オレンジイエロー
(乙ひより)
百合度★★★★★(5.5)

乙ひより先生が描く、ほんのり切なくてほのぼの愛しい珠玉の百合物語集です。乙ひより先生の百合姫コミックスとしては「水色シネマ」も2冊同時発売!

「オレンジイエロー」は幼馴染みでいつも普通に一緒にいた女子2人が、あることがきっかけで恋人として相手のことを意識するようになって……というドキドキなお話ですね。

収録されているページのうち、表題作は半分で、残りは描き下ろしや小百合姫、百合姫本誌、Sに掲載された読みきりになっています。
本編以外の作品が収録されることは予想していたんですが、単行本半分も占めてるとは思いませんでしたね。本誌やS、描き下ろし、さらには小百合姫に掲載されていた短編も収録されていました。おかげでページ数もしっかりあります。

収録作品中「恋の証明」は百合姫VOL.9に収録されていた作品。これめっちゃ好きな話だったんですよ。
他小百合姫VOL.2に収録されていた「マジカルチョコレート」、百合姫VOL.14に掲載されていた「ナミダグスリ」、百合姫S VOL.5に掲載されていた「カタコイヒメ」も収録されています。

以下各話紹介。
扉絵は「カタコイヒメ」の2人が雨の中向かい合っているカラーイラストが。多分描き下ろしだと思うんですが、久々に水野さんと大石さんの新しいイラストが見れて嬉しいですね。
傘を差してる大石さんと対照的に水野さんは傘もささずずぶ濡れですが、作品を読めばなぜこういう状況で水野さんが満足げな顔をしているのか分かるでしょう。

・「オレンジイエロー」
幼い頃からいつも「じゅんちゃんがせかいいちすき。だいすき」と言っていたみゆきですが、彼女が毎回違う男をつれてるという噂を聞き、淳は心が少し揺れます。しかしそれは2年前に男に告白されたみゆきに対し自分が何気なく言った「ためしに付き合って、ダメだったら別れれば……」という言葉を忠実に実行していたからだったのでした。15人もそのパターンで別れていたことを知った淳は「訂正します。好きな人が出来たら、その人と付き合いなさい」と言いつけたところ、「私ね、淳ちゃんが世界一好き。大好き。だから私と付き合って」とにっこりいわれ……。

「淳ちゃんは私のこと好きじゃないの?」と涙目で訴えるみゅーはかわいい(笑)。
付き合って欲しいと申し込まれたものの、幼馴染みなこともあって実感が沸かない淳。一旦離れてみれば分かるのでは?と先輩にアドバイスを受けて、みゅーに会わないと告げるのですが……。

最終回。自分がみゅーへの恋心があるかどうか確かめるため、一旦みゅーを突き放した淳ですが、ちゃんと寂しいという気持ちが芽生えて
「私もみゅーがいないと駄目みたい……付き合おうか……」
と自分からもプロポーズ。晴れて結ばれて家で
「ドキドキするね〜」
「うっうん」
などとやりとりをしながら本当にちゅーをする2人が初々しくて良いですね。
みゅーと一緒にいても最初はドキドキする感情はなかったという淳ですが、一旦離れてすっかり変わりましたね。ちゅーをする前の淳の照れてる顔が最高です!みゅーはさらにその先もしたかったようですが(笑)。
それにしても2人を焚きつけた上、ちゃっかり自分の創作のネタにまでしてしまう流香先輩は良い仕事をしました(笑)。

・「描き下ろし」
「オレンジイエロー」の番外編ですね。後日談というよりは回想談です。こういうお話が出来るのも、幼馴染みという設定ならではでしょう。みゅーはもちろん、淳も昔から相手の事をアホな子になるほど(?)好きだったんですね。

・「マジカルチョコレート」(小百合姫VOL.2収録)
好きな女の子に惚れ薬ならぬ惚れチョコを食べさせようとするものの、その子はすでに自分のことが好きで……というお話です。
今読み返してみるとこの2人は淳とみゅーの関係に少し似ていますね。これはやはり折り返しコメントにもあるとおり、作者さんが幼馴染み設定がお好きという趣味が出ているんでしょう(笑)。
この2人は「かわいいあなた」収録の「ラブレター」に出てきてるとのことで今読み返して確認してみたら確かに出ていますね。今まで気がつかなかった。

・「恋の証明」(百合姫VOL.9収録)
女子校で、頼まれたからと言って好きでもない女の子にキスをしてあげる女生徒が、女教師に一途に恋をしていたことを証明する話。誰もいない教室で女子同士キスをするシチュエーションは良いですね。

・「ナミダグスリ」(百合姫VOL.14収録)
敵視されていた里美さんの失恋の涙をぺろっと舐める主人公の奏子は「ヤバイ……かわいい……たまらん」と思ってしまい、これからどうやって落とそうか考えるようになってしまいますが、里美さんも以後奏子を見て赤くなってしまうようになって、どちらも可愛いですね。涙はホレ薬と同時にホレられ薬でもあるのかもしれません。

・「カタコイヒメ」(百合姫S VOL.5収録)
雨に打たれるのが好きだという水野さんですが、これはきっと涙を隠していたんでしょうね。一度最後まで読んで読み返してみると切ないシーンです。失恋した水野さんにバケツの水をぶっかけてやる主人公は過激ですが、気持ちを洗い流せるようにしてあげるためで、これも優しさのひとつの形なんですよね。10年近く前のネームということで少女漫画雑誌用に考えたお話だったんでしょうか。こちらも相変わらず少女漫画的な作風が素晴らしいです。

タイトルの「オレンジイエロー」の意味は深読みすればいろいろ解釈できなくもないけどはっきりしたことは分からなかったんですが、あとがきによるとこれはみゅーの部誌作品として入れる予定だったモノローグから来ているそうです。
朝は黄色い光の中を、夕方はオレンジ色の夕焼けの中を、手を繋いで歩いて行きたい。
帯にこの文句が乗っているんですが、これは帯も捨てられないですね(笑)。

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