百合姫Selection(3)

百合度★★★★★(5.5)

「コミック百合姫」&「コミック百合姫S」から人気を博した名作品を厳選した傑作選です。
前回2巻はすべて再録でしたが、今回はすこやか・慎結・天野しゅにんた・田仲みのる先生によるコミック大賞を受賞した未発表作も収録していて、これがまた百合姫に掲載されなかったのが不思議なくらい面白くて、買う価値ありありでした♪

作家陣は以下の通り。
吉富昭仁、あらきかなお、すこやか、さわななお、水野透子、MATSUDA98、速瀬羽柴、吉富昭仁、慎結、丸美甘、倉田嘘、天野しゅにんた、田仲みのる、直江まりも、玄鉄絢、谷村まりか

・「さんまんえんではかえません」(天野しゅにんた)
一迅社コミック大賞百合姫部門入選作の作品です。このブログでも何度か言ったと思いますが、これ読んでみたいと思っていたんですよね。
天野しゅにんた先生のサイトにヒロイン2人が紹介されていますが、彼女らは三河弁をしゃべってるんですね。いわゆる「じゃんだらりん」。私にとっては地元……というより地元の近くの地域でしたがやっぱりこういうしゃべり方をする子はいましたよ。しゃべり方もかなり私らと似てると思うんだけど、彼女らによるとちょっと違うことに拘りがあるらしい(笑)。まあでも可愛いですよね。
作品もめちゃくちゃ面白い!これは良かったです!
Hするシーンでも三河弁なので、私なんかは妙に生々しく感じてしまいましたが(笑)、晴れて気持ちも結ばれてドキドキしながらキスをして、初めてする好きな人とのHに、きもちよすぎ、しあわせすぎ、と感じぼろぼろ涙を流した後、3万円になるほどラブホの滞在時間も延長してしまくってしまう初々しいカップルぶりの2人が微笑ましいですね。
なんとなく面白そうな作品だと思っていたんですが、予想通り、というか予想以上に面白かったです!

受賞された時はこんな風に紹介されていました。
三万円もらえば、誰にでも身体を許す女子高生、紗瑛子。彼女はある日、同じ学校の女子生徒・みちかに「お金を払うからやらせてほしい」と頼まれるのだが…。
この時は「入選」ということで受賞作が掲載、デビューまでは至らなかったんですが、個人的にはこの作品も受賞してもおかしくないんじゃないかと思っていました。しかし第5回一迅社コミック大賞百合姫部門は部門賞&受賞作掲載&デビューに竹宮ジン先生、同じ入選にすこやか先生などもいて、後から考えたら随分レベルが高い選考レースだったんですね。

・「発熱」(慎結)
第2回百合姫コミック大賞で紫水晶賞を受賞した作品です。
くせ毛や大学受験で真剣に悩んだり、モデルの女の子に憧れていたり、一緒に仕事をしている女の子とデキてるのではないかと勝手に思い込んで嫉妬したり、ヒロインがとても等身大の女子高生らしいですね。
思っていることを自分が声に出しているのに気付かず思わず告白してしまったり、冒頭模試判定の結果の「D」が頭や顔に出ている効果が何気に面白いです(笑)。
最初読んだ時、話の要素や絵柄や結末がヒロインのくせ毛のようにあちこちに飛んでいる印象がありましたが、いやこれ良いですね。
水森さんの裸を見たのは自分だけじゃないかと思ったり雑誌のセクシーショットを見ながらヒロインが熱に浮かされて体が熱くなってしまったりして、理屈ではなく感覚的に相手を好きになってしまい、それから自分の恋心に気付いていく女子の心情が上手く描かれていると思います。
描き下ろし単行本が出る予定があるんですが、これも楽しみですね。

・「雪のなか君とふたり」(田仲みのる)
第4回一迅社コミック大賞入選のこの作品がやはり掲載されました。結果発表に載っているあらすじを紹介しておきます。
ゆかりが恋をしたのは、クラスメートの素朴な笑顔が素敵なミホ。友情を深めるうちに、胸に秘めた思いがどんどん膨らむゆかりだが、ある日、ミホがクラスメートの男子を好きだと知ってしまい――
雰囲気もテンポも絵柄も良いですね。一般の百合雑誌に載っていても全然見劣りしないクオリティです。
他人事として読んでると、ゆかりがもう一押しすればミホがなびいてくれるんじゃ……とも思ってしまうんですが、そう簡単にいかないのが恋というものかもしれません。実際にもう一押しして、ミホがゆかりのことを恋人として見てくれる可能性もないとは言い切れないんですが……やっぱりあの状態だとミホはあくまで友だちという枠の中でしか、ゆかりのことを大切に思うことは出来なかった可能性の方が高いように見えます。
強引に迫って壊さず、一歩引いて良い思い出を良い思い出のまま大切にとっておきたいというゆかりの気持ちも分かります。

