オクターヴ(5)
秋山はる
百合度★★★★★(5.5)

子供の頃からの夢だったアイドル時代も終り過去も今は色あせ、田舎に帰ってきても予想外な冷たい周りの反応に耐え切れずまた都会に出てきて、そこである日出会った節子さんと恋に落ち、女性同士秘めやかに恋をしつづけていくお話、「オクターヴ」最新刊です。

5巻では最初の方でちょっとしたことから喧嘩になってしまった節子と雪乃。しかし節子は仕事、雪乃は帰郷という、予期していなかったしばらくの間の別離が逆に功を奏し、やはりお互い一緒でないといけないことを再確認出来ましたね。そしてお互いに考えをためこんでいないで、もっと自分のことを話し合うことの大切さも学んだようです。
雪乃はまた少し成長して、節子さんと一緒に暮らしていくという、何気ないけど意外に努力も必要なことに立ち向かう力も身につけつつあるように感じましたね。

以下各話紹介。後から考えると、そんなに詳しくあらすじを書く必要もなかったんじゃないかとも思うんですが、作品世界に入り込んでしまうので、気がつくと毎回あらすじ紹介は長くなってしまいますね。
第25話
ちさとの曲を担当することになったことを雪乃に告げる節子。話すことに少しためらいはあったようですが、やはり隠しておくことはせず、すぐに話すことにしたようですね。
結構なお金が入りそうだから2人で使えると雪乃を楽しい気分にさせようとする節子ですが、売れてなかった時代の事を隠すため名義まで変えて曲をかかなければいけないという条件に怒る雪乃。やはりちさとが自分の持っているものを全部持っていってしまうような焦燥感もあったようです。そんなわだかまりせいで、せっかく弟は就職先も決まり部屋を出て行き、ひとりになった部屋で「一緒に暮らしたい」と雪乃に電話する節子に対しても、即答は出来ず「考えてみますね」と応えてしまいます。

第26話
雪乃は勤めてる事務所で繭という新しいアイドルの子の面倒を見ることになるのですが、あっけらかんとあれこれ話す繭のパワーに押され、何をしたくて生きているのか、という言葉に反応してかつてアイドルを志していた頃の自分のことを思い出したりして、自分の夢はなんだったのか思い返します。
繭に綺麗だと言われて嬉しくなってしまったりして、やはり雪乃はアイドル事務所の中で埋没している今の生活で完全に充実している、というわけではなく、注目されたいという気持ちは残っているんですね。

しおりが、自分が振られたと繭に言っていたことで自分のことがバラされてしまったのではと一瞬ヒヤリとする雪乃ですが、しおりは自分のことを言っただけで雪乃のことは言わなかったんですね。優しい。

アイドルとしてデビューする14歳まで、見られる自分だけが夢だったという雪乃は、それが叶って、そして終わったことで、自分がからっぽのように感じるようになったようです。節子弟の「どうしてそんなに自分に自信が無いの?」という問いかけに「私は――強いですよ?」と答えるのも、これも見られる自分を作ってしまって本心を隠してしまったからかもしれません。
そして節子に一緒に暮らそうと言われ「考えますね」と返してしまったことも……。

いろいろあって考えた末にやっぱり自分には節子しかいないと思い返し、帰った後は自分も一緒に暮らしたいとちゃんと応えるのですが、コロコロ変わる雪乃の返事についに節子の方が怒り出してしまい言い合いに。部屋を飛び出たものの節子に追いかけてきてもらいたいと思う雪乃ですが節子は追いかけてはこず……。

第27話
ちょっとしたことから喧嘩になってしまった節子と雪乃。5日も会っていない状態になってしまいますが、雪乃はマネージャーとしてしおりのプロモーションの仕事に、次第にのめりこんでいくようになります。飲み会の席で、節子がもう一度アイドルになってしおりと絡めばなどと接待相手には言われるものの、あくまで自分はしおりのプロモーションにつとめようとします。
一方節子は仕事でちとせと会うことになり、この曲は自分の愛する人……つまり雪乃のことを想って作ったものだと、自分と雪乃の関係もちさとに打ち明けますが、ちさとはそれにすら感動して……。

