ガールズBox
早川 倉理 (公式
百合度★★★★★

玉葛さんの情報より。帯の文句とか、amazonの中見!検索で立ち読みした感じでもかなり良さそうだったんで取り寄せてみた本です。
やはり百合度高いですね。全4編中3編がガチ百合作品です。1編は友情モノですが、全部の作品に百合要素があります。
しかも該当作品は女子同士好意を持ち合うことが当然のように描かれており、最後の1編は性愛描写も含まれています。

・「あめチャンの奇蹟」
百合度★★★★★
授業中飴をもらったことから仲良くなった女子2人の話。おしゃべりをした後「かわいい娘と知り合えたな」とほくそえむ主人公が良いですね。京都の物産展にデートに行く事になり、好感度アップのために散々迷って服を選んだのに、相手の子のほうが素晴らしく可愛くて「いやいやからほのほうが」「いやいやいや、のぃちゃんの方が」とお互いに褒めあうシーンが微笑ましい。
その後手を繋いでぐるんぐるん回しながら歩いたり、後日出会った時肩と肩をどーんとぶつけて体当たりしたり、楽しそうなのが良いですね。
実は入学直後からからほのことをずっと見ていたのに、思い入れが強すぎて声をかけるのをためらっていたというのぃちゃん。飽きっぽい性格だった主人公ものぃちゃんのことは宇治茶の飴のように、いつまでも飽きずに一緒にいられる関係でいられそうです。

・「君のおうち」
百合度★★★★★
相手の少女ひぃちゃんが両親をなくして自分の部屋をなくして以来、一緒にいる時間が少なくて不満を感じた主人公の少女が15歳でひぃちゃんの家の近くで1人暮らしを始め、バイトにも精を出しているのは、将来ひぃちゃんと一緒に住める部屋を自分の力で借りたいから、というお話でした。
自分のために頑張っている主人公の涙を指で拭い、「その気持ちがもう、私の居場所だよ」と笑顔で鼻の頭にキスをしてあげるシーンが良いですね。

・「指とマシュマロ」
百合度★★★★★
高校卒業と同時に姿を消した恋人香流かおるが5年ぶりに帰ってきて、昼も夜も働いて2人で過ごせるマンションを買ったからと「さあ、ここが二人の秘密のお城よ」とその部屋に招待され、「こんな清潔でくつろげる空間に、好きな人と二人きり……」と感激するのもつかの間、背後でコートを脱ぐ香流にドキッとしてしまう主人公の加奈が良いですね。
その後やはり2人で一緒に裸になってお風呂に入ることになるのですが、突然「今、付き合ってる男がいるの」と言い出す加奈。しかしこれは最初からよく読んでいれば分かるとおり当然嘘なのでした。5年も連絡がなかった事に怒っていた加奈のちょっとしたお返しですね。怒って秘所に指を入れたところで痛がる加奈をみて香流もすぐに察します。痛がる主人公をみて心配しながらも内心嬉しがっているようで唇の端が少しあがっている香流。指を入れられただけでショックで泣き出してしまった加奈の涙をキスですすりとっていくシーンも良いですね。その後まだ男と付き合うことを考えていると嘘を続ける加奈に対し「加奈には私がいるでしょ、男なんかスッパリ振ってよ!加奈の一番はいつも私。男に先越されるなんて、冗談じゃないわ」と獲物を狙うような顔つきで近づいてくる香流に貞操の危機を感じる加奈ですが、実はそうなる夜をずっと夢見ていたのでした。

あたしは貞操の危機を感じた。でもそうなったらそうなったで、いいと思った。誰にも、香流にも言ったことはないけれど、香流とそうなる夜を、あたしずっと夢見てた。キス止まりの清らかな関係もいいけれど、冒険もしてみたいなって思っていた。今日だって、部屋に入って二人きりになった時から、期待していたのだ。

抵抗しなくていいの?さっきより、もっと、ずっと、ひどいことするつもりよとディープキスをされ、舌裏を舐められてビクっとする加奈。
「今ここで、私が全部教えてあげるわ。他の誰も、それ以上犯しようがないくらいね。あらがっても無駄よ。加奈の本音はとっくに読めてるんだから」

