百合姫Selection(2)

百合度★★★★★(5.5)

「コミック百合姫」「コミック百合姫S」作品から、人気の読切作品をピックアップして収録した作品集です。
表紙はタアモ先生。
個人的には単行本に収録されなかった四ツ原フリコ先生の「インプリンティングのコーヒー」が収録されたのが嬉しかったですね。あれは単行本に収録されなかったのが惜しいなぁと思っていたところなんですよ。未読の人は是非この機会に。

以下各話感想。
・「ナイフエッジガール」(古街キッカ)(百合姫VOL.19収録)
一足早く社会人になった幼馴染みと、まだ学生をやっている同級生のヒロインエミリのお話。同い年なのにしっかりしていて、ちゃんとキスもしてあげる亜衣ちゃんが可愛い♪
亜衣を信じているからちょっとの約束をして安心したいというエミリや、エミリが信じてくれているからこそそれを裏切りたくないと簡単な約束をせず、決意を促す亜衣のやりとりが面白くて印象的ですね。

・「フォーチュン・リング」(柏原麻実)(百合姫S VOL.1収録)
ミサンガつけてる水泳部の先輩に恋心を抱く後輩の少女の話。この作品は出るはずだった百合天国3巻のために用意したネタらしいです。

・「Maple Love」(乙ひより)(百合姫VOL.8、かわいいあなた収録)
キャンパスで男女の告白の場に居合わせてしまった主人公のかえ。携帯の音で邪魔をしてしまったのに男が去った後告白されていた少女宮路に「助かった」とお礼を言われ、「私は女の子が好きだから。気持ちわるい?」と聞かれ「気持ちわるくはない」と即答したところ「試してみる?」といきなりキスをされてしまいます。からかわれたと思ってその場は宮路の頬を叩くかえですが、その後も「私かえちゃんが好きになっちゃったみたい。付き合ってください」と言われ、以降くっついてこられるようになります。
ごはん目当てに合コンに行くというかえに、指名のあった宮路も嫌がらずに付いてくるのは男嫌いな宮路にしては珍しいと思ったら、実は合コンでかえが男にとられてしまうのが心配で、風邪にも拘らず無理矢理ついてきたのでした。
意外に一途な宮路になんでもしてあげたい気分になったかえは「かえちゃんが欲しい」と言われ、今度は自分の方から宮路の唇にキスをしてあげます。
自分の気持に整理がついて晴れて宮路と付き合うことにしたかえですが、恋愛経験がないせいか匙加減が分からずいきなりキャンパスの中で恋人繋ぎで手を繋いだり、宮路の顔をじっくり見つめて「かわいいなあと思って……」と宮路を赤くさせたり、さらには「女同士のSEXってどうやってすんの?」とストレートな質問をキャンパスでぶつけて大暴走してしまいます。

・「サンダル」(タカハシマコ)(百合姉妹VOL.4、乙女ケーキ収録)
好きな相手に気に入られるようにあれこれ容姿を気をつけている少女と、その少女に好意を寄せる一見身だしなみに無頓着な少女の話。「小枝ちゃんみたいに気軽になれたらいいのにな」と言う少女のブラのホックを外して、身軽にしてあげた少女も実は気軽という名の武装をしていました。

・「Delicious Time」(竹宮ジン)(百合姫VOL.18収録)
扉絵でサンドイッチを両端から食べあってる絵がなんともエロティック。恥かしがり屋の女子高生とパン屋に勤める女の子が、どんどん惹かれていき、自分の前で赤くなってしまう相手の子もやっぱり最後、自分のことが好きだと告白して両思いになる展開がたまりませんね。読者がヒロインに感情移入してしまう話の持っていきかたが上手い!