第28話
しおりと打ち合わせをする雪乃ですが、ついつい自分と節子さんがギクシャクしていることの相談になってしまいます。
節子との馴れ初めを聞いて、最初はナンパされるように出会ったものの、女性だったことから安心して身をゆだねてしまったと語る雪乃に、聞いていたしおりは節子に染められていった雪乃のことを想像して、「すごいことになっちゃってます……」と真っ赤になってうつむいてしまうシーンは面白いですよね(笑)。
しおりは雪乃とは対照的で、この作品の中では面白い存在です。
そんなしおりに、完璧に隙間ない世界を求めているんじゃない、と聞かれ、欲望は底なしですからとも言われて雪乃は自分について考えてしまいます。

休みなく熱心に働いていたことから、休暇をとらされて帰省することになった雪乃ですが、今度は節子さんは連れて行かず1人での帰郷となります。しかしそこで出会った旧友に、いきなり節子さんが自分の彼女だということを指摘されてしまい……。

第29話
節子さんの家に久しぶりに訪れた理沙。節子に同性愛の気があることは気付きつつも知らない振りをしていたという理沙は、自分には全然気のなかった節子に少し焼きもちも焼いていたようですが、どれくらい本気だったのか、今でもそういう気持ちがあるのか気になりますね。
一方実家に戻った雪乃は、鴨ちゃんに彼氏が出来、うっかり彼氏に節子と雪乃の関係を語ってしまったことから、田舎中に2人の関係がバレてしまったことを鴨ちゃんに詫びられます。その場では自分たちが喧嘩別れし、今は大沢君と付き合っているなどと嘘をすらすら言って自分はもうそういう関係ではないことを鴨ちゃんからみんなに伝えてくれるよう言い、彼氏が出来た事を祝福してあげる(振りをする)雪乃ですが、やはり簡単に許すことは出来ない強い感情があったのでしょう。というか当然ですね。
「鴨ちゃん、さよなら。永遠に。もう二度と会いたくない」と雪乃が思ってしまうのも、分かるような気がします。

母親にも自分の噂はデタラメだから気にしなくていいと言って安心させる雪乃ですが、「雪乃のことは信頼しているから大丈夫」と言われ、逆に辛かったでしょうね。
この辛さは、母親が同性愛をしない娘を信じていることに対する辛さではなく、鴨ちゃんがしゃべったせいで故郷でゆっくりすることも出来ない状況や、本当のことを話せなかった弱い自分に対する悔しさではなかったかと思うのですがどうでしょう。

第30話
故郷から東京に戻ってきた雪乃。節子さんとは諍い後初めての再会だったのですが、離れていた時間が2人にとっては頭を冷やす良い機会になったのでしょう。再会した時も以前のような刺々しい雰囲気はなく、相変わらず「さん」付けではあるものの雪乃は節子さんに対してタメ口でそれまであったことを堰を切ったように話し始めます。鴨ちゃんが結果的に自分たちのことを周りにバラしてしまった一方、自分がしおりちゃんに自分たちのことを相談してしまったことなども話し合い、雪乃は節子が理沙と昔付き合っていたのではないかと疑っていたことを告白(別にそういうわけではなかったようですね)。節子はすぐ真莉のことを口に出す雪乃が実は気があるのではないかと疑っていたようですが、もちろんそんなこともなく、雪乃は真莉に限らず世界中の誰とも節子が違う、自分にとって特別な存在で、愛していることを伝えます。
アパートの前で口付けを交わす2人。今夜は一緒にいて、と耳元で囁く節子。2人は熱い夜を過ごしそうですね。


5巻はややシリアスモードが多いですが、「雨降って地固まる」のことわざどおり、2人の仲もこれまで以上に深くなり、その後一日中えっちをしてしまうような展開が待っています(笑)。

以下31話の紹介。残念ながらこのエピソードは今回の単行本5巻には収録されておらず、6巻冒頭に収録されるので、単行本だと来年まで待たなければいけないでしょう。それまで待てない!という人はアフタヌーン9月号が品切れになる前におさえておくと良いでしょう。

