マリア様がみてる 私の巣
(今野緒雪)
百合度★★★★★(4.5)

「マリア様がみてる」、最新刊です。今回は1話目にコバルトに掲載された環と百のお話「私の巣」が収録され、さらにその後の5話では描き下ろしでは百と環のその後の様子を描かれています。
瞳子や乃梨子などもちらっと登場していますがほとんど話のメインには関わってこないので、「マリア様がみてる」シリーズを全く読んでないという人も、単品で楽しめるような内容になっています。30冊以上出て長くなってしまった「マリア様がみてる」シリーズを追いかけるのに脱落してしまったという人も、久しぶりに「マリア様がみてる」の世界を楽しんでみるのにも良いのではないでしょうか。(……といいつつこのサイトに来るような方は「マリア様がみてる」シリーズくらい余裕で全巻読んでる人ばかりのような気もしますが…笑)

友達にお見合いのような形でお姉さまを紹介してもらうところだった百(もも)は、その日にいつもの貧血を起こして倒れてしまったところ、起きた時付き添っていた環(たまき)という少女に家まで送ってもらうことになります。うまく理由をつけて家の中まで入ってきて勝手にくつろいで、自分のことを「モモッチ」と呼ぶ環に少しずつ心が惹かれていく百。母親の再婚で心が揺れていることも自ら打ち明け、相談に乗ってくれた環に「『お母さん、大好き』『私、寂しい』『ずっと側にいて』ためこんだものは出しちゃいけないものばかりじゃないんだよ」と言ってもらって心の荷が降りた百は涙がぽろぽろこぼれ、環はそっと肩を抱いてあげます。
今まで1人で賄っていた家事をやらなくても良くなって何をすれば良いのか分からないという百に、自分のためにおにぎりを作ってくれと言い出す環は、まるでプロポーズしているようですね(笑)。
その環の正体が実は……というところまでコバルトには収録されていました。この後は文庫書下ろし。その後の環と百が、まるで夫婦のような関係になっていく過程がたまりません。

晴れて家族になった2人は引越しの際も気兼ねなくTシャツに短パン姿で一緒にいて、ご近所の挨拶まわりの際には環が自分の服を貸してくれることになります。後ろを向いたりするわけでもない環の前でも短パンを脱いで着替えてしまう百はすっかり気を許せる仲になったんですね。
朝も毎朝起こしに行くことになり、他の人の洗濯物は洗えなくても、環のだけは抵抗もなく洗うことが出来、一緒にお互いの下着を洗ったり干したりする百。環が修学旅行にちょっと出かけただけでも、百は他に7人もいる家をガランと感じて、環の服を洗濯できないことにすら寂しさを感じてしまいます。
母の結婚パーティーに行くのも1人では気が乗らない百ですが、帰ってきた環は休みもせず「モモッチのおにぎりが恋しかったよ」とおにぎりを所望した後、パーティにも誘って、百も楽しく過ごせて良かったですね。

最後2人で生まれてくる子供に一緒に名前をつけようと環が言い出すシーン、もちろんこれは環と百の子供というわけではないんですが、環が考えた名前は「百」の名前の系譜を継ぐ「千」を入れた名前。これはもちろん新たに生まれてくる子供が血の繋がりがあるということで、2人の絆を繋ぐ子供ということが暗示されているのが良いですよね。

2000年に入って最初の10年は、「マリア様がみてる」が百合ジャンルの牽引役だったと言っても過言ではないでしょう。私がインターネットを始めた最初の頃も、巡回するサイトはほとんどが「マリア様がみてる」をメインに扱っているサイトでしたし、百合ジャンルが受けた恩恵は計り知れないと思います。そんな「マリア様がみてる」の新刊を2010年に入る前の最後に読むことが出来て、個人的にも感慨が深いですね。祥子×祐巳編の「マリア様がみてる」は終了しましたが、これからの10年でどんな展開がされるのか、今後も楽しみですね。