数年前の大雪の日 

うちはど田舎で、それなりに雪には慣れてたけど 
その年はうちに地域でも記録的な大雪になった 
雪で道路が交通止めになって、両親が職場から帰宅できなくなった 

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家には当時高校生で冬休み中だった俺一人 
俺は「今こそ俺が家を守らなきゃ!」と変に燃え上がり 
雪が小降りになったところで、張り切って屋根の雪下ろしを始めた 
いつもは父親と二人でやってるけど、一人でも割と手際よく出来た 





そこまでは良かったんだけど、屋根から降りようとハシゴに足をかけた瞬間 
何故かグラッとはしごが傾き、俺ははしごの一番上につかまったまま地面に叩きつけられた 
柔らかい雪の上なら問題なかったんだけど 
ガチガチに湿った根雪の上に後頭部と背中を強打して、そのまま気絶した 
雪掻きしていたのは午後2時だったんだけど、気がついたときは薄暗かった 
うちの辺りは、冬は夕方4時には薄暗くなるし大雪の日だったのでもしかしたら3時くらいだったのかも知れない 
だから多分気を失ってたのは1時間弱だったと思う 
起き上がろうとしたが、めまいが酷くて頭も起こせなくて声も出なかった 
うちは隣の家とは400m以上離れていて、しかも山に続く道の最後にあるので 
あの天候の中、誰かが通りかかる事は考えられない 
雪下ろしは汗をかくので、コートの下は速乾性のシャツ一枚だけでカイロも貼ってなかった 
この時点で「俺死ぬのかな」って真剣に考えた 
動けなくて仰向けに倒れたまま、ぼんやり空を見てたけど、その空がどんどん暗くなって 
しばらく止んでいた雪も、また降り始めた 
周りが暗くなっていくのが、自分の命のカウントダウンに思えた 


もう諦めて寒さも感じなくなってきて、このまま寝ちゃおうか、と思考放棄しかけた時 
小さな灯りと歌声が聞こえた「あ、俺死んだんだ」と思った 
そうか死んだんだ、もう大学受験の勉強をしなくて良いんだ、って少し笑った 
ピカって眩しい光を感じて目を開けると、懐中電灯を持った隣の奥さんと小学校の息子さんが立ってた 
母親がお隣さんに電話して、お隣に一泊させてもらうように頼んでくれてて 
奥さんと息子さんが迎えに来てくれてた






奥さんが救急車を呼んでくれたけど、雪で来られないとの事で 
近所の引退した元お医者さんを呼んできてくれた 
その間、息子さんが家の中から持ってきてくれた毛布で 
俺の頭を揺らさないように気をつけながら、手足や体をこすってくれてた 
その時になってやっと声が出るようになった 
元お医者さんが来て、目の前で指を動かして俺の眼球の動きを見て、色々質問した 
首を固定されて、やっと家の中に連れて行ってもらった


手足の凍傷の有無や、怪我がないか診察してもらって 
その日は絶対にお風呂に入らないように言われた 
俺としては熱い風呂に入って体を温めたかったけど、それは厳禁された 
その夜は、お隣のご夫婦が泊まり込んで一晩中看病してくれた 
次の日の午後、除雪車が来てお隣さんの車で病院に連れて行って貰った 
幸い脳に異常がなく、ムチ打ちにもなっていなかった 
両親とは病院で落ち合った 
母親が泣いて、父親が何度もお隣さんに頭を下げてた 

あの時お隣さんたちがうちに来てくれてなかったら、間違いなく死んでた俺の人生最大の修羅場