第31話。前回お互い気持ちを打ち明けあって仲直りした節子さんと雪乃。熱い夜を過ごすんじゃないかと予想していたんですが、その通りになりましたね。
朝裸で節子の隣で目を覚ます雪乃、一方節子さんは起きることが出来ず、「キスしてくれたら起きる」などと言っているのですが、唇でなくお尻の方に口付けしてしまう雪乃が大胆です(笑)。お尻に手をかけた雪乃は、さらに節子のお尻の奥のほうまでキスをしてしまったようにも見える?(笑)
そしてご飯を食べに外出する2人ですが、節子さんは我慢出来ず「ムラムラしちゃった」と途中で寄るはずのコンビニもキャンセルして一路帰宅。そしてまたセックスを。
翌日観葉植物の手入れをする2人ですがその後もお風呂でセックス。「ちょっとやせた?」と聞く節子さんですが、どこを見て言っているのかと思いきやバスタブの縁に腰掛けて自分の前で脚を開いている雪乃の脚の間から覗き込みながら聞いているのでした。どこのお肉を見てやせたと気付いたんでしょうね?(笑)
さらに料理をした後もセックス。
雪乃はまるで部屋が節子さんの匂いで充満したかのように感じますが、実際は2人の匂いで充満しているんですね。
その行為の多さは、毎日一日中セックスばかりしていていて仕事がはかどっていないのではないかと雪乃が思わず心配してしまうほどです。
しかしもう節子さんは隠し事をするようなことはしないと言って安心させてあげます。
もう2人で一緒に暮らしていくんだから隠し事はないと言ってくれる節子さんに、雪乃は改めて自分達が一緒に暮らしていく事を実感し、「これからよろしくお願いします」と頭を下げ、節子さんも意識して赤くなってしまいますが「こちらこそ……お願いします」と応えます。

可愛い下着をプレゼントしようと言い出す節子さん、2人は下着も一緒に部屋の中に干しているので、雪乃の下着も見てしまったんですね。ボロボロのパンツを見られて恥かしがる雪乃ですが、これからはお互い、全部見せるんだから何も隠す必要はないと節子さんはまた雪乃を安心させてあげ、雪乃は節子の元こそ自分が帰っていく場所なのだと再確認します。
一緒にお風呂に入っても「雪乃のためだったら、私死んじゃってもいいかも……」と言い出し、何を言うのかとたしなめる雪乃ですが、気を取り直した節子さんが、自分達がまるでバカップルみたいと言い出して今度はふくれてしまいますが、やっぱり幸せそうですね。

セックスもして自分の身体も何もかも相手に隠さない生活にだんだん慣らして、徐々に引越しも始めている2人は、2人暮らしの準備が着々と進んでいる様子がうかがえますね。

それにしても今回はセックスシーンが多い!(笑)
この作者さんの描く女性同士のセックスシーンは、男性向けのギトギトしたものとも、低年齢向けティーンズラブのキャピキャピした雰囲気とも全然違うんですが、しっとりとした独特の雰囲気があって魅力的ですよね。


ところで皆さんはこの作品、どのように読んでいるのでしょうか。
狭い世界で節子1人を頼って暮らす、可哀想な女の子の切ないお話、というように読んでいる人も多いのでしょうかね。
私はそういう感想とは全然違って……実のところ、雪乃のことをうらやましく思いながら読んでいるんです。なぜなら私の世界はさらに狭いから……。体調がもうちょっと良ければ行ける場所も増えるし、世界も広がるんでしょうけどね。部屋にお風呂はなくとも東京まで出てこれて、節子という魅力的な女性に出会えて小さいながらも幸せな空間を共有することが出来ている雪乃は私にとっては理想ですね。もちろん世界各地を回ってもっと広い見聞を持っている人や、そういう人を描いた創作作品はいくらでもありますが、そういう話は絵空事にしか感じません。しかし雪乃の場合は私と近いだけに、より身近な理想としてうらやましく感じられてしまいます。
多分雪乃はこれから節子さんと一緒にいることで安心感も得て、さらに世界が広がっていく展開になるんじゃないかと思いますが、私にとっては今の雪乃の暮らしでも充分理想ですね。
こういう読み方をしている人が他にいるのかどうか分かりませんが、私はそんな風に雪乃の世界に憧れながら毎回お話を読んでいるのです。

ところでこの作品、次号6巻で最終巻なんですね。

5巻の巻末に載っていました。「ガルフレ」に続いて、「オクターヴ」も終わってしまうんですね。
素晴らしい作品が次々終わってしまうのは寂しいですが、どちらの作品もどんどん女子同士の恋人関係は深くなって別れの匂いもありませんし、大団円に向かっているのでしょうね。
まだ第6巻の第1話が掲載されただけのこの時点での発表ということは、打ち切りということもなさそうです。人気もますます出てきている作品ですし。6巻で完結するということは「ガルフレ」同様、多分作者さんの中で決めたことなんでしょう。
5巻掲載分も素晴らしかったですが、大団円に向けた展開になるであろう6巻も本当に楽しみです。


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