命がアメリカに行くための荷物をまとめた。颯の所から持ってきた物は一つのリュックに全部収まってしまった。

「これでいいよ。」

「僕が買いたいんだよ。行こう?」

下着やシャツ、それに私服が本当に少ない。ジーンズが1本とシャツが数枚、それにトレーナーが2枚にパーカーが1枚。決して新しいものでもない。

「普段?雨降ったりして足りなくならないの?」

「…平気だよ。毎日、洗濯するし……。下着とか靴下とかシャツって割と乾くじゃん。」

…それにしても……。

と言いたかったが優羽は止めた。

…颯が帰ってくる前に冷めちゃうんだよ。僕には早く沸かして入れって言うし……。

颯のために風呂場を改築してあげたいから…と命の事だ。自分の事を後回しにして節約していたんだろう。

颯が好きで、颯ためにきっと日々一生懸命暮らしてきたんだ。

…僕と同じ……少しでもこっちを向いていてもらうために……。

健気な命に自分を重ね、抱きしめてやりたくなる。

「ね?行こう。お兄ちゃんらしいことさせて。」

と、優羽に促されて命は渋々出かけてきた。

「ほら、混んでる…( ˘・з・)」

「なんだよ?若者の街だろ?」

「ゆーちゃん…オッサン(´∀`)」

「そーだよ。どーせオッサンだよ。」

それにしては綺麗なオッサンだと命が笑った。日曜の「若者の街」は人でいっぱいだ。たぶん、殆どは地方から出てきた観光者だろう。

流行りのビルの流行りの店に二人で入る。

店員がすぐに寄ってきた。

「…君?モデル?」

「違います…。」

命の顔がうんざりした。

「今日はなに?アウター?インナー?」

命の今日の格好はジーンズに白シャツだ。手には学校にも着ていくカーディガンを持っている。ジロジロと命を値踏みするように見た店員が

「カッコイイのに地味だね…」

と、侮蔑の笑いを浮かべる。

「…ゆーちゃん!行こっ。」

「え?なっ、なに?」

優羽の手を引っ張って店を出る。ついでにビルも出て混雑する街に出た。

「ねえ。ねぇ。君?どこか事務所入ってるの?」

不意に目の前に名刺が出て来る。

「わっ、こっちのおねぇさんは君のおねぇさん?」

スーツの男が馴れ馴れしく話しかけてきた。

「僕のお兄さんっ!」

命が怒鳴って、また、優羽を引っ張ってその場を離れた。

「…命……目立つんだね。」

「そりゃ目立つよ。金髪だもん。」

「ごめん。知らなかった。」

「…いいよ。さっさと買い物して帰ろ。」

命に引っ張られて、1番オーソドックスなU❌❌QLOに入った。


2人とも両手に袋がいっぱいだ。

「こんなに、ほんとにありがと。」

「車で来たら良かったね。命、カッコよくて着たら全部買いたくなるよ。」

昨夜、買い物に行くと行ったら遠矢が

…物で心が埋まるわけじゃないけど、欲しい物あったら買ってやればいい。少しでも気が晴れるといいな。

と優羽に預けているカードで払えばいいと言ってくれた。命もちょっと楽しそうに見えたせいでちょっと買い過ぎたと優羽も思った。

「お腹減っちゃったね。」

「うん。」

「なんか食べて帰ろう。」

「そこは僕が奢るよ。」

「えっ。ほんと?」

「うん。先生(遠矢)と行くような場所のはちょっとダメだけど…。」

「(*´ー`*)ふふ。そんなの僕だって無理だよ。じゃ、うどん!うどん食べて帰ろう。」

二人で地下にあるうどん屋に入ろうと混雑した道を離れる。駅に向かう雑居ビルの地下にあるうどん屋に命が先に地下へ降りる幅の狭い階段を降りる。

優羽も続いた。

「わっ!」

「えっ?」

優羽の悲鳴に命が振り返る。優羽が持っていた荷物が先に下へ落ちた。

「あぶなっ!」

命も荷物を放してバランスの崩れた優羽の体を支えた。

「大丈夫?」

優羽が素早く荷物を放して手すりに掴まったために大事にはならなかった。

「…滑ったの?」

命に掴まった方の優羽の手が震えている。

「ゆーちゃん?」

命が優羽の顔を覗き込むと

「…両手で押された。」

と言った優羽の声が震えている。

「え?押された?」

命の薄茶色の瞳が揺れる。荷物の落ちる音を聞いてうどん屋の店員が出てきた。

「お客さん?大丈夫ですか?」