まんがの作り方 3
平尾 アウリ
百合度★★★★★

「新感覚<百合>漫画家物語(←帯より)」の第3巻です。帯にはさらに「先輩……わたしのこと、好きですよね?」「……別れよう……」と、意味深な台詞が見えて、まだ読んでない人は、内容が気になる文句ですね。

全く知らない人はamazonに第1話の立ち読みページがあるので参考にしてください。

私の好きな少女漫画全般に言えることなんですが、この作品もあまり考えて読み込むよりは、可愛い女子キャラクター同士が軽妙なやりとりをしている様子が理屈抜きに楽しい作風ですね。
女子同士の恋愛に絡んできそうでこない武田さん、原稿に追われ毎回青くなってる川口さん、誰にも全く気にされてない哀れな弟、川口さんラブな気持ちを常に優先している森下、なんのかんの言いながらも常に森下と一緒にいたがっている川口さん、それぞれの姿が楽しいです。
そして、女子同士付き合おうとは言ったものの、今までは女友達と変わらない様子で普通に接していた川口さんと、一緒に遊んだり仕事をしたりしながらも、女子同士ということでいつかこの関係は終わってしまうのでは……と不安もちらつかせていた森下ですが……この関係が3巻では変わってくるのです!
表紙でも、今回3巻は手を繋いでいるし、むしろ川口さんの方から森下の方に寄りかかっているように見えて、関係性が変わってきたことがうかがえますね。

今回は巻末に描き下ろし漫画が収録されています。1巻や2巻にはなかったので珍しいですね。「まんがの作り方ができるまで」という題のこの作品、女子同士で子供を作ってしまったり、呪われた血筋のために相手を殺す決意を密かにしてたりする、なにやら甘いようなハードなような百合漫画でした(笑)。
「こういう百合漫画を描くつもりがああなった」とのことで、ひょっとしたら森下と川口さんがこういう関係になっていたかもしれないと思うと……怖いですね(笑)。

以下各話感想。
編集部の指示でまたヘルプに来ていて、家の前で待っていた武田さん。せっかく駆けつけたのに当の川口さんは森下とポニョのリバイバル上映を見に行っていたということで、またデートをしていたのでした。仕事より恋愛を優先させるなんて……とお説教をする武田さんですが、恋愛と言われて自分がそういう風に見られていることに今更ながら気付く川口さんが面白い(笑)。
「大丈夫私は偏見ないから」と理解はあることを示す武田さんですが、2人が思いっきりそういう関係に見えてるのは事実なんですね。
仕事の邪魔と言われ部屋を追い出されてしまう森下は残念そう。弟はあんな面倒な仕事はもう二度とやりたくないと言ってますが、森下は大変な仕事も全然平気。「先輩と一緒にいるから幸せ!」と内心思っている……というかバレバレですね。

武田さんは頑張っていてもデビューも出来ない自分に比べて、デビューして連載も持っているのに仕事をほっぽって恋愛を楽しんでいる川口さんのことが気がかりで、ベタもはみ出してしまって動揺が表れていますね。

初コミックスが決まって、森下と抱き合って喜ぶ川口さん。しかしヘルプに来ていた武田さんには厳しい事を言われ、森下がいると作業が進まないと追い出されてしまうことに。

森下も高校を卒業なんですね。卒業祝いにと川口さんに旅行に誘ってもらって嬉しそうです♪
一方川口さんは表紙案に森下が選んだB案を使おうかと迷っていたのですが結局編集に逆らえずC案を使うことに。いくら森下が可愛くても編集には逆らえなかったようです(笑)。

唐突に森下をさちだと紹介する川口さんですが、武田さんはなるほどと……思うはずがやっぱり信じません(笑)。目の前の仕上げも下手な森下が自分の憧れていたさちだと認めたくないんですね(笑)。
デートをしたかったのに川口さんが仕事の締め切りに追われ、いけないどころか川口さんがアシスタントの武田さんと一緒に部屋に篭ることになって嫉妬する森下が可愛いですね。しかし仕事をするのは武田さんとでも、一緒に遊ぶのは森下とだけだと川口弟に言われ機嫌も取り戻し、原稿を届けるために一緒に出かけ、手を繋いでくれる川口さんに森下は嬉しそうです。