選評に「このテーマでこのページ数は長すぎる」という指摘がありましたが、長いせいで新人賞として選ぶ際にはインパクトに欠ける印象を与えるという点においてネックになるものの、少女漫画百合としては普通に雑誌に掲載されていてもおかしくないレベルだと思いました。
しかし、こういう指摘があったから、デビュー作になった「ちちんぷいぷい」では短いページ数の中ですごいまとめ方をしてきたんですね(笑)。

・「Live With My Sister」(すこやか)
すこやか先生も第4回一迅社コミック大賞奨励賞のこの未発表作が掲載されていました。
血の繋がってない姉妹がラブラブなお話ですよ。この作者さんがこんなにまともなラブストーリーを描いていたとは……。これが結構良いんでまたびっくり(笑)。作風に合わせて描いているのか、絵柄もいつも以上に可愛かったです。
結構引き出しの多い人ですね。今後の活躍も期待出来そうです♪

以下他の収録作品の紹介。
・「ポエムに恋して」(あきらかなお)
百合姫S VOL.1掲載作。女子が女子のことを思って相手の机でひとりHしてしまうシーンがあるのが話題になった作品ですね(笑)。はちゃめちゃな作風で個人的にもイチオシの作品です(笑)。
恥かしい詩を声に出して読んでしまい周りを困らせているポエマー少女が、先輩に恋する話。意を決していざ告白してみたものの「私のバミューダトライアングルが熱くなる」だの「私の花弁の蜜をささげたい」だの恥かしい詩を普段から口にしていたため、全く驚かれず「いまさら」と思われてしまうオチが面白いですね。先輩の縦笛をこっそり(?)吹いたりと真っ黒なネタが入ってるのは相変わらず。最後日記もポエムもどっかにいってしまうムチャクチャなオチも面白い。

・「interface」玄鉄絢
病気で亡くなってしまったえなちゃんが生前自分の中身だと言ってヒロインに渡した七宝焼を身に着けている主人公をえなちゃんに見立てて気持を伝えてみたらどうか、と提案する話。えなちゃんの編み込みが綺麗ですね。先生が休んでいた間の1ヶ月はえなちゃんのお見舞いに行っていたという設定など、よく読まないと話が分からないというネックが少々ありますが、個人的には玄鉄絢のエロなし作品としては「星川銀座四丁目」と並ぶ傑作だと思っています。

・「接触」(速瀬羽柴)
百合姫VOL.13掲載作。この作品めちゃくちゃ好きなんですよ。
恋人同士が普通にするキスやデートという行為が「そういうのよくわからなくて」という主人公の真幸が「じゃああたしと付き合ってみる?」と言われ、軽いやりとりから友だちの英梨ちゃんと恋人関係の真似事を始めてしまう初々しいです。
デートの前も「これくらいいつもやってるじゃない」という真幸ですが、当日の朝はいつもより3時間も早く起きてしまい、手をつないで歩くことも意識してしまいます。教室でカーテンの影に隠れてこっそりキスをするのは女子同士でないと出来なさそうなシチュエーションですね。
いずれするから……と鏡を見ながらキスをする練習する真幸が可愛いですが、英梨は忙しくなってしまい「『お付き合い』はそろそろやめようかなって」と言い出されてしまい、ショックを受け、キスをする時用にと用意していた可愛い服も投げつけてしまいます。しかしその場ではショックを受けている気持ちを押し隠し、「短い間だけど一応お付き合いしてたわけだし、せっかくだからキス位しておかない?」と言い出し英梨も快く「いいよ」と最後にキスをすることになります。「はじめてじゃないし」という言葉にまた真幸には傷ついたと思うのですが、恋をしていた証としてしたキスは一生の思い出に残りそうな、印象的なお話でした。

・「桃色吐息」(MATSUDA98)
百合姫S VOL.4掲載作。親切にされたことから惚れてしまった相手あまみに手玉に取られながらも相思相愛っぽいカップル。あまみは女の子の扱いが妙に慣れてるところが、逆にちどりの心配の種になってしまっているのが面白い作品でしたね。
この作品はこのサイトでも人気がありましたし、再録されて嬉しい人は多いのではないでしょうか。

・「生徒会の花ドロップ」(丸美甘)
第4回一迅社コミック大賞・ぱれっと部門入選作。百合姫S VOL.9掲載作。なぜか人気キャラだったおもちも再び登場しています(笑)。
自分の好みで書記の女の子を入れたヒロインの生徒会長、副会長、書記の女の子も含めて女子同士四角関係になってしまいますが、最後意中の女の子とキスできて良かったですね。ハプニングではありますが(笑)。
この人の作品は個人的にも面白いと思うし、人気も取れると思うんだよなぁ。せっかく一迅社に投稿したのにレギュラーにせずスクウェア・エニックスからこっちに引き入れられなかったのは惜しい。それとも、この作品はもともと百合姫の部門賞ではなくぱれっとの部門賞だったということで、作者さんの方の百合作品を描く意欲の方に問題があったのでしょうか。分かりませんが。

