青い花 第1巻
公式
百合度★★★★★
作画度★★★★★

過去最高だったと言っても過言ではないほど豊作だった前期百合アニメの中でも、最高に百合度、クオリティの高かった作品がいよいよDVDで登場です。
地方の人は待ち遠しかったのでないでしょうか……というか狭い地域でしか放送してなかったようですし、知らなかったという人もひょっとしたら多いかもしれませんね。しかしこのDVDは断然おすすめです!是非自分の目で確かめて、それで気に入ったら、他にも好きそうな友達におすすめしてみるのも良いかもしれません。この作品は、出来るだけたくさんの人に見てもらいたいですね。


初回特典は特製封筒&ポストカード。ポストカードは封筒の中に入っているのですが、志村貴子先生の描き下ろしイラスト、高部あいさんの鎌倉でのスナップショット、アニメ絵のふみちゃん、あーちゃん、井汲さん、杉本先輩が映った美しいイラスト、さらに志村貴子先生描き下ろしのやっさん、ポンちゃん、もぎーの番外編漫画も入っています。
中のケースにはこれも志村貴子先生描き下ろしですが、幼い頃のふみちゃんとあーちゃんが、仲良くラブラブマフラーをつけて手を繋いでいる可愛い絵が映っています。
パッケージは、全体的に古い本をイメージしたような落ち着いた趣がありますね。

メニュー画面ではおそらく登校時のワンシーンでしょうか。あーちゃんが緑あふれる小道を走っていく姿が映っています。ここはアニメーションのキャラクターと実写の背景が合成されているのでしょうか。美しい風景です。

本編は、せっかくですからネットは切って、部屋を暗くしたりして雰囲気を出して落ち着いて視聴すると良いかもしれませんね。こういうアニメは他の情報がごちゃごちゃ入ってくるネット環境で視聴するのは向いていない気がします。
背景も、DVDでじっくり見ると、単に美しいだけでなく、なんと志村貴子テイストの背景になっているんですね〜。まるで志村貴子先生が水彩画で描いたような美しい、繊細さを持った背景です。背景を見ただけで志村貴子作品らしいと分かるのってすごいですよ!キャラクターだけでなく、手を抜きがちな背景にまでここまで気を配れるのはすさまじいクオリティの高さです!DVDで観ると新しい発見が多いですね。
ストリーミング放送でも結構高画質で流していましたが、少なくとも私の視聴環境ではDVDの方が画質も高いです。

第1話「花物語」百合度★★★★★作画度★★★★★


冒頭、原作ではあきらが起きるシーンから始まるんですが、ふみが目覚めるシーンから始まるアニメ版は対照的です。
アニメのふみはなんど見ても可愛いですね〜。冒頭、あーちゃんとの思い出を夢に見た後、目が覚めて1人で学校にいかなければいけないと寂しさを感じるシーンから、OPにつながるシーン……ここでもうノックアウトですよ!
OPアニメは幾原邦彦監督が手がけているということで各所で評判になっているので私がいまさら説明するまでもないかもしれませんが、私もこのOPアニメはめっちゃ好きです。登場キャラクターを紹介するようにごちゃごちゃ出して無理に盛り上げようとするのではなく、花など本当〜に最小限の演出とそして登場するのはあーちゃんとふみちゃんの2人だけ。そして最後は服までなくなって裸で2人で寄り添うシーンに。サービスシーンというよりは、無駄なものを一切省いた結果こうなった、というようにも見える演出ですね。
もちろん単純なサービスと考える人もいるかもしれませんが、原作4巻あたりからの展開ではふみがあーちゃんの事を好きだという気持ちが、単なる友情止まりでなく「セックスをしたい」という気持ちも含めての「好き」だということを切々と訴えるシーンもあって、志村貴子先生のインタビューなんかを拝見してもこのテーマは意外に重要な役割を持っていると思いますし、そういう含みをOPでもちらつかせておくことは、意味のあることだったんじゃないかと思います。
DVDでは、このOPアニメは特典映像でノンテロップバージョンも収録されているので、ますますじっくり観れますね。
このOP曲は最初、OPということで元気良く頭からドラムが入っているアレンジだったのですが、カサヰケンイチ監督の提案で、デモテープの時の雰囲気に近い、静かな感じでいこうということになって、最終的に今の形に落ち着いたようですね。この辺でもカサヰケンイチ監督の采配が光っています。
ストリーミング放送で見てた時は、良いクオリティだなぁとは思ったものの感情に直接訴えてくるようなものは感じなかったんですが、迫力が違うせいかDVDで観てたらなんだか泣けてきました。志村貴子先生も最初見た時泣いてしまったということを仰られていて、実はストリーミング放送はそんなに泣けるかなぁと思っていたんですが、確かにこれは泣けるわ。DVDを観て改めて再認識しました。

