1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:15:34.43 ID:Jd7tgrzT0
綾乃「来週から中学校ね! 塾も中学校の内容に入ったし、気合入れていかなくっちゃ!」

綾乃「……とは言っても、中学校の勉強ってなかなか難しいわね」

綾乃「特にこの地理と歴史……覚えることが多すぎるじゃないのよぉ!」

綾乃「グランドキャニオンだのバッキンガム宮殿だの、こんな大量の固有名詞、どうやって覚えれば……」

綾乃「バッキンガム宮殿――!?」

綾乃「ばっきん……罰金、バッキンガム……」

綾乃「罰金バッキンガム……」

綾乃「罰金バッキンガム! これよ!」

綾乃「頭に残って覚えやすいわ! こうやって覚えていけばいいんじゃないのかしら!」

綾乃「そうと決まれば明日塾のみんなにも教えてあげましょう!」

綾乃「罰金バッキンガム!」←気に入った


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:17:23.29 ID:QV567xjlO
綾乃かわいい


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:23:32.70 ID:Jd7tgrzT0
翌日、塾にて――

綾乃「みんなー、おはよー!」

学友A「おはよう、杉浦さん」

学友B「おはよー!」

学友C「杉浦さん、今日はなんだか元気ね」

綾乃「へへーん、元気いっぱいよ! 私すごいことに気付いたんだから!」

学友B「すごいことー? なにそれ、教えてよー!」

学友「私も気になるわ」

綾乃「聞いて驚かないでちょうだい?」

学友A「ゴクリ……」

綾乃「罰金バッキンガム!」

A・B・C「……へ?」

綾乃「『罰金バッキンガム』みたいにしてダジャレで覚えれば、地理に出てくる言葉を簡単に覚えられる!」


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:30:06.39 ID:Jd7tgrzT0
学友A「あ、あぁー……」

綾乃「どう? すごい発見でしょ!」

学友C「うーん……」

学友B「えーっと……」

綾乃「ど、どうしたのよみんな? みんなもどんどんマネしてくれていいのよ?」

学友C「何と言うか……」

学友B「ぶっちゃけ、普通に覚えればいいじゃん」

綾乃「へっ?」

学友A「地理の教科書は一通り読んだけれど、あの程度なら普通に教科書を読んで覚えた方が早いわ」

綾乃「いや、でもほら、量が多いじゃない?」

学友C「そ、そうかしらねえ?」

学友B「普通に覚えられるよねえ?」

学友A「申し訳ないけど、杉浦さんのはただの言葉遊びとしか……」

綾乃「うぅ……」


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:35:59.92 ID:Jd7tgrzT0
綾乃「だって……グスッ」

学友C「あっ……」

綾乃「いっぱいがんばって……考えたのに……ヒグッ」

学友A「いや、違うのよ? 確かにああいうのも面白いとは思うわ。だけど結局は言葉遊びであって……」

綾乃「罰金バッキンガムとか……安心アンコールワットとか……いっぱい考えたのに……エグッ」

学友B「ひどいセンスだ……」

学友C「あっ」

綾乃「ひどい……センス……?」

学友C「す、杉浦さん、たぶんB子さんのはつい口から出てしまっただけというか……」

綾乃「つい口から出た……つまり本音……」

学友C「あっ、えっと……」

綾乃「もうみんななんか勉強ばかりしてお勉強マシーンになっちゃえばいいのよーーー!!」ダッダッダッ

学友B「い、行ってしまった……」


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:43:38.50 ID:Jd7tgrzT0
あれから二、三日経って、私は塾で居場所がなくなりました。

「杉浦さんって、あの子……」ヒソヒソ

「罰金バッキンガムって……センスを疑うわよねえ……」ヒソヒソ

「地理に出てくる固有名詞ぐらいふつう覚えられるわよねえ……」ヒソヒソ

綾乃「うぅ……」

学友B「杉浦さん」

綾乃「あっ、B子さん……」

学友B「罰金バッキンガム……プフーッ!!」

綾乃「!?」

学友B「おーいみんなー、杉浦さんに罰金バッキンガムしてきたぞー!」

アッハッハッハッハッノヽッノヽッノ \ッノ \!!

