乙女ケーキ
(タカハシマコ)
百合度★★★★★

百合姉妹創刊時から参加されていたタカハシマコ先生の作品集です。一年ほど前に出た「女の子は特別教」新装版に百合姫の作品が収録されてないと分かった時には、ページ数の少ないタカハシマコ先生の百合作品が単行本化されるにはかなり先の話になりそうだと思ったものですが、ページ数少ないながらも毎回コンスタントに作品を発表されてるおかげでなんとか今回単行本が発売される運びとなりました。
どの作品も味わいがあって読み返してみると改めて良さが分かる作品が多いですね。癖がある独特な作風なので雑誌で他の作品と一緒に読もうとすると読みづらいこともありますが、単行本でまとめてじっくり読むと良さが分かりやすいんじゃないでしょうか。
多分推薦文書いた桜庭一樹氏の「ビター&スゥィート、苦いコーヒーに浮かんだ甘くつめたい生クリーム」というイメージを元にしてるんじゃないかと思いますが、装丁もセンスがあって良いですよね。

・「乙女ケーキ」(描き下ろし)
屋上でウェディングケーキを食べつつ、「2人で初めての一緒」として映画に行ったりブラを買いに行ったりした事を思い出しつつ、初めて一緒にキスをする2人の女子高生の甘い話。ずっと2人で初めての一緒を続けようとする2人が良いですね。

・あとがき
作風を見ると榎本ナリコみたく偉そうな話し方をするようなイメージがあるんですが、実際にあとがきを読んでみるととても腰が低いんで意外な感じがします(笑)。
まとめて読み返してみると百合姉妹創刊号の作品だけエロが入ってるんでちょっと不思議だったんですが、成人向け雑誌だと思い込んで原稿を書いていたということで納得。
ネームに時間をかけてるのはやっぱりという感じ。練られてますもんね。

・「夏の繭」(百合姉妹1収録)
小6で生理があったり、キレイな少女の髪の毛の匂いをこっそり嗅いだりして自分が汚いと感じて悩む少女と、生理は来ていないけど相手の少女に触れられると感じてアソコが濡れてしまう自分が汚いと感じている少女の対比が面白い作品。

・「サンダル」(百合姉妹4収録)
好きな相手に気に入られるようにあれこれ容姿を気をつけている少女と、その少女に好意を寄せる一見身だしなみに無頓着な少女の話。「小枝ちゃんみたいに気軽になれたらいいのにな」と言う少女のブラのホックを外して、身軽にしてあげた少女も実は気軽という名の武装をしていました。

・「あかいかさ、しろいかさ」(百合姉妹5収録)
自分の事を「女の子らしい女の子」と言って抱きついたりして可愛がってくれた相手の少女が実は、本人も女の子として可愛くなりたい願望を持っていたことに気づき、改めて相手の少女も可愛いと感じる話。

・「ショートカット」(百合姫1収録)
自分のことが嫌いだった主人公の少女が、自分の真似をしてくる相手の少女を疎ましく思って髪形を変えてみたりするものの、やっぱり相手の少女は主人公のことが好きで、主人公もまたそんな相手のことが好きだったという話。

・「タイガーリリー」(百合姫2収録)
学生時代、演劇で共演した後にキスを交わした仲のトラさんとゆりさん。「トラさんのことをずっと見てました。これからも永遠に――」と誓った約束どおり、おばあちゃんになってお互い死んだ夫のことすら忘れてしまっても、トラさん家にいつも寄って行き、好きなものもなんでも覚えていたゆり。
しかしゆりさんが結婚した相手が、自分の好きな人だったから奪ったのではないかと疑って「永遠に顔を見たくないわっ」と思わず言ってしまって以来ゆりさんはしばらくトラさんの前に姿を出さなくなってしまい、電話をかけて呼び出そうとしたものの老いたゆりさんはトラさんのことをついに忘れてしまっていた。間もなくゆりさんも亡くなってしまい、その後昔の夢ばかり見るようになったトラさんも自分がゆりさんのことをいつかわすれてしまうであろうことを予感しつつも、触れ合った事実だけは永遠に残ることを考え、トラさんが幸せを感じる話です。
話の流れや老人が幼い姿で象徴的に描かれている技法自体は他にも同じ手法を使った作品はいくつかありますが、この細かい演出と構成はやはり素晴らしいと思いますよね。何度読んでも良い作品です。

・「みちくさ」(百合姫4収録)
いつもいちゃついていてラブラブに見える2人。「世の中が変わったら結婚しようね」「いいよ」などと誓い合うものの実は片方の少女は「楽だから」という理由で女の子を好きなフリをしていて、もう片方の少女はそんな相手の内面が大嫌いだった……が、しかしそれぞれやっぱりそれだけでは割り切る事の出来ない複雑な相手への想いを抱えていた、という二段オチ。

・「氷砂糖の欠片」(百合姫6収録)
冷たく見える自分と自分の母親が、温かい光を持っていることが、分かる相手には分かるという話。

・「ぬいぐるみのはらわた」(百合姫7収録)
ぬいぐるみの声を借りて「イズミチャンハ、リサチャンガスキダッタヨ」と告白する泉が切ない。あたってしまい破けたぬいぐるみが最後パッチワークで繕われているところは、理佐への恋心を再び隠して友達として仲良く付き合っていこうとする泉を象徴しているのかもしれません。

・「彼女の隣り」(百合姫8収録)
ひと目見た時の印象と、その後その彼女の彼氏だった男と付き合うようになったことから自分の中でイメージが膨らんでしまい、話をしたこともない相手の少女の隣にいつも座っていたような錯覚を覚える主人公の少女。実像は自分の中のイメージにはなかった部分もあったものの、やはり魅かれ続けることには変わりはなかった、という話。


この人の作品は一度読んだだけでは分かりづらい話が多いんでちょっと自分なりの解釈を書いてみましたが、書いてて自分でもちょっとおせっかいすぎるような気がしました(笑)。
もちろんこれが完全に正しい読み方というわけではなく解釈のひとつなだけなんで、皆さんも自分で話を読んだらあれこれ読み方を考えてみてください。パッと一度読んだだけでは分かりづらいですが、読み返すといろいろな見方が出来て面白い話が多くて、じっくり読むのに適している作品だと思います。