からだのきもち
(ナヲコ)
百合度★★★☆☆

「voiceful」という百合姫コミックスを出したこともある作者さんのHありの単行本です。雑誌チェックした限りでは最近百合モノは特に描いてない……と思ったので発売されるまでノーチェックだったんですが買ってびっくり。昔成年向け雑誌で掲載されていたらしい百合漫画が3本も入っていました。
Hありと言っても元々そんなハードなエロモノを描く人ではなかったし今回は徳間書店のリュウコミックスから出るということで成年マークもついてないし、それほどグログロというわけではありません。
リュウコミックスというと紙質の悪さが気になる人もいるかと思いますが(苦笑)、今回は普通に綺麗な紙質です。加えて百合作品はうち2本は短いですがオールカラーで収録されており、女性同士のシーンも綺麗に仕上がっていて良い感じです。

・「マイガール」百合度★★★★★
巻頭オールカラーの百合ショートです。一緒にお泊りしてセックスもするほどの仲で「体を繋げたら心も繋げるような気がした」という主人公の真紀だったけど、どこまでいっても綺麗な綾乃ちゃんと完全に繋がった気がしなくて不安を覚え、「綾乃ちゃんと私の間に、どうして私の体があるのだろう」と思ってしまうお話。
ピアノが上手く弾けるよう気遣って、手の甲にキスをして励ましてあげて綾乃ちゃんは真紀のことを充分に好きな様子なのに、それでも不安を拭いされない不安定な少女の姿が短い中でうまく描かれていますね。

・「ひとつだけ」百合度★★★★★
こちらもオールカラーの百合ショート。一緒にお風呂に入ったりしてる(おそらくは)双子の姉妹の片方が、裸の自分の体を見て太ったことを気にして「もう食べない!」と言い出すのですが、相方は全然気にせず「ちょっとくらい太っても、好きよ。誘惑されちゃいなよ」と美味しいお菓子をあーんと食べさせてあげる甘いお話でした。
「100kgになってもいっしょにいてあげるから」と軽く言いながらも、密かに「世界中の美味しいもの。百億の宝石よりも笑顔をみていたい」と思っている双子が良いですね。

・「デュオメイト」百合度★★★★★
演奏会で見かけて以来気になってしまい、演奏会が終わってから速攻で「いっ一緒にピアノ弾……きたい……」と相手の少女かすみちゃんの手を取り申し出て密かな想いを抱きながら一緒にピアノの練習をすることに喜びを感じていた主人公の少女でしたが、相手が突然来なくなって心配し家に行ってみた所、ピアノを弾いてるかすみちゃんを発見します。うっとりした表情で「かすみちゃん……」と言いながらピアノに突っ伏してしまうかすみちゃんはいつもと様子が違うのですが、実はバイブを入れて感じながらみさきちゃんのことを想っていたのでした。
「『かすみがイイ』って言ってくれて嬉しいって思ったら、かすみもっと欲張りになっちゃったの。みさきちゃんともっと繋がりたくなって……」と気持ちを打ち明けるかすみちゃん。両想いだということが晴れて分かり、「かすみちゃん、コレどうやって使うの?」と、みさきちゃんもかすみちゃんの使っていた双頭バイブを手に取り「あたしも、かすみちゃんのこと大好きだよ。みせてよ。ホントのかすみちゃん。そしたら……もっと一緒にいてくれるよね……?」と身体も繋がって、以前は暗い表情が多くて「かわいそう」な音をしていたかすみちゃんも、その後は幸せそうな表情が多くなり、心配していたみさきちゃんも安心して一緒にいることが出来るようになるお話でした。


初出は「コアマガジン」からのものらしく、「マイガール」と「ひとつだけ」は「ホットミルク」(と言っても最近新創刊されたやつではなくてみるく先生の「31度」とかが載っていた時のほうですね)、「デュオメイト」は「コミックアリス倶楽部」という雑誌に載っていたらしいです。ナヲコ先生のHあり作品としては「ディファレント・ビュウ」という単行本もありますが、あれはさすがにこれよりもっと古いんでだいぶ作風が違ってますね(正直「ディファレント・ビュウ」の時は別人かと思ったくらいですし)。もっと「voiceful」寄りの絵柄です(ただし「デュオメイト」のほうは「コミックアリス倶楽部」に載っていたということでロリ絵ですが)。「voiceful」が完成度高いんでそこまでとはいきませんが、この作品もかなり良い感じです。

H描写があるのは好みが分かれると思いますが、身体を重ねることで得られる安心感、あるいは身体を重ねても埋められない不安感など繊細な感情を描いていて良い作品集です。おすすめ。