覚悟を決める加奈ですが、ふいに「女同士ってどうやるのだろう」という疑問が浮かびます。

「どうやって、あたしを香流のものにするの?」

と聞く加奈にリップスティックのお化けみたいな物を取り出す香流はスリリングですが、ここまでは面白い。しかしこの後の展開が少々意外。
加奈が突然「香流の男のナニなら香流の分身も同然。あたし香流の分身に犯られたい」と言い出し、男を呼んで香流が男と絡む展開になってしまいます。これはフェイントだと思うんですが、百合的にも作品的にもちょっと惜しいですね。フェイントなんかいれずにそのまま一気に絡みのクライマックスに持っていったほうが良かった気もしますが。あるいは分身云々も嘘で、本当は男と普通にしている香流に嫉妬していた加奈が、まず香流が男とやっている現場を実際に自分の目で確かめ、その後香流自らに男を殴らせる展開に持ち込みたかったという企みだったんじゃないか……と私は勝手に推測してしまいましたがどうでしょう?
ともあれ結局「やっぱり、あの人のは使いたくない」と加奈の一言により計画は変更。2人の手により酔いつぶれたところをワインボトルで後頭部を一撃され男は撃退。

その後は2人きりでバスルームに入り、じゃれあいながらお互いの体を優しく拭いてあげ、ベッドの上で舌を絡めあった後恥骨をまさぐったり乳首を噛んだり性器を指でなぞられたりして最後は加奈の脚を左右に大きく押し広げ、顔を近づけられて鑑賞されいじりまわされながら、ラブラブに秋の夜長を満喫するエンドとなります。

・「しらべはコスモス」
百合度★★☆☆☆
仕事にやりがいを感じないOLが女友達のすすめでコスモスを育てる事になる話。この話だけ主人公が彼氏持ちですが、これは話全体が短い上、出てくるのが女友達に洗脳されて頭が一杯で彼氏がふてくされたという一行だけにしか登場せず、物語の中では蚊帳の外。最後咲いたコスモスを女友達にまっさきに見せて招待し、お茶とお菓子でどんなおしゃべりをしようかわくわくする主人公が良いですね。


■「指とマシュマロ」が一番ページ数も多くて途中までの展開もすごく良いんですが、一箇所思わぬ落とし穴があり、「ええ!?」と展開に戸惑ってしまうところがあってそれだけ百合好きには気になるところだと思うので一応最初に断わっておきましたが、これはフェイントだと思えば良いでしょう。最後はラブラブエンドです。

■女の子が好きな女の子が、相手を射止めるために押したり引いたり、様々な駆け引きをする様子がうまく描写されていますね。この辺は実生活の経験も生かしながら描いているんでしょう。ファンタジー要素はなく、現実で起こりうる展開を描いた作品ばかりですが、同性愛者の生活につきものの社会的苦痛云々はあえて描写を抑えて描かれており(深読みすれば見える部分もありますが)、いろいろあっても最後は甘い結末が用意されていて、百合好きにも楽しめる内容になっていると思います。もちろん現実のビアンの人も読めるでしょう。登場人物のやりとりは軽妙で、特に若い人は共感しやすい作品なんじゃないですかね。

■無名の新人作家さんなので高尚で崇高な内容を期待するのは無理がありますが、こういう等身大の女子同士のやりとりを自然に描いた作品は私の好みですね。単純さの中にいろいろな面白さを感じ取ることが出来ると思います。
機会があったら同じ作者さんの「シークレット・シーズン―あの娘のこと憶えてる?」(こちらも玉葛さんの紹介によって知ったんですよね) も読んでみたいです。

■本のサイズは百合姫コミックスよりは小さく「GIRL FRIENDS」のような単行本よりは縦がやや大きい……漫画ではあまり見かけないサイズですね。本屋で探す人のために一応参考に書いておきましたが超マイナーな出版社故、実際に本屋で見つけるのはかなり難しいと思います。通販で注文すると良いでしょう。

■情報をくれた玉葛さんのサイト情報も参考にしてくださいね。玉葛さん情報ありがとうございました〜。



私が本を買うきっかけにもなったんですが、この帯の文句は素敵ですね☆