・「コスモスの咲く庭」(日輪早夜)(百合姫VOL.17収録)
髪に挿してあげようとしたコスモスが幽霊少女には挿さらずポトリと落ちてしまうシーンが少し悲しいですが、相手が無事だったことも分かり、ラストシーンは、再びやってきた少女が手にコスモスを持っていて、今度こそ挿そうと思っているんでしょうね。

・「ゆりゆり あゆみと美咲の場合」(なもり)(百合姫VOL.18収録)
可愛くて初めて見たときからドキドキして、美咲を目で追うようになったあゆみですが、可愛い外見とは裏腹に小悪魔のような性格だった美咲には「どうしていつもこっち見てるんですかー?キモいんですけど」ときっつい言葉をかけられ、一時はショックを受けて落ち込むものの、しかしいじわるな言葉をかけながらもいつも目が合うという美咲も実は……というお話。
お互いに目が離せない2人が微笑ましいですね。
ギャグ100%の「ゆるゆり」と違ってこちらはわりとシリアスなんですが、これはこれで非常に面白いです。

・「インプリンティングのコーヒー」(四ツ原フリコ)(百合姫 VOL.16収録)
これは「スリーピングビューティーの見た夢」で女子同士のキスシーンを写メで撮ろうとしていた女の子の話ですね。
小学生時代に女の人の家庭教師をつけてもらっていたヒロイン隼人は、彼女が女の人とキスをしているのを目撃してしまい、その光景がきっかけとなりヒロインもまた女の人である先生を好きになってしまい……というお話。
大人のキスは良いですね!(笑)
苦手な人が飲むコーヒーのように後味は悪いけど、入れていた時の香りは好きだった、という気持ちを自分の元を去ってしまった憧れの先生への気持ちと重ねあわせる心情が良いですね。後味だけがすべてではなく、途中良かった時の思い出も忘れちゃいけないことなんですね。

・「チチンプイプイ」(田仲みのる) (百合姫VOL.18収録)
田仲みのる先生のデビュー作です。途中まで読んでいて、話がどう転がるか全然分からなかったんですが、最後の最後で、それこそ手品か魔法のようにまとめてしまう構成は感服してしまいました。

・「鎖はもういらない」(倉田嘘)(百合姫S VOL.6、リンケージ収録)
会社の上司と部下の女性2人、お互い好きあっていてオフィスでも人目を盗んでキスを交わすような間柄だったんですが、無理な仕事を押し付けないようにと全部仕事を引き受けてしまっていた結果部下の葵が左遷されそうになっていることを知り、心配しながらも仕事を増やしていく上司の芳野。しかし実は葵は仕事の才能があり社内でも評価が高まり、他の女性社員と一緒にいるようになり自分と離れていってしまうことに寂しさを感じます。自分が彼女の才能を閉じ込めていた事に気づいた芳野は別れ話を切り出しますが、それを聞いて泣き出してしまう葵に考えを直し、葵のほうから仲直りのキスをしてもらった自分が、葵に甘えたい側面を持っていたことに気づき、相手も自分も今後は自由にしてあげようと誓いつつ、また改めて付き合いを続けることになるお話でした。

・「秘密のせせらぎ」(吉富昭仁)(百合姫S VOL.4、熱帯少女収録)
秘密の場所があるからと川辺に誘われた理沙、「ここなら汚れた心も洗い流してくれる」と言われ、以前にキスをされた夢を見て以来自分が智子に対して抱いていた恋心のことを言われているのかと思いきや、汚れた恋心を抱いていたと思っていたのは智子も同じで、キスをされた夢も智子が理沙に本当にキスをしてしまったために見てしまったという話。
最初の方で「女の子が女の子を好きになるなんておかしいよね」と言う理沙の台詞を互いに違う解釈をしていたという伏線や、その後余計な誤解を川が流してくれたという展開など、相変わらず構成&演出が秀逸ですね。

・「初恋構造式」(天野しゅにんた)(百合姫VOL.16収録)
しっかりものの小学生に求愛される、涙もろい大人の女性のカップル。「生まれる前から知ってるよーなのとはそんな気にならん!」と言うのはちょっとリアルかも。確かに近すぎると恋愛感情から遠のいてしまうことはありますね。しかしそうは言いつつも大きくなるまで待ってあげたり、小さい子のほうもしばらく離れることで恋愛感情を湧かせようとしたり努力して、微笑ましい話でしたね。

