この靴しりませんか?
水谷 フーカ
百合度★★★★★(5.0)

今回つぼみVOL.8と同時発売されるのは、水谷フーカ先生の童話シリーズ!
公式によると…。
歯医者で「誰か」に靴を片方だけはき間違われた千晶は、仕方なく片足に「誰か」の靴をはいて帰るのだが…? 現代のシンデレラ達を描く表題作など童話をモチーフに瑞々しいタッチで描かれた水谷フーカ初の百合作品集。描き下ろし作品も2本収録。
というわけで描き下ろしが2本も収録されています!

・「その後の音楽隊」
描き下ろし1本目は「はみだし音楽隊」の後日談。春子がいよいよ真紀とデート!春子はもう浮かれっぱなし!…なんですが、これは部活のため楽器を会に行くということだけなんですね。これをデートというかどうかどうかは周りには疑問視されてますが、本人は全く意に介さずに「デートなの!」とはしゃぎっぱなしなのが良いですね。
この作品、ほとり→ロバート→春子→真紀→先生、の5人による一方通行の片想いを描いているんですよね。
一番周りを見ていたようにみえたロバートも、結局恋のため盲目になってるのが面白いです。

・「金の靴、銀の靴」
描き下ろし2本目は「この靴しりませんか?」を、お嬢様の靴子さん側の視点から、「金の斧」を新たにモチーフに使いつつ描いたお話。
外見に全く無関心な瀬田さんと反対に、高級そうな靴を履いているお嬢様っぽい靴子さんは対照的な生活をしていたんですが、背丈も同じくらいで、片方の靴を持つ相手の女の子が気になってしまうという共通点もあって、やはり似たところもあったのでした。
金の靴にも銀の靴にも関心は持てず、自分が元々履いていた靴を履いているはずの相手の女の子に会いたい気持ちが募っていく様子が、瀬田さんの様子と似ている部分もあって面白いですね。

つぼみブログでもよく見るとカバーイラスト候補の中に混じって掲載されていますが、扉絵で瀬田さんと靴子さんが仲睦まじそうに微笑みあっているイラストも良いですね。

裏表紙に「わたしのアヒルの子」の美加と千穂がいないですが、表紙裏の折り返しにいますね。千穂は内気なんで、表に出て悪い虫がつかないよう美加が匿ってあげているのかもしれません(笑)。幼稚園の頃から一緒で、これからも「ずっと一緒!」と誓っている2人は、本編の終わりで一緒に住む物件を探していますが、裏表紙折り返しのところでは不動産屋の前で物件を選んでいて、いよいよこれからルームシェアがはじまりそうです。

「雪のお姫さま」の団長と翔子は裏表紙にいるのにヒロインのマナがいないのは可哀想な気がしましたが、表紙の折り返しのところにやっぱりいました(笑)。やっぱり祥子のことを追いかけているんでしょうね。健気です(笑)。
あとがきページでもいちゃついてる翔子と団長によって後ろに追いやられていて、まだ恋が実る様子がないのが哀れなんですが、個人的にはこの子が一番印象的でした(笑)。

以下各話紹介。
・「この靴しりませんか」
靴をかたっぽ持ってかれてしまったヒロインが、持って行った相手の女性が気になってしょうがない、ガール・ミーツ・ガールな話。見えない相手のことをあれこれ想像し、徐々に気になっていってしまう展開が面白いですね。
やや引きこもり気味ですが、社会人百合というのも良いです。しかし靴が一足しかなくてそれがスニーカーって一体?と思ってしまいました(笑)。雨が降ったら翌日出かける時どうするんでしょうね?ドライヤーで乾かす?それとも毎日出かけるという発想自体がなかったりして(笑)。

・「オオカミの憂鬱」
女の子を簡単に一目惚れさせてしまうという能力を持った女の子好きなデパガが、靡かないゴスロリ少女に振り回されて自分が逆に一目惚れしてしまったことに気付くお話。
結局は赤頭巾ちゃんの方が一枚上手だったようですが、2人の駆け引きが面白いですね。

・「わたしのアヒルの子」
暗くてひとりぼっちの女の子千穂を、綺麗で皆から人気がある女の子美加がかまってあげて、それだけではなくて恋心まで実は持っていて、独占欲を捨てなきゃ、と思う美加と、依存から抜け出さなきゃ、と思う千穂とすれ違ったりもするものの、やっぱりお互い好きあっていてやっぱり2人一緒にいるのが一番、と開き直って「千穂は私のもんって言ってんでしょ!」と美加が人前でも叫んでしまうラストが清清しいですね。
私はタイプ的には完全に千穂みたいな人間なんですが、こういう作品を読んでると美加のようなタイプにも感情移入して読めてしまうから不思議です。

・「雪のお姫さま」
マナという少女が翔子という少女と演劇をやることになり、団長の女子に相談を……というお話。
カイの目に氷の欠片が入って心が変わってしまうシーンを、コンタクトのエピソードと上手く絡めていますね。よもやそのカイが目覚めないまま終わってしまうのは予想外でしたが、団長の悪女っぷりも笑いました(笑)。

・「はみだし音楽隊」
春子は真紀が自分のために厳しくしていると思ったからこそ、頑張れたんでしょうね。それが少し違っていたと知って途中気持ちは揺らいで辛くなってしまいますが、やはり真紀のために頑張ることが出来て、真紀も認めてくれたようです。


途中から気付いた人が多いと思いますが、水谷フーカ先生がつぼみVOL.6までに寄稿された作品は毎回童話がモチーフになっていたんですよね。ちなみにモチーフはアンデルセンの「雪の女王」、「みにくいあひるの子」「シンデレラ」、グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」「赤ずきん」が収録されています。

水谷フーカ先生は、毎回最初から最後まできっちりとしたストーリーで構築した百合短編になってるのが魅力ですよね。