ROSE MEETS ROSE
慎結
百合度★★★★★(5.5)

第2回百合姫コミック大賞で紫水晶賞をとって「百合姫Selection(3)」にも受賞作が掲載された慎結先生の初百合姫コミックスです。
慎結先生はまだ百合姫本誌やSには作品が掲載されたことはないということで、この単行本に収録されている百合作品は完全に描き下ろしなんですね。これはすごい……!

今回の単行本も、中身は完全に少女漫画でしたね。絵柄も安定しているし、少女漫画家としてもすでにプロの実績があって百合オンリー。単行本も素晴らしい内容でした。同性のだからこそ描ける、深くてドロドロしていて、それでいて可愛い女子同士の濃密な少女漫画を楽しむことが出来ましたね。
少女漫画好きの私には特に嬉しかったです♪

以下収録されていた読みきり百合漫画4話の感想。
・「声のない歌」
恋人に振られたことから言葉が出なくなってしまった転校生の少女まい。
そのまいを描いた絵からまいに惚れ、いきなりヌードモデルを申し込んでヒロインの縁は殴られてしまいますが、実は以前の学校での恋人というのは女性の先生で、まいはその先生にはヌードモデルも許していたんですね。
誰とも言葉を交わさず、無表情のままの美少女まいですが、先生にはそこまで許していて、教師をやめたから一緒に海外に暮らそうと電話をかけてきた先生の言葉には「せんせいにあいたい……。せんせいのいないところなんて居場所じゃない。しゃべることなんてなにもないの」と言葉も発し涙を流して、初めて心を見せます。
その姿を見て泣き崩れるヒロインが対照的ですが、他の人の前では言葉も発さず笑顔も見せることはなかったのに恋人の前ではヌード姿までためらわず見せ、それを今後も続けられることを心から嬉しく思うまいの表情が印象的ですね。

その後縁が記憶を頼りに描いたまいの絵は笑顔はないものの、それを見た友達には「すっごく幸せそう」と指摘されてしまいます。
縁にとってまいの笑顔を見る機会は少なかったでしょうが、絵が無表情になったのはそのせいではないと思うんですよね。最後に一度だけ見せたまいの笑顔は、強烈に印象に残っていたはずです。
しかしずっと見たかった笑顔は自分に向けられたものではなく、他の人に向けられたそれはむしろ一番見たくなかったものだったのでしょう。だから無理に笑顔のない顔を描いても、縁にとっては悔しい、一瞬見せた幸せそうな表情が絵にも表れてしまっているのでしょうね。

最後結ばれないけど個人的にはこの作品が一番好き。

・「バラ色の人魚」
単行本のタイトルはこの作品の内容から来ているんでしょうね。扉のカラー絵でバラの花びらがたくさん浮いている中で一緒にバスタブに使っている少女2人の姿が描かれていますが、これも多分この作品の2人でしょう。

互いに相手の事を好きになった時から肌にバラの模様が浮かぶようになった2人。
それを怖いと思う久住さんですが、一方北川さんは「素敵じゃない。”バラ色”なのよ。何よりもこのアザが大切なの」と自分の肌にあざが浮かぶことは嫌でないどころか、それを嬉しくさえ思ってしまいます。
しかし、それを怖いと思っている久住さんのため、自分が嫌われるような行動をとる北川さん。泣きながら打ち明ける「やっぱり、どうしても好き……」という言葉に、久住さんも全身に花が咲いたような錯覚を覚え、2人で恋人同士になろうと決意する展開が良いですね。

バラのアザは、世の中の多くの異性愛者たちから奇異な目で見られたりするかもしれなくても、本人たちにとっては美しいもので、2人だけの嬉しい共通点であることなど、女子同士の恋愛の難しさと甘美さを象徴した刻印なのかもしれませんね。

・「花と手錠と」
幼い時にいたずらされそうになって、相手を殺してしまった罪に怯え、2人で秘密の約束を作り世間から隠れるように生きてきて、それが隠す必要がなくなった後も、お互いの意思でそれを続けようとする2人のお話。
柚香のお気に入りのばんそうこうが廃盤になっても一生あげることが出来るくらい山のように買い占めていたり、罪の意識や世間の好奇の目で怯えさせ、女の子の社会的に弱い立場を逆に利用してまで相手を自分から離れていかないようにする南子は屈折した一途さを持っていますね。

例えばこれが男だったら女の子の柚香を変質者の手から守ることも出来ますし、その方が格好良いんでしょうけども、それが出来ず屈折した手段で自分を繋ぎとめようとする南子の一途さが可愛いのは、女子同士の関係ならではでしょうね。

・「DoRoTHY」
生徒会で雑用ばかりして心を失っていた凪子ですが、生徒会長の任期も終え、眠り続ける呉田さんに毎日キスをし続けるうちに心を取り戻したから、呉田さんも目が覚めたのかもしれませんね。
好きだった女の子に振られ、行くあてもなく一時は死のうとすら思って帰る場所がないと感じていた呉田さんの帰りたかった場所とは、印象的だった花壇の世話をしていた、心を取り戻した凪子の元だったのでしょう。
自分が帰りたい場所がお互いの元だと気付いて、2人は一緒にいることで幸せに暮らせそうです。


■異性に対する憧れから、男性キャラが薄くなってしまうことは少女漫画では時々あるんですが、もちろんこの作品は女子同士の関係のみを描いているのでそんな心配もなく、同性のだからこそ描ける、深くてドロドロしていて、それでいて可愛い女子同士の濃密な少女漫画を楽しむことが出来ましたね。

「百合姫Selection(3)」にも慎結先生の作品は収録されているんですが、絵柄もストーリーも仕上げも、全部格段に向上していました。作者さんが本気がうかがえる1冊となりました。

百合姫にはまだ掲載されたことがない新人さんということで、拙いのではないかと心配される方もいるかもしれませんが、もう白泉社の少女漫画の方では単行本を2冊くらい出されているんですよね。実力も申し分ないです。


今回の単行本も、中身は完全に少女漫画でしたね。絵柄も安定しているし、少女漫画家としてもすでにプロの実績があって百合オンリー。単行本も素晴らしい内容でした。
少女漫画好きの私には特に嬉しかったです♪