・「瑠璃色の夢」(森島明子)(百合姫VOL.13、瑠璃色の夢収録)
同僚のOLに飲みに誘われ、へべれけになった後「美人なのに彼氏いないの?じゃあ私どう?」「女同士?いいねぇ〜」などと盛り上がった翌朝、目覚めて気づけば2人裸でベッドで寝ており、夕べセックスをしたことを思い出して恥ずかしくなってしまうOLのお話です。自分は酔った勢いだったものの、相手は前から主人公のことを好きだったようで「私ね……六条さんがずっと好きだったの」と告白されます。そして主人公自身もあの夜三国さんに抱かれている間体温が自分の体ぜんぶに広がっていく気持ち良さを自然に感じ「もう少し……あともう少し……」と三国さんとの関係を真剣に考えはじめるものの、元から持っていた結婚して子供を作る夢をうっかり三国さんの前でしゃべってしまって三国さんも結局主人公が普通のOLであることに失望して「私とは無理だもの」と考えてしまいますが。「フツーの女だけど、私は三国さんが好きです!」と正面から告白し、三国さんも安心して主人公を受け入れ、再びセックスを今度は朝までしてしまい、少しずつお互いの距離が縮まっていく様子が描かれていました。
自分の子供に「自分の名前(ルリ=瑠璃=ラピスラズリ)と同じ宝石の名前をつけたい」というのは昔からのルリの夢だったのですが、女である三国さんとではその夢を叶えることが出来ないことに気付き、すれ違いもあるものの、積み重ねた気持ちが2人の未来の形になっていくと気付く過程が良かったです。

・「親友LOVESICK」(かずまこを)(百合姫VOL.11、純水アドレッセンス収録)
仲が良くて嫉妬していた男を「やっぱり友だちのことそんな風に思えないから」と振ってきたと答えるあびに聞いてほっとすると共に、自分もいつかそう言われるのではと不安になるキーコですが、キスを返し涙をぺロリと舐めて「世界で一番キーコが好き」と応えてあげるあびが良いですね。


巻末の情報によると、これからの(モバイル兼用の)百合姫コミックスの発売予定としては再田ニカ先生の「Raubritter* 」とロクロイチ先生の「携帯コミック(仮)」、田中琳先生の「フィダンツァートのためいき」が6月18日、天野しゅにんた先生の「sweet guilty love bites」が7月18日と出ています。
ただ田中琳先生の場合は発売日云々より、体調の方が気になってしまいます。無事手術が終わったことは本当に良かったんですが、体調というのは一旦崩すとその後落ちた体力を回復させるのも大変ですし、無理せずやってほしいですね。
田中琳先生の単行本は忘れずにいつまででも待っておりますので!


セレクションと謳うだけあって、どれもクオリティ的には何の問題もない、素晴らしい作品ばかりが収録されていました。
ただ見ての通り、今回収録されたのは、表紙を除いてすべて再録ですね。良い作品ばかりをチョイスしていますので、「百合姫」「S」を毎回全部買っていないという人や、最近百合にハマるようになって百合作品を集めだしている、という人には超おすすめ……なんですが、うちのサイトに来るような人でそんな人がどれくらいいるのかは怪しいですね(笑)。皆本誌と「S」くらいは全部揃えてしまっているでしょうし。
しかし、紙質も良くて読みやすいんで、個人的には買って損したとかそういうことは思いませんでした。この本は雑誌よりサイズが小さいんで、元の雑誌掲載分を切り抜いて捨てれば、スペース的にはかなり助かりますしね。
縦にベコベコうねらなくて読みやすいのも良いことですね。
本誌もいよいよ隔月刊行になるそうですが、こういう紙にしたら良いんじゃないかと思うんですがどうでしょう。サイズが小さいのも、収納に困っている方にとっては良いことですし。
全部読んだ事がある人がほとんどだと思いますが、良かった作品ばかりをチョイスしてありますし、「百合姫」「S」の中で埋もれてしまっていた良い作品を改めて読むのには最適なのではないでしょうか。紙質も良いことですし(笑)。私もこの機会に、ちょっと今回収録された作品群をまた読み返してみたいと思います。



「百合姫Selection(1)」の紹介はこちら


百合姫Selectionは来月にも3巻が予定されているそうです。表紙は柏原麻実先生とのこと。柏原麻実先生が百合姫に参加されるのは久しぶりなので、どんな表紙になるのか楽しみですね。
メールフォーム情報によると、次号には第2回百合姫コミック大賞で紫水晶賞をとった結い子(=慎結)先生の「発熱」が掲載されるそうです。作者さんのサイトで告知されていますが、こちらも楽しみですね。