さくら文通
ヒマワリソウヤ
百合度★★★★★(5.5)

レギュラー連載ではなかったですが「百合姉妹」の頃から良い作品を寄稿されていた作家さんですね。百合姫では「日輪早夜」というペンネームを使うことが多かったですが、結局「百合姉妹」時代に使っていた「ヒマワリソウヤ」というP.N.で単行本が出ることになりました。

大正時代のエス文化を描いた世界、中世ヨーロッパ風の世界、幽霊のような存在の少女が出てくる世界や、はたまた動物耳の幼女が同じく幼女のお嬢様にHなご奉仕をしそうになるお話など(笑)、いろいろな世界の作品が読める作品集になっています。

この作者さんの百合作品は、どこにでもいそうな女の子同士の話というのはほとんどなく、幽霊がチラッと出てきたり現代でなかったり、何かしらファンタジー要素が少し入っていることが多いですね。
これは男性同士の恋愛を当事者がリアルに描くのではなく、女性が想像で考えることで世界が成立しているボーイズラブを作者さんが描いていたということも関係しているのでしょうか。面白い特色になっていると思います。

描き下ろしで巻末に収録された作品「さくら文通-アナザーストーリー-」は現代を舞台にした、一応非現実的要素はないお話になっていましたが、ラブレターの返信を桜の木の洞に置くとか、やっぱりちょっとファンタジックな雰囲気はある……というか、そういう雰囲気に憧れる少女を描いているんですね。雑誌掲載分だけを読んだ限り、作者さん自身も女子同士の恋愛にファンタジーな雰囲気を求めていることがうかがえましたが、多感なお年頃の少女もそういうものを求めているということは多いと思うし、描き下ろし漫画ではそういう部分も達観したところから描けているのが良かったですね。
雑誌掲載分の「さくら文通」はオチが読めるような展開でしたが、描き下ろしのアナザーストーリーでは最初からすでにオチを明かしたところから描いていて、その辺も一段上のところから描けているなぁと感じました。

雑誌掲載時からちょいちょい手直しされているのですが「くちなし」は特に大きくされていますね。
トーンが変えられたり背景の花びらにも追加されたりしているんですが特に着物!

雑誌掲載時は各キャラ冒頭に着ていた一種類しかなかった着物の柄が、日が変わるごとに変わっています。手間がかかったでしょうに、作者さんの着物姿の女の子への拘りが感じられますね(笑)。

あとがきでは昔百合パロの同人誌をよく読んでいたという作者さんが、友人が「百合姉妹」に誘われたのをきっかけに、当時の担当さんに打診して、担当さんには戸惑われてるっぽかったけどなんとか「百合姉妹」〜「百合姫」に掲載出来るようになったというエピソードが語られていました。
今まではBLでお仕事がメインだった方のようですが、pixvでは女の子絵も多く描いていますし同人では百合風味漫画も描いておられるようですし、百合作品を描くことは本当にお好きそうですですよね。

以下各話&描き下ろし要素の詳細。
・「ご主人様と一緒」
お嬢様にご奉仕すつために遣わされたうさ耳幼女。姉に会えず寂しくて泣いていたところを慰めてあげるのですが、キスをして服も脱ぎだし……実はうさ耳幼女は性的な意味でも慰めることをしつけられていたのでした。
なかなかすごい話ですね(笑)。

描き下ろしカットでは、うさ耳幼女がお嬢様のおでこにちゅーをしてあげていました。まだセックスをするには早いから、今はこれだけ、といううさ耳少女の気遣いもあるんでしょうかね。赤くなっているお嬢様が可愛いです♪

・「星に願いを」
仲良しだった少女3人のうちひとりが星になってしまって、残された2人がいろいろ一緒に考える話です。終始星空を背景にしていて、雰囲気も良いですね。
成美が死んでしまい、死を受け入れられない美琴ですが友人の鳥子は結局彼女に死を分からせるよりも、生前宇宙飛行士になりたがっていた成美が本当に星へ行ってしまったと2人で考えようと、星に願いをかける展開が印象的ですね。

この3人は巻頭のカラーの扉絵でも描かれています。まだ3人とも生きていて幸せだった頃にじゃれあっている絵ですね。こちらもバックの星空もあわせて、3人の姿が綺麗です。

・「さくら文通」
大正時代に木の洞に手紙を入れて文通していた相手と最後顔を会わせるショートストーリー。自分が相手のイメージ通りか気にして、正体を明かす前に探りを入れる相手の少女が良いですね。

・「くちなし」
大正時代が舞台のお話。憧れていた上級生の咲子さまにふとしたことから声をかけてもらい、望んでいた「エスの関係」になれたのですが……というお話。大正時代という設定のせいもあるんですが非常に辛くて切ない結末で、印象に残りますね。

・「晴れに舞う雪」(日輪早夜)
騎士(♀)とお姫様。ファンタジー系の百合ですね。香水の臭いが同じで誤解したり、雪のあまり振らない地方でなんとかもう一度見せてあげようとしたり、姫のために影でこつこつ努力する女騎士が微笑ましかったです。

描き下ろしカットでは、お姫さまと女騎士がキスをしようとしている絵が。まさにこれからするという場面ですね。赤くなってる2人が初々しいです♪

・「コスモスの咲く庭」
髪に挿してあげようとしたコスモスが幽霊少女には挿さらずポトリと落ちてしまうシーンが少し悲しいですが、相手が無事だったことも分かり、ラストシーンは、再びやってきた少女が手にコスモスを持っていて、今度こそ挿そうと思っているんでしょうね。


今読み返していて気付いたんですが、騎士×王女のカップリングとか、ラブレターの相手が身近にいた厳しい友人だったとか、比較的最近出た他作品と基本設定が似ている作品が何本かあって、最近百合好きになった方はその辺が気になるかもしれません。しかしヒマワリソウヤ先生がこれらの作品を「百合姫」、あるいは「百合姉妹」に投稿したのは随分昔ということもあって、たいていの場合こちらの方が先に発表されたということはちょっと注釈を入れておきたいと思います。
また大正時代のエス文化を描いた作品など、基本設定自体は昔からあるものでも、伝統的な物語構造に独自の色をつけていて、ヒマワリソウヤ先生ならではの百合世界が楽しめますね。

毎回バラエティに富んだ百合作品を寄稿されていてどれも世界観や女子同士の関係に趣があり、寄稿されるのは時々でしたがこの人も百合的に持ってる人だと思いますよ(笑)。