少女薄命〜猫目堂ココロ憚〜
(東雲水生)
百合度★★★★★(5.5)

東雲水生先生の百合姫コミックス。猫目堂ココロ憚シリーズの第2弾です。
東雲水生先生というとファンタジーなものや明るくて無邪気な女の子たちの作品やダークなもの、エロティックなものなど、幅広い作風を持った方ですが、この作品集はダークなものやセクシュアルなものも含んでいるシリーズですよね。ダークなものやセクシュアルなものも含めることで、その中から純粋な気持ちも浮かび上がってところがたまりません。個人的には東雲水生先生の作品の中では一番好きなシリーズですね。

巻末には今回収録されたエピソード全部の追加エピソードを描いた描き下ろしが収録されています。
お楽しみは取っておいたほうが良いだろうということで詳細は省きますが、女子同士いちゃいちゃしていますね〜。転校生少女は意外というかやはりと言うべきか、積極的でした(笑)。

今回のお話は「不倫」「人の死」「先生の生徒」というテーマが含まれています。これらのテーマは元々は抵抗があったけど「百合」というジャンルと猫目堂の力を借りられたから挑戦できた、と東雲先生も仰っていますが、そういえば私も決して、これらのテーマ自体が好きだったわけではないですね。しかしそれでも面白く読めてしまったのは、やはり「百合」というジャンルとこの作品での話の持っていきかたが良かったからでしょう。

以下各話感想。
描き下ろしの扉絵では、猫目堂の主人少女が女性(顔は見ませんが1巻の巻頭カラー同様着物姿で、髪は青く2つに結っているようです)の身体に顔を寄せているイラストが掲載されています。
単行本の最後もヒロインが大事な人に思いを馳せようとするものの、思い出せずもやもやしているシーンで終わっていて、今後彼女とのエピソードも語られていくことと思いますが、気になりますね。

・「縛る赤」
優しいお姉ちゃんに甘えることがたまらなく好きな理々は、お姉ちゃんの他の人に繋がっている運命の赤い糸を全部切ってしまいたい黒い感情も芽生えてしまうのですが、お姉ちゃんのほうも理々のことが好きだったのでした。親の決めたことに従って男と結婚しても、理々と一緒にいて、身体を重ねることも出来ると知ったお姉ちゃんは前よりも生き生きとしていて、逆にたくましくなりましたね。
雑誌掲載時は「縛る糸」というタイトルだったんですがあとがきによると「縛る赤」が正しいタイトルだったようですね。

・「ステラ・マリス」
皆の憧れの生徒会長が、やきそばパンを1人で齧ってる弱みを見つけてから、ごく普通の後輩詠美にキスさせられたり、セックスも激しくされたり、思いのままにされてしまうもののラブラブな2人が幸せそうだったものの交通事故で状況は一変。
悲しみに暮れつつも、先輩に見つけてもらえるように輝き続けようと頑張る詠美が健気です。

・「砂糖菓子は夢を見る」(東雲水生)
教え子のキラキラした若さに気後れしてしまう先生の気持ちが伝わってきますね。

・「甘い盲目」(東雲水生)
親友の唯のことを特別に想っていて、相手も自分だけを見ていて欲しいと願っている祥子。しかし唯が他の子とも仲良くし、転校生のアサミにも親しく接してあげているのを見て嫉妬心が芽生えてしまいます。
嫉妬心から心が迷った人が来る猫目堂に辿りついてしまう祥子ですが、他の子とも仲良くしてみて唯も祥子に焼餅を焼く事を知り、お互い良い関係になれたようですね。
きっと2人は他の子とも仲良くしつつ、やはりお互いのことは特別に想う関係でいられそうです。
目が笑っていないように見えるというアサミですが、寂しさを隠しているのかもしれませんね。転校ばかりして、本当に心から打ち解けることが出来ない彼女も寂しさを抱えているように感じました。

あとがきでは2巻が無事出て東雲先生も大喜びされていますが、残念ながら1巻で打ち切りになってしまった「カルボナードクラウン」の例もありますし、これは大げさではなく本当に嬉しいことだったんでしょうね。

今回収録されるお話はどれも良いけど、「ステラ・マリス」という作品が特に好きですね。生徒会長、焼きそばパン、北極星、セックス、ナイフ、望遠鏡、死……いろいろ詰め込みすぎてる感もちょっとあるんで、客観的に考えるとプロットを分けて作品を2つにした方が良いのかもしれませんが、個人的にはこの作品は雑誌を買って以来かなり読み返していました。好みの問題でしょうか。ともあれ気に入っています。

今回の単行本のタイトルになっている「少女薄命」というタイトルの短編は収録されていないんですが、これはこの「ステラ・マリス」の内容から来ているんでしょうね。
ちなみに「少女薄命」というのはなんとなく聞き覚えのあるような言葉ですが、これは国語辞典などに載っているようなちゃんとした四文字熟語ではなく、造語なんですね。「佳人薄命」や「美人薄命」が元になっているんでしょう。

東雲水生先生はふわふわで幸せな話だけでなく、セクシュアルなお話やダークなお話、悲しいお話などいろいろ描ける人ですが、この作品には先生のいろいろな才能がぎゅっと詰まっている感じがしますね。個人的には一番好きなシリーズです。

「百合心中〜猫目堂ココロ譚〜」の紹介はこちら。