・「初情2(はつじょうじじょう)」(谷村まりか)
百合姫S VOL.11掲載作。小学生の時、ハプニングでキスをしてしまって以来、相手のことが気になってしかたがなくなり、ついエロい目で見てしまい、やましさを感じるヒロインのお話。欲情してる姿がいやにリアルで面白いですね(笑)。この作品もお気に入りです。

・「夏の始まり」(吉富昭仁)
「熱帯少女」&百合姫S VOL.8掲載作。スクール水着姿で押し倒してる少女同士の絵がカラーで収録されていて良い感じですね。やっぱりこの人の百合はエロいなぁ(笑)。
お馬鹿なポーズを取りながら何度も飛び込む少女達が元気だなー。冗談でセクシーポーズをとる相手に欲情してキスをしようとしたり、自分の好きなところを言わせたり、最後は水着を脱いで真っ裸の相手に本当にキスをしてしまったり、何気ないやり取りの中でいちゃつく2人の姿が、理屈抜きに良いですね。

・「愛話〜あいわ〜」(さわななお)
百合姫S VOL.10掲載作。デビューするきっかけになった投稿作ですね。いきなりキスしたりしてアプローチが意外と激しいですが(笑)のりちゃん可愛い。

・「PIERCE」(倉田嘘)
百合姫S VOL.3掲載作。結果的に倉田嘘先生のデビュー作になることになった作品ですね。単行本未収録作品です。
10年ぶりに故郷に帰ってきた幼なじみのことを未だに好きで、気持が抑えきれない主人公が良いですね。更衣室で着替えてる所に出くわしてお互い赤くなってしまうあたり良い感じ。

・「森の館に棲む花たち」(柚葉せいろ)
百合姫VOL.8掲載作。吸血鬼にさらわれた少女2人の話。吸血鬼などいなくて実は男たちの相手をするために騙されていただけとも解釈できてしまう物語の仕掛けは面白かった。「サガフロ」のアセルス編を思い出しちゃいましたね。

・「秘密の宮園」(すこやか)
百合姫S VOL.12掲載作。今回はすこやか先生の作品だけ2本も載っています(笑)。
仲良くなるためにはキスをすればいい、と吹き込んで影で見て笑ってる菫と杏が凶悪で笑った。しかし仲の良いこの2人が実際にキスをしていないとも限らないでしょう(笑)。
女同士のカップルの間に出来た子供とかアンドロイドとか、濡れパンが決定打とか、相変わらずどこをとってもむちゃくちゃなんだけど面白いので全て良し!(笑)

・「アーケイディア 楽園の花」(水野透子)
百合姫VOL.10掲載作。この作品は、基本的に作品が単行本化されない予定になっているらしい「百合姫Wildrose」に続編が掲載されている都合上、単行本化は難しいという話を作者さんが以前されていたんですが、これで読めるようになりましたね。
リボンにキスしようとしてるものの透けて触れないシーンとか切なくて良い感じ。記憶は残っていても、病気でみっともない姿だった自分の事を話したくない気持は分かる。

・「POOL」(直江まりも)
百合姫S VOL.10掲載作。学校のプールに忍び込んで2人で遊び、その間に意中の広野さんに告白しようと押し倒した加藤さんですが、途中で風紀の有馬さんに邪魔をされ、溺れて気を失った有馬に勘違いして人工呼吸しようとして広野さんの代わりに、自分が人工呼吸……というかキスをしたものの、それを見て嫉妬もしてくれない広野さんを見て、自分の恋が実りそうもないことに気付く、切ないお話でした。しかしキスをされた有馬さんは加藤さんのことを意識しまくりで、キスされたのに気付いて真っ赤になって逃げ出したりラブラブで可愛いですね。
切なかったり甘酸っぱかったりする女子同士の恋を爽やかに描いていて、このお話もお気に入り作品のひとつですね。

・表紙(柏原麻実)

これはもちろん描き下ろし。お花畑で花冠をお互いにつける少女2人という、ベタすぎて最近では誰もやらなくなったような気もする百合シチュエーションが楽しいですね(笑)。
描いてるのは柏原麻実先生。女子たちの体の線がわりと出ているような気がするのは気のせいでしょうか(笑)。柏原麻実先生は特徴的なキャラクター絵を描く人なんですが、意外に絵柄の幅も広いですね。


今回はやはり新人百合作家さんの受賞作が良かったですね。普通に本誌に載っていてもおかしくないようなクオリティの作品ばかりでした。
再録された作品も良い作品ばかりでしたね。再録とはいえ、単行本化されたのは巻頭の吉富昭仁先生の作品だけで、あとは全部単行本未収録ということで、雑誌百合姫のバックナンバーを持っていない人にも貴重な本になるんじゃないでしょうか。

VOL.1の紹介はこちら
VOL.2の紹介はこちら。