小煌女(1)
海野 つなみ
百合度★★★?☆

舞台は宇宙時代を迎えた未来のイギリス。気品のある上流社会の中の女学校に他の惑星からやってきた王女ジノンに、メイド勤めをしていたサリーは、出会った瞬間息をするのも忘れ、まるで恋に落ちたようだと感じてしまいます。


こちらは帯より。

最初に百合的なシーンだけざっと挙げておきますと……。
ジノンに「サリー」と呼ばれ、サリーはその声で呼ばれると体が震えるような嬉しさまで感じてしまいます。
お腹がすいていたところジノンに故郷のお菓子をもらい、ウフフと喜びを噛みしめながら、甘くて美味しいそのお菓子を食べ、その夜は自分が王女になり王子様の姿をしたジノンに見つめられ、顔に手をあてられドキドキする夢までみてしまって、サリーは可愛いですね。
サリーが疲労で倒れていた時は、自分の部屋で眠らせ、食べるものも用意してあげるジノンに、またサリーも感激して、そしてジノンが母国で王位についた時、自分のことを覚えていてくれるだろうかと、胸が苦しくなる程の想いを馳せるようになってしまいます。

亡命のようにやってきたとはいえ、他国からやってきた王女に、女学校の生徒も皆、憧れの王女と自分だけが親しい関係になろうとやっきになったりします。

マザーグースの歌を挿入しながら物語は幻想的に進んでいくのですが、1巻では最後、衝撃的な展開で終わっており、続きも気になりました。


タイトルを見て分かるとおり「小公女」がモチーフになっている作品ですね。サリーは「小公女」で言うとベッキーにあたるような存在でしょうか。

冒頭ジノンの婚約者(実の弟だったそうですが)が暗殺され、後はジノンもサリーも男性キャラとの絡みは全くなし。脇で義兄に片想いしている少女が1人いるくらい。舞台が女学校ですから、1巻では男性キャラは登場することもあまりありませんでした。

あとがきで「この『小煌女』はSFラブストーリーなのです」と作者さんが仰られているのが、果たしてジノンとサリーのことなのか、百合的には気になるところですが、「この1巻の段階では『どこが?』と言われそう」とも仰ってるのが逆に気になるところですよね。
なぜなら1巻はラブ展開があるとしたら、どう見てもジノンとサリーしか考えられないくらい、サリーのジノンに対する想いが熱いから(笑)。

百合度★3つ(憧れ+友情)に加えて?をひとつつけましたが、これはジノンとサリーが最終的に結ばれたら★4つということで。結ばれた最終巻は★5つになるでしょうが、どうでしょうね。ただ、最終的に恋愛百合エンドでなくてもこの作品は良い作品であることには変わりないと思います。

ヒロインのサリーは、昔はおばあちゃんと一緒に暮らしていたけど2年前にそのおばあちゃんも亡くなって……つまり天涯孤独で、裕福なお嬢様達に使用人として一日中働かされて、考えてみると……というか考えてみなくてもかなり辛い境遇なんですが、口うるさいおばあちゃんで生きていた間の方が苦労していたようにさらりと語って終わらせて、常に仕事にせっせと取り組んでいて、遠い星からやってきたお姫様に抱いている憧れを今は生きがいに前向きに生きていて、悲惨さを感じさせないところも上手いですね。
そんなサリーに好感と共感を抱いてしまいました。

1巻では家庭の事情によって、微妙な立場に置かれているそれぞれの女生徒たちの姿が描かれていて、こちらもとても面白かったです(心情があまりにリアルに描かれているため、ちょっと胃が痛くなってしまいましたが…笑)。

現代ではないということや、他の惑星との関係もあって、不思議で美しいSF世界に思わず惹き込まれてしまいますね。おそらくジノンは辛い立場に立たされることが予想されますが、それでもジノンはサリーにとって、まるで空に輝くtwinkle starのように、心の中で輝き続ける存在であり続けるんでしょうね。


これまた良作少女漫画、海野つなみ先生の「回転銀河」の紹介はこちら