セックスなんか興味ない 1
きづき あきら
百合度★★★☆☆(3.5)

「つぼみ」で連載しているエビマヨでもお馴染みの作者さんの、セックスを題材にした短編集です。
全9編中、2編が前後編で女性同士愛し合っているカップルを描いた作品になっていて、前編が志乃視点、後編はアサコ視点になって物語が進行していきます。該当作品以外は全部1話完結形式で、該当作品だけが2話構成になっていることからも、この作品がこの単行本の中で特に重要なことがわかりますね。表紙の女性も該当作のヒロイン、志乃ですし。

・「志乃ちゃんの、決心 前編」百合度★★★★★(5.0)
アサコと志乃は女性同士付き合っていてセックスもいつもしている仲。男から告白されてもその気は全くなく、カミングアウトして断ってしまいます。
しかし女性しか愛せない志乃と違って、アサコが両性愛で子供のいる生活にも憧れがあることをほのめかしているため、志乃の不安は日々増大していきます。

私達のセックスは、生殖を目的としない。
男の人みたいにたまったものを出す欲求でもない。
純粋に、愛情の交歓、だと思う。
私達にはなんの制約もない。
法律も、政治も、宗教も私達を受け入れないルールだから、私達は純粋で自立的な、自由意志で関係を作りあげる。
そして、自由とはつまり、本人の心以外、なにも約束してくれず、保護するものもないという事だ。


2人がセックスをしている間に入るこのモノローグが切ないですね。
そして不安に駆られた志乃はついにある日アサコに男と赤ちゃんを作るよう提案してしまいます。

・「志乃ちゃんの、決心 後編」百合度★★★★★(4.5)
そして男に会わせられたこと自体でも嫉妬し「彼女のためならなんだってする」という男に対抗心を感じ「負けるもんか。志乃は私の女だ。誰にも渡さない。志乃とずっといるためなら、どんな屈辱も耐えてみせる」と思い、志乃の愛情を勝ち取ろうと必死になっているアサコもそれを了承してしまいます。
アサコは自分が志乃の依頼で好きでもない男の赤ちゃんを作ることで、志乃に負い目を感じさせずっと自分のものにしたいという思惑もあったのでした。

赤ちゃんを作ろうが結婚しようが2人とも男に気はなく、最後「なにも変わらない」「2人はずっと一緒」と言っている通り一応百合エンドではあるんですが、男とは法律的なつながりが出来てしまうということで、「愛を、愛以外のもので繋ぎ止めようとした報いだ」とやはりアサコは後悔の念が拭い去れないのでした。

全編セックスシーンを挟みつつ物語が進行するので該当作品も女性同士のセックスシーンが前編に2回ほど出てきてこれは切ない感じですが良い感じ。後編は子供を作るために男も後ろから参加していてこれは切ないを通り越して痛い。

他の男女の作品も、セックスシーンを挟みつつ痛い展開になるお話が多いです。

宗教が同性愛を受け入れないという話は、もう過去の話で今は……と思われる方もいるかもしれませんが、先日のみるく先生のキ○ィイラストの件の話なんかを聞くと、未だに根強く残ってるんだなあということを身近に実感してしまいます。

エビマヨはそうでもないんですが、この人の描く百合は痛いのが多いですね。単なる甘いだけの萌え百合ではないし、もちろんそれが良さになってはいるんですが、いつか救われる日が来ないものかなぁとも思ってしまいます。


以下同じ作者さんの百合要素を含む作品。
「バーバ・ヤガー」
「メイド諸君」「針とオレンジ」「たのしいなつやすみ」