Aパート、「千津ちゃんと、離れたくなかった」と帰るのを寂しがるふみちゃんがいじらしいですね。このシーンもアニメのオリジナルです。後に、向こうから告白してくれた格好よい杉本先輩に、自分の本当の感情に気付く前に了承して付き合うようになってキスまでしてしまうふみの心の弱さ、不安定さをよく表していますね。


そしてあーちゃんがふみと、再会するシーンに。原作では落とした定期をふみが拾って顔を会わせる場面が途中に挿入されているんですが、アニメでは憧れの女子高行きになってる定期にあーちゃんが見惚れているところ、ふみにぶつかってしまって再会する演出になっていました。どちらもあーちゃんのはやる気持ちがよく現れていますね。ふみは原作ではやや淡々としていた雰囲気もあったのですが、アニメでは弱気で受身な子であることが気持ち強調されています。原作3巻までを描くんだったらあーちゃんよりふみに寄った物語にしたほうが良いだろうということで、ふみが嫌われないように細心の注意を払ったカサヰケンイチ監督の意図が伝わってきますね。

卑劣な痴漢を撃退してあげるあーちゃん、この時は2人はまだお互いが幼馴染みだということに気付いてないんですが、2人の関係は昔も今も変わっていないことを表していますね。

「奥平あきらさん、素敵な名前ね」と話しかける井汲京子さんは、堀江由衣さんが演じているんですが、単なる美少女役でも変態役でもない、こういうまだ報われていない百合少女の役も良いですね。
このシーン、何気ないですが外部からやってきたあーちゃんはこの時初めてこの高校で友達が出来たんですね。アニメでは京子が声をかける前、ちょっとした間を作ることで、あーちゃんが入学初日に少しだけ1人ぼっちでいた様子が分かります。

改めて会って、10年ぶりに幼馴染みに再会できたことに気付くあーちゃんとふみ。あーちゃんはふみがおもらしをしてしまった時、自分が助けてあげていたことを思い出してしまいます。
百合作品というと、どこか遠い存在だった憧れのお姉さまと平凡だけど可愛いヒロインが……という構図が浮かぶんですが、この作品の場合は幼馴染みという設定で、しかもおもらしの世話までしてあげていた描写も入れていて、幼馴染みの関係が生々しく描かれていますね。憧れの遠い存在、というよりごく身近な存在であることをしっかり描いています。背丈が逆転してしまうところも、一方的にどちらかが憧れの象徴である典型的なパターンから逆らっています。
さすがにあーちゃんにとってのふみは、告白されるまで性的な関係は想像することもなかった存在でそれも視聴者が理解できるように描いているんですが、それでも一方ふみがあーちゃんに惹かれていく様子も共感出来るように物語が進行していく様子はさすがだと思いましたね。

肉体関係も持っていたという従姉妹の千津ちゃんと一日でも別れたくなさそうで健気ですが、あーちゃんにおっぱいがちっちゃいと言われ、「ふみちゃんはちっちゃいけど形がいいのよねー」と甘いやりとりをして手を握ってあげたすぐ後に、自分が結婚をすることを知らせてしまうという千津ちゃんはとても残酷です。千津ちゃんにとっては、おそらく女の子同士でそういう行為をすることは一過性で終わるものとくらいしか考えていなかったのかもしれません。
しかし女子同士の関係で辛い目にあってしまったふみが、ここから立ち直っていく過程が見所になっていくんですよね。

高部あいさんの声優初挑戦の演技は評判が良いですが、改めて見ると第1話で幼い時のふみも違和感なく演じている点など、やはりすごいな、と思いました。
「おっぱいないって言われちゃった」の台詞も、まさに純真な子が言っているように聞こえて、なんでもない台詞なのに妙にドキッとしてしまいます。
千津ちゃんが結婚すると聞いてショックを受けるシーン、泣いているシーンを痛々しく感じてしまうのも、共感して観てしまうからこそでしょう。
泣いているふみを見て、理由も聞かず「ふみちゃんはすぐ泣くんだから……」とハンカチを差し出すあーちゃんに「その一言は、10年の月日をかるくとびこえた」と思うふみ。幼馴染み故のその一言に、ふみはあーちゃんが昔も今も自分にとってかけがえのない特別な存在であることに気付きます。