〆切が迫っているというのに、鹿を見に奈良まで行こうとする2人は相変わらずラブラブですね。誰かを好きになるという気持ちが分からない武田さんは、弟にどんな気持ちか聞くのですが、恋愛脳なところも好きな要素の一因だと言う弟は森下さんが姉に恋をしている姿自体に恋をしているようにも見えます(笑)。
そんな2人が2泊するということで、とりかえしのつかないことになるんじゃないかと弟をけしかける武田さんですが、とりかえしのつかないことってなんでしょうね(笑)。

旅行に来て、鹿を見ようと森下を起こす川口さんが良いですね。しかし送ったはずの原稿が一枚たりなかったためにその場で直帰する羽目に。怒らない森下になぜと聞く川口さんですが森下の返事は「私が先輩を好きだからです」とストレートなもの。「先輩は私のこと好きですか?」と聞かれ「好き」と答えるものの、川口さんは自分と森下が対等でないことに、違和感を感じ始めているようにも見えますね。

森下に「好きです」と言われ「うん」とは返した川口先輩。しかしそれだけではダメだと、自分の口からも「好き」と伝えようと決意するものの、思いっきり意識してしまいそれは出来ず、思わずツンデレになって森下を食事に誘ってしまいます。
なんとか伝えることが出来たガールズラブを描くという言葉ですが、これには前回とは違う意味が含まれているんですね。以前は気軽に出来たグラタンをアーンすることも、手を繋ぐことすらも出来ないほど森下を意識してしまう川口さんを嬉しく思う反面、もっとデレて欲しいとも思う森下ですが、川口さんの森下への感情は完全にただの友情を超えてきましたね。

川口さんが森下と出会って2周年なことを考えてばかりで原稿がちっとも進まないことに業を煮やした武田さんは、もう森下とは別れろ、そして原稿が終わったらまた付き合え、と忠告しますが、ちょうど2周年ということで何かイベントをやりたかった川口さんは、再び結ばれるドラマティックな展開を思いつき、本当に「わかれよう」と告げてしまいます。
しかし森下が泣いてすがってくるかと思いきや、諦めたような顔で「いいですよ」とあっさり受け止め、「武田さんと仲良くしててください」と言って家からも出て行っていってしまいます。
蝉のお話の時も、森下は川口さんがいつか自分から離れていってしまうのではと、勝手に悟って悲しんでいたところがありましたからね。
このシーン、呆然とした川口さんの表情がすごく印象的です(笑)。
その後どよ〜んとしている川口さん。一方森下もやっぱり同様にどんよりした表情をしてるのが面白いですね。

そんな森下に川口さんの方が我慢出来なくなり、バイト先に押しかけてきて3周年だと改めて言ってペンをプレゼント。そして「私と付き合ってください」とプロポーズもして……ともあれドラマティックな展開で結ばれそうで良かった良かった?(笑)
元々付き合ってはいたんですが、川口さんの今度のプロポーズは以前のものとは違って、真剣な意味のような気がしますね。いよいよ二人の関係も真剣なものに……?非常に気になる展開で終わっていました。

正直2巻までの関係が最後まで続く可能性もあるかなぁとも思っていたんですが、ちょっと予想外でした。そしてそれは決して悪い方へは行っていなく、川口先輩が森下のことをちゃんと意識するようになってきたということで、良い方向へ向かっているように感じました。

単行本にまとまったものを改めて読み返して思ったんですが、武田さんの存在はこの作品を面白くしていますねえ。百合的な絡みは全くないんですが(笑)。
この作品、川口さんと森下の軽妙なやりとりが大きな魅力なんですが、私なんかはそんな2人を見てると、生き方が羨ましくなってしまうこともあるんです。
「私は〆切こそないけど、その分ひたすら描き続けなきゃならないのに、ひたすら描いてもデビューできないんです」と真剣な顔で打ち明ける武田さんの心境は共感してしまいますね。私は武田さんタイプかもしれない。ツンツンしたりお説教したりはしないけど(笑)。

ちなみに百合度は1巻と2巻は百合度★★★★★(5.0)でしたが、3巻は(5.5)にしようか(5.0)にしようかちょっと迷ってます。★5つまでは決まってるんですが。
最後の告白で、恋愛的にも両想いになった……と見て良いですよね?雑誌掲載分の続きを読んでもそう読めますし。ただ3巻までだけを読んだ時に、解釈の違いによって違う人もいるかなぁと思ったので、そこまで細かく決める事は保留にしておきましょうか。今回は各自でつけてみてください(笑)。

1巻の紹介はこちら
2巻の紹介はこちら。