男の子でしょ?年齢から考えても子供ってことじゃないわよね?」

「…調べたのか?」

「あなただって私のこと調べたでしょう?」

…それはお前がくだらねぇ嘘をつくからじゃねぇか。

と言いたかった。

…どこまで調べた?

命の壮絶な過去はやっと「過去」になりつつあるのに掘り出されたくない。何を仕出かすか分からないリエからはどこまで知っているのか探って置かないといけないと思う。

「彼は関係ない。学校の関係で知り合いから預かっているだけだ。」

「そうかしら?」

リエが嘯く。

「八木命くん。17才。名門××高校の主席優等生…親はいない。」

「あの子を巻き込むな。君と俺の問題だろう?」

やっと颯がリエを見た。

「やだ、怖い顔。今日は帰るわ。また……。」

リエはさっさとロータリーで客待ちしているタクシーに乗って行く。

…命。

颯が家に帰りながら神田と藍原、それに森優羽にメールを送る。