それが君になる
袴田めら
百合度★★★★★(5.5)

単行本を見てびっくり!ほんとに描き下ろし部分がめちゃくちゃ多いですね。全体の3分の1くらいが、陽×雨音&雪のその後の展開を描いた描き下ろし!これは読み応えあります♪

雑誌掲載分では雨が降ってくるシーンがあって、多分梅雨時だったんじゃないかと思うんですが、雑誌未掲載の単行本描き下ろしパートでは季節は夏に変わっていて、名前通り雨音の気持ちが明るい方向に向かっていったことが分かりますね。
雑誌掲載分だけの印象と、単行本全部を読んだ時の印象は、かなり違ったものになる作品になったと思います。

あとがきの4コマ漫画も描き下ろしなんですが、本編で思わず「かにのアレルギーなの!」と言ってしまった雨音のため、陽が「だめぇー!死んじゃう!」と必死になって、雨音の代わりにかにを食べてあげようとして2人で取り合いになる展開が。店の忘年会なのに陽はよくここまで乗り込んできましたね(笑)。

同じく描き下ろしのカラー扉ページでは陽が雨音にケーキをアーンしてあげてるシーンが。ラブラブになった様子が分かりますね(笑)。

以下描き下ろしのラストまでの展開も含めてストーリー紹介を。
公式サイトの紹介によりますと…
五木雨音は学生時代に恋焦がれた相手にそっくりな少女・柏木陽と出会う。
外見は瓜二つなのに、その中身はまるで正反対で、
明るくまっすぐな陽はなんのてらいもなく雨音を慕う。
面影を思い出すのがつらい、目の前の少女があの日焦がれた“彼女”でないことがつらい……。
行き所を失くした想いから、陽を突き放そうとする雨音だったが……。
この作品、ヒロインのひとり、陽は前作「この願いが叶うなら」でメインキャラだった3人娘のうちのひとり、陽なんですよね。ストーリーとしては独立しているのでこの作品から読んでも全く問題ないです。ちなみに陽だけでなく、よく見ると月子や海も今作にちらっと登場しています。
海と月子と違い、前作では誰とも結ばれなかった陽のことは気になっていたんですよね。今回の作品では果たして誰かと結ばれる展開になるんでしょうか。雑誌では最終話までは掲載されておらず、結末は単行本でしか分からないということで、単行本は気になるところですよね。

表紙、月がバックに出てますがゲストで月子が出てくるような描き下ろしがあるんでしょうか?
…とか予想してたんだけど、やっぱり登場していた(笑)。単行本の宣伝してます(笑)。


大人になったヒロイン雨音が出会った少女は昔の恋人そっくりで……という第1話。過去エピソードですが、ヒロインが女子同士エッチもしていた過去を思い返すシーンが結構センセーショナルです。
第1話の時点では、陽は名前も出てないんですよね。そのせいで前作のメインキャラだということに気がつかなかった人も結構いるようです。

「なぜ、こんなことに」で始まるイントロは2話連続ですね。それにしても陽の傍若無人ぶりや、「かにのアレルギーなの!」「えっえっそうだったんだごめんねっ。死んじゃうの?」「え?あ…うん…」等のやりとりは笑った(笑)。
雨音は昔付き合っていた雪という少女と幸せな時間を過ごしていたようですが、別れた後はそれが逆に雨音の心を縛ってしまっているように見えます。

雨音の家に転がり込んできた陽が、ちゃっかりお風呂もいただいて裸Tシャツでくつろいで、雨音が「どうしてこうなったのだっけ……?」と自問する展開から始まるのはやはりという感じで期待通りでした(笑)。
その後の展開は意外でしたね。過去の彼女、雪が男と付き合って妊娠までして破局してしまったことは、やはり雨音には大きな心の傷が残ったことでしょう。恋人に構ってもらえず、寂しかった分自分を身代わりに関係をしていたことを許せない雨音ですが、陽の取った行動は逆。自分は身代わりになってもいいとキスをし、それ以上のことも受け入れようとします。
しかし雨音はそれは出来ません。許せなかった雪と同じ行動を自分がすることに、自分が許せなかったのでしょうね。
「もう目の前にあらわれないで」と突き放すのですが……。

