白いバラの乙女
江平洋巳
百合度★★★★☆

「月刊Flowers」で連載されていた少女漫画作品です。萌え系に比べればさすがに女性同士で簡単にくっついたりはしませんが、少女漫画の中ではかなり百合度が高いほう。今年これまでに紹介した少女漫画(「コミックハイ」や「百合姫」は除外するとして)の単行本の中では一番の百合度ではなかろうか。

ミッション系のお嬢様学校の、噂話やつまらない仲間意識に退屈を感じ、5年前に起きた13歳の女生徒同士の心中事件に憧れていた主人公の美子が、学園の女王的存在の月子さんに「あなたとおしゃべりできたらいいなって思ってたんだ」と声をかけられ、一緒の送迎車に乗せてもらい、以後旧校舎で密会をするようになります。視線が合ったところで恥ずかしくて目を逸らしてしまったり、旧校舎で手を繋いで寄り添いながら昔心中した少女たちの話をする2人が良い雰囲気ですね。

しかし月子さんに優しくしてもらったのもつかの間、実は悪魔のように冷たくて退屈しのぎに主人公をからかっていただけだということが判明しますが、それでも月子さんの残酷な美しさに惹かれてしまい、彼女の後を追うことにします。

その後も特定の女生徒から嫌がらせを受けたと言って「お願い……そばにいて。私を守って」と寄りかかる月子さんを、嘘をついているのではないかと疑念を持ちながらも(ホントに嘘なんですが)、結局「大丈夫だよ。私が守るから」と抱きしめてあげ、鼓動、体温、かすかな香水の香りに頭の中がくらくらしてしまう主人公が良いですね。

月子様の誕生日パーティに呼ばれた主人公が、酔って美しい月子さまに見惚れ、部屋の灯りを消してそのまま雰囲気に流されてキスしてしまいそうになりますが、憧れの存在が急に近づいて怖気づいたのか、その場を笑ってごまかしてしまう主人公が痛い。

その後月子さんに恨みを持つ少女から月子さんを守ったり、月子さんが過去に園田という少女の事を大切に想っていたという話を知ってその少女と仲直りさせたり、園田さんを失った月子さんを慰めて肩を抱いたりして憧れの月子さんに近づいた……と一瞬思ったものの、これからも学園で恐怖政治を続けていこうとしている月子さんにはやっぱり置き去りにされてる事を感じ、音楽雑誌に自分の書いた記事が載ったことをきっかけに一念発起して主人公が東京に出て行くところで物語は終っています。

月子さんとはキスできなかったくせに月子さんのお付きの男とはキスしたり寝たりしてますが、男の方は月子さん以外に気はなく、主人公の美子のほうも単に自分を変えるきっかけにするため、あるいは月子さんに置き去りにされた寂しさを慰めてもらうために流されてしてしまった節もあります。

「憧れ」の要素のほうが強すぎて逆に恋愛要素が薄くなってしまっているのは百合的にネックですが、言いたいことをズバズバ言う悪魔のような月子さんと、そんな月子さんにぞくぞくしてしまったりドキドキしてしまう主人公の美子の様子は面白いですよね。

憧れの粋を出ないので結局月子さんとのことも若気の至りみたいな感じで締められてしまっているのはやはり惜しいですが、平凡で退屈な自分から抜け出したいと願う思春期の少女の揺れ動く様子はうまく描けているんじゃないかと思います。


天の鳥花の夢
江平 洋巳

同じ作者さんの作品ですがこちらには女性同士のキスシーンが確かちゃんとあったと思います。逆に百合度はほとんどないですが……。