第2話「春の嵐」百合度★★★★★作画度★★★★★
帰りにも出会った(偶然のように見えて実はふみはあーちゃんのことを待っていたんです。原作を読むと分かりますが…笑)2人は喫茶店へ。漫画だと白と黒しかないですが、アニメだと茶色がかって落ち着いた鎌倉の喫茶店の店内の雰囲気の良さがよく現れていますね。そしてふみはあーちゃんから「明日も一緒に行こっか」と言い出され、以後2人で登下校することに。

一方ふみは文芸部に入ろうとしていたところ、杉本先輩という格好良い女子に声をかけられて……。

婚約者を連れてきたという千津ちゃんがやってきて「千津ちゃんは、ひどい……」と、また泣き出してしまうふみ。ここでもあーちゃんが慰めてあげます。その晩は夜も一緒に泊まってくれるあーちゃんに「あーちゃんもこっちで寝よ」と誘い「あまえんぼさんだこと」と言いつつもあーちゃんは一緒の布団で寝ることに。ますます甘えてしまうふみですが、女性同士で同衾することで、千津ちゃんと初めてセックスをした時のことを思い出してしまいます。「ふみちゃん、私じゃいや?こわい?」と言われ、分かんなくはなかったものの、やっぱり少し怖かったのですが「ふみちゃんかわいい」と言われ結局ふみは千津ちゃんに身体を許すことになってしまったようです。
このシーンはエロティックでもあり、ちょっと怖いようにも描かれていますね。そして女性同士の関係の深みにハマったところで突然千津ちゃんに捨てられたことを思い出し、また涙が出てきてしまうふみですが、手を握ってくれるあーちゃんの優しさは心に染みたことでしょう。

一方あーちゃんは、結婚すると聞いて泣き出してしまうふみが、そんなにお姉さんのことが好きだったのかと思ってしまいます。

千津ちゃんの結婚式は仮病を使ってでも行きませんが、あーちゃんからのデートのお誘いにはすっかり乗り気で、喜んで出かけていくことになり、千津ちゃんのいなくなった心の隙間を埋めてくれるのは、やっぱりあーちゃんなんですね。
楽しいデートを終えて、家で一息入れていたところ、帰ってきた家族に出かけていたことを悟られないよういそいそと着替えるふみが可愛いですね。ここもオリジナルシーンです。

中等部の女の子からラブレターをもらう京子ですが、もう好きな人がいると聞き、あーちゃんはなぜかその相手が女の子なのではないかと思ってしまいますが、それはもちろん当たりです。藤ヶ谷女学園に来た杉本先輩に熱い視線を送っていることでそれは分かりますね。
そんな中、ふみは京子が涙を流して部屋を出てくるのを目撃してしまい……。

第2話は以上のところまで収録していました。
とにかく絵が綺麗!(ちなみに作画度は最終話までこのまま維持されます)雰囲気もめちゃくちゃ出てます。原作からの変更は最小限なのに効果は大きく、話も分かりやすくて文句のつけどころがないですね。

すっかり忘れていたんでが、そういえば私元々あーちゃん派だったんですね。ふみの方が好きになったのは、アニメ版を見てからですね。どちらを主役に置くかで、同じストーリーでもキャラクターが違って見えてきます。

監督はカサヰケンイチさんですが、この人は少女漫画アニメを数多く手がけていて私の好きなアニメーターさんです。あまり自分の作家性を前面に出すタイプではないので名前が注目されることは少ないんですが(インタビューの受け答えが半端なく下手なのも拍車をかけています…笑)、私はこの人結構注目しているんですよね。余計なものをつけたさず必要最小限のもので原作の良さを最大限に引き出すことが出来る人です。作中の音にも特に拘って演出をして、主に少女漫画作品のアニメで力を発揮する。私が最も敬愛するアニメーター、佐藤順一監督と似たところもあると思います。佐藤順一監督も自分の作家性を前面に出して作品を塗り固めず、他のスタッフも信頼して任せることも多いタイプなんで、出来上がった作品は関わったスタッフによって作風が違っていたりして、多大な功績にも関わらずアニメーターとしての評価があまり固まっていない人のひとりですが、カサヰケンイチ監督もそういうタイプのアニメーターですね。過小評価されていますが功績は大きいと思います。

やっぱりDVDで観るのは良いですね。ストリーミングで観た時は単にチェックしているだけという感じでしたが、DVDで見るとようやくちゃんと作品を観れたなぁという実感が沸きます。DVDが自分の手元にあると、ようやく作品が自分の物になったような実感も沸きますね。



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