液体のエリクサーが安定して存在すると考えると、ユニットの死後、大気中に逃げていくエリクサー分子数と、大気中に蒸気となったエリクサーから地中に飛び込んでくる分子数が釣り合っている。


この時、空気中に蒸気化したエリクサーの蒸気圧と空気の分圧の和が常に高い値を出していることから、(僕の村にはいつも雨が降らない)

多くのエリクサーは地中に埋蔵されていることが推測できた。



こうして、僕は地中からエリクサーを掘削し、集めたエリクサーでもう一度だけ彼女を作ることに決めた。




僕は彼女を作るために万全を喫した。早朝から深夜まで研究データを集めるため、特にここ1年ほどは、ほぼ家に帰らず研究所で寝泊まりしていた。



休みの日には埃をかぶってしまった部屋を掃除し、新しい彼女の衣服や生活日用品を揃えた。彼女のほころぶ笑顔を思い出しながら、ホワイトストライプスのCD、度数の低いリキュール、炊飯器、ケチャップ、それかられんげの蜂蜜を買うのも忘れなかった。



およそ、すべてのデータが揃った時、僕は15年間働き続けたラボを自主退職した。ラボからの退職金は、雀の涙ほどしか降りなかった。



彼女を作るためには莫大なエリクサーが必要だったが、地中からエリクサー掘削する新技術はそこそこ成功を収めた。

エリクサーはあっという間に集まり、僕はすぐにエリクサーからタンパク質や脂質の抽出を開始することができた。


それから2週間ほど経った頃だったか。



「久しぶり…もう夏なのね」



試験管から眩しい光が溢れ、懐かしくて優しい声がした。彼女は何度か瞬きをして、長い睫毛が揺れた。



すぐにゴム管を抜いて、彼女と連結する管を取り除いた。ソファにかけていたバスローブを彼女に着せてそのまま彼女をたぐりよせた。


「おかえり。おはよう。」


こわばっていた体が徐々に柔らかさを取り戻し、凍っていた血がゆっくりと体を巡り始めたようだった。
 

「なんか、年取ったね」


「そうだね。あれから、随分と経ってしまったからね」



彼女は当時の姿のままであったが、僕は10年以上年を重ねてしまった。白髪としわが増え、お腹は少し弛んでしまった。彼女は少し寂しそうで憂げな顔を何度か見せたが、それでも相変わらず優しかった。



エリクサーから蘇生した僕の彼女は日光に強い嫌悪反応を見せた。




僕が用意した小花柄のワンピースは部屋のオブジェとなり、
その代わりにそれまで部屋のオブジェだった鎧が彼女の白い肌を覆った。




鎧の彼女との生活の始まりだった。