オクターヴ
秋山はる
百合度★★★★★

一般誌の「アフタヌーン」で連載されている切ない百合恋愛ストーリーです。8月の……というか今年の超目玉百合作品。


評判の良さからか、品切れになったり復活したりを繰り返してますが今はあるかな……?

主人公の宮下雪乃は中学時代、アイドルグループとしてデビューしたもののその後泣かず飛ばずで挫折。地元へ帰り高校に戻るものの落ち目のアイドルとして見られることに耐えられず退学、その後はアイドルのマネージャーとして仕事をしていたのですが、元ミュージシャンの女性岩井節子と出会い、「よろしく」と差し出された手のやわらかくてあったかい感触が心に残ります。
その後麻婆豆腐を食べよう誘われ部屋に行ったところ、銭湯で後ろ姿に見惚れて見つめていたと節子に言われ、見られていたことを意識していたことを指摘され、さらにそのまま肉体関係まで持ってしまいます。キスの味が麻婆豆腐味だったというのはロマンティックではないんですが、生々しい話ですね。

後日「あれはセックスだったんだよね」と戸惑いつつも昨夜の行為を反芻し、節子の身体の感触がどこも柔かかかったことや、「根元まで入っちゃった」と指が自分の中に入ってきた時のお腹の肉にめり込んできたみたいな感触にある種の安堵感を感じ、節子を街で見かけ挨拶はしてくれるもののそっけなくされ、また昔同じアイドルグループをやっていた女の子がその後メジャーになって輝いているのを目の当たりにし、「あの日……あの人すごく優しかった」とますます落ち込んでしまいます。

しかし再び再会した時、会社をやめることを引き止められ、「あの日――なんであんなことしたんですか?」と聞いたところ「宮下さん、カワイイんだもん。銭湯で、宮下さんの裸に欲情したの。触りたくてしょうがなかった――私は宮下さんが好きだよ」とついに笑顔で言ってもらい「好きっ!私も岩井さんが好きっ!」としっかり抱きしめ、再び身体を重ねることになります。

その後節子のために新しくキレイな下着を新調して「あー。いつ穿こうかなぁ」とその日を楽しみにしたりする雪乃がかわいいですね。
「私――今どうにかしちゃってるのかなぁ……」と自分の感情に戸惑いつつも「とにかく、あの人に触りたい。触られたい」と思いひとりHをしてしまったりして思いを募らせます。元同じアイドルグループだった友達に付き合っている人はいるのかと聞かれても、「最近知り合った4つ上の人……すごいんだ。すごいじらされて……たまんないの。気がつけば私――何回も何回もイかされちゃって……」と答え節子の事しか頭になく友達との会話も上の空になり「岩井さんに会いたいです」とメールを送ったところ節子からも「抜け出してきなよ。私も宮下さんに会いたい」と言われ、その後再会した節子に「こっちおいで!!」と言われ汗をかいているのも構わず抱き合って激しくキスをし再びHをしてもらいます。「女が『女のタレントが好き』だとかヌカしてるのって、ブスの自己防衛の一種でしょ?」と言ってAVに出る友達のことも「奈緒ちゃんかわいそう。心がカッサカサ」と思い、キレイでいいニオイがしてすてきな女の人、節子と肌を重ねられる距離にいる自分に充実感を持ちます。

しかし「男なんて―」と思ったところでふと気になり「男としたことあるんですか?」と節子に聞く雪乃。それに対して節子は「あるよ」と答え、「やっぱなんかすごくイヤです!それにずるいです!」と泣き出しながらも「ごめんなさい……節子さん」と謝る雪乃。節子はそれを責めることもなく、「ね、出かけようか」とバイクで夜の海岸へ誘い出してくれます。
その後アイドル時代の話などをして「ブリッブリのアイドルのカッコした雪乃を、ムリヤリ犯したいなぁ。シチュエーション的に」などと冗談を言って雪乃も赤くなって再びリラックスした気分を感じ始めたところで、「初めて女の人と裸で抱き合った時――全身ゾクゾクきて、あんまり気持ち良すぎてビックリした」と、以後女性ともするようになった体験談などを語ってくれて「お願いだから悪くとらないで。私は雪乃を縛りたくないの。雪乃も男としていいよ」と言われますが、雪乃はそれを聞いてやはり寂しくなってしまい、「私――あの人が好き」と雪乃がようやく正直に自分の感情に気づいたところで1巻は終わっていました。
続きも楽しみですね。

なおこの作品は最初にDTさん紹介してもらったのが作品を知るきっかけでした(それまで「アフタヌーン」はチェックしてませんでしたので……)。雑誌では2話から読んだので全体がつかめなかった部分もあったんですが、こうして第1話から通して読んでみても素晴らしい作品ですね。DTさんどうもありがとう!

こちらで第1話をちょっとだけ立ち読み出来るようです。もちろんこの作品が百合展開になるのは2話以降なので百合シーンはまだまだですが。

都会の大勢の人ごみの中で自分の存在意義を見失いそうになりながらも、節子という女性に出会って関係を持つ事から自分の居場所を見つけ自信を取り戻したり、節子の柔らかくてキレイな身体に身を任せることで安堵感を得たり、節子の言動ひとつによってまた気持ちが不安になったりする少女の揺れ動く気持ちがよく描かれていますね。

タイトルの「オクターヴ」というのは、1オクターブ分の距離があって遠いようでもあり、1順してしまえば同じ音階なので近いとも言える、雪乃と節子の間の近いような遠いような微妙な距離を表しているのかもしれませんね。表紙には物憂げな顔で机か何かに寄りかかっている雪乃の姿ひとりがぽつんと描かれていますが、裏表紙を見ると節子もまた同じような姿でたたずんでいる絵が描かれていて、重なっているような重なっていないような、2人の今の関係をうまく表しています。

2人の関係がじれったいので今後の展開も非常に気になります。
雪乃が依存から抜け出して節子から自立してしまうエンドもあると思いますが、雪乃が節子の作った歌を歌うという形で再デビューして2人でコンビを組んでやっていくエンドもあると思うし、今後の展開から目が離せません。
ともあれ1巻分だけで評価しても充分素晴らしい展開の作品ですね。