紙袋を抱えて待ち合わせ場所に着いた。

客らしき男が向こうから寄ってきた。低い声で

「…津田だ。」

と佐々木から言われていた名前を告げて来た。

「先に下さい。」

と、手を出すと向こうが金が入っていると思われる袋を幹斗に押し付けてきた。

その中身を確認する。

…11万。

「はい。」

今度は幹斗が袋を渡す。それをひったくるように受け取ると足早に立ち去った。

これで仕事は終わりだ。

佐々木が「飯でも…」と誘ってくれた。幹斗はさっさとその場所をあとに…

「?」

と、思った途端に「津田」と名乗った男に誰かが襲いかかった。

警官じゃない!

「え?」

見慣れたカラフルな頭が「津田」と名乗った男を引き摺るように連れていく。一瞬目が合って驚いた。

…小針…さん?

金髪がニヤッと笑ったように見える。

…やばいっ!

一瞬で判断した。

走り出す。

とにかくここはマズいと体が動いた。


来た時と反対の電車に飛び乗った。

…あいつら…

…「津田」ってやつ、あいつらの仲間かな?

…袋の中身…狙ってんのか?

…僕がいなくなって万引きして稼がないから、あれ?狙ってんのかな?

「あれ」とは幹斗の運ぶ物の中身だ。

…よかった。渡してからだから僕のせいじゃないよな?金は一応貰ったし…。

…とにかく…帰ろう。金は佐々木さんに渡さなきゃ。

ポケットに入った封筒を確認してほっとした。


朝、教室の席に着くと真っ赤な頭のやつが利空の前に立つ。

「小針さんが呼んでる。」

「…。」

利空は返事をしない。

「おいっ。小針さんが用事があるっているってるんだ。」

「それならそいつがここへ来い。」

「てめぇ。」

真っ赤な頭が殺気を帯びる。

利空がチラッと真っ赤な頭を見た。その目に殺気がスっと引ける。

「俺は行かない。」

利空の一言に狼狽えるのが分かる。

「ちっ!」

利空は何事もなかったかのように参考書を広げ、視線を戻す。

赤い頭の気配が消えた。

日に何度かこんなやり取りが続く。あの男が何を企んでコンタクトをしてくるのか?利空には分からないが面倒な事に捕まりたくない。

…利空ちゃん、お勉強、頑張ってて偉いね。

昨日の夜のテレビ電話でおでこに冷えピタを貼って、熱が高いのか?白い肌が少し赤くなっているのに、笑ってくれた兄の顔が思い出された。