しかし雨音は別れた後、身代わりを拒否するのは自分自身が振り切らなければいけない過去を引きずっているからだと気づき、もう一度会いたい気持ちが浮かび上がってきます。
顔が昔の彼女と同じ事で、かえって一緒にいるのが辛いのではないかと気付いた陽。すれ違ってしまった2人ですが…。

以下雑誌未掲載分の単行本描き下ろしのその後のストーリー。

やっぱり陽の姿を探してしまう雨音は、陽が拙くキスしてきた際、子供だから怖くて仕方なかっただろうにと、自分の気持ちだけでなく、相手のことを気遣うことも出来るようになってきましたね。

過去を引きずっている自分を省みることが出来始めた雨音、そして陽も雨音に気持ちを伝えてそれがダメだったらそれで終りで気持ちから追い出す…と考えると、そんなことは出来ないと気付き、互いの気持ちが少しずつ分かり始めたようです。

2人は相手のことを考えることが出来るようになったからこそ、再会した際にはもうすぐに仲直り出来ることが出来たんでしょうね。不器用に雨音が謝ろうとしているセリフも一応あるんですが、実際は言葉もいらなかったのでしょう。

その後デートもすることになって、待ち合わせの場所まで辿りつくまでに、思わずニヤけてしまう雨音が可愛いです。

雑誌掲載分の本編には登場してなかった雪ですが、単行本では登場していましたね。
しかし雪に出会ってももう雨音は以前のように心がかき乱されることもなく、逆に昔雪のことを気遣ってあげることも出来なかったことを謝れるくらい、精神的に成長して、完全に吹っ切ることが出来ました。

その後デートでは「陽かわいい」とほっぺをぷにぷにしたり、陽の方からちゅっとキスしたり、ラブラブなところが描かれていました。

雨音の閉ざされた心を陽が開いてあげる日が来たんですね。

背表紙や、最後のシーンのデートで来ている雨音の服装も、薄着ということもあるんですが、気持ちまで軽やかに見えます。

以前は別れた彼女、雪のことで頭がいっぱいだった雨音は、陽と付き合うようになってからは陽のことが常に頭に浮かぶようになったものの、以前のように閉ざされた関係ではなく、別れた雪のことを思いやる心遣いも出来るような、開かれた関係になることが出来て、雨音は彼女と付き合いながらも、前向きに生きていくことが出来るようになったんですね。


袴田めら先生が「会長と副会長」の連載を開始する前に、百合姫Sに寄稿されていた読み切りの「黒い瞳の魔女」もやはり、今回の単行本に収録されていましたね。

・「黒い瞳の魔女」
同性同士の恋愛を全く考えていなかった主人公ですが、ある日後輩の女の子から告白され、改めて同性同士の関係について考える話。
酔っ払っていたところを押し倒す相手はなかなか凶悪ですが抵抗しなかった主人公も満更でもなかったような感じなのが良いですね。
女性同士の恋愛についてはまだ思考が追いついてないものの、告白してきた少女の黒く深い目に魅入ってしまって身も委ねることになって、理屈でどうこうというよりは、感覚的なところで先に受け入れてしまう、これも袴田めら先生らしい作品でした。
この作品も好きだったので、収録されてるのは嬉しい♪


「この願いが叶うなら」(百合姫コミックス)の紹介はこちら



「会長と副会長」(百合姫コミックス)の紹介はこちら



「夜空の王子と朝焼けの姫」(百合姫コミックス)の紹介はこちら



「わたしの大切なともだち」の紹介はこちら



「暁色の潜伏魔女」の紹介はこちら。



「最後の制服」の紹介はこちら