綾乃「うぅ……ヒグッ……」


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:49:30.97 ID:MzNooacc0
やめてあげて…


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:50:21.25 ID:Jd7tgrzT0
その時私は思ったんです。

全部、私が幼いからいけないんだ。

私が子供だからみんなに笑われるんだ。

でも入学式まであと三日。

三日程度の期間で大人になれるわけ……。

だから――中学校に入ったら、誰とも話さずにいよう。

それがきっと、私のためなんだ。

そう、私は思ったんです。


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/24(土) 23:53:21.94 ID:Jd7tgrzT0
入学式当日になりました。

周りの子たちは早くも生徒同士で楽しそうに談笑しています。

私はと言えば――

綾乃「……」

綾乃母「どうしたの、綾乃ちゃん? 元気ないわよ?」

綾乃父「せっかくの晴れ舞台なんだから、笑顔でシャキッとしなきゃな!」

綾乃「……はい」

情けないことに、中学生にもなって母と父に心配されて、元気づけられているのでした。

綾乃「はぁ……」

京子「結衣ぃー! 入学式ってラムレーズン持って行っていいのかなー?」

結衣「バカ言ってないで早く行くぞ、遅刻したらどうする」

京子「はーい」

綾乃「……私にも、あんな友達が居たらなあ」


27:ID変わるので鳥つけます ◆bebTWfYpeo :2011/09/24(土) 23:58:37.98 ID:Jd7tgrzT0
入学式が終わり、クラスメイト同士の初顔合わせ。

担任の先生がひとりひとりに自己紹介を促します。

担任「それじゃあ前の席から順に……まずはそこのあなた!」

京子「あっ、もう?」

結衣「張り切って一番前の席に陣取るから……」

京子「なんも考えてないやー。えーっと……歳納京子、12歳。好きな食べ物はラムレーズンと結衣にゃんのくちび」

結衣「わー、ばか!」コツン!

京子「い、痛いよ結衣にゃん……」

教室中が笑いの渦に包み込まれます。

いいなあ、あの子。あの人間性。

きっと、友達が多いタイプなのでしょう。私と違って……


32: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:04:43.38 ID:tTnPGCkf0
私も、あの……歳納京子さんみたいに教室をわかせてみたいけれど……

罰金バッキンガムだなんて言った日には塾の二の舞となってしまうことでしょう。

罰金バッキンガム……いいと思うのになあ……。

そんなわけで、私はできるだけ目立たないように……。

綾乃「杉浦……綾乃です。趣味は……ええと……特にありません……」

京子「ええー? 趣味とかないのー?」

私にだって趣味ぐらいある……。

ここ最近は毎日ダジャレを考えている、そんなささやかな趣味ぐらいあるけど……。

でも、そんなこと言ったら、またみんなに……。

担任「杉浦さん、ありがとう。次の席の人、どうぞ」

そうこうしている間に、結局私は親しみやすさをアピールするチャンスを失ってしまいました。

でも、これでよかったんだ。

中学校に入ったら誰とも話さずいようって決めたんだから――


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 00:12:49.24 ID:zDZexOte0
綾乃と京子の馴れ初め話って原作でもまだないんだっけ


37: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:12:52.06 ID:tTnPGCkf0
初顔合わせも終わって――次の学年集会まで、みんなが思い思いに友達を見つけようと話して回っています。

だけど、私は――

綾乃「……」

話しかけられません。

嫌われるのが、怖いから。

笑われるのが、怖いから。

それなのに……前々から誰とも話さないって決めていたのに――

どうしようもなく寂しいと思ってしまう自分が、そこにはいました。

私は、ズルい子だ。

浅ましくて独りよがりで都合がよくて。

自分でも、なんて自己中心的なんだろうとつくづく思います。

だけど……やっぱり寂し――


41: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:19:55.32 ID:tTnPGCkf0
「あのー、ちょっと、ええ?」

とその時、私の傍で声が聞こえました。

まさか私に?

でもそんなはずが……。

「き、聞いとぉ? 杉浦さん……やっけ?」

私に、話しかけてくれた!?

綾乃「……はい」

千歳「よかったー。てっきり無視されたかと思うたわー」

そう、こんな私にも興味を持ってくれる人がいたのです。

綾乃「あの……それで一体……」

千歳「いやな。杉浦さん、なんや寂しそうな顔してたから……誰かとしゃべりたいんちゃうんかなー、思うて」

綾乃「うっ……」

この人、私のこと――

千歳「やっぱり図星かー? 図星やったんかー!? 杉浦さんはさびしんぼさんやなー!」

綾乃「ち、ちがうわよー!!」


44: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:26:04.72 ID:tTnPGCkf0
千歳「おっ、やっと元気になってくれたなー。杉浦さーん」

綾乃「あの……いや……これは……」

千歳「隠さないでもええって」

綾乃「うぅ……」

教室の片隅から、あの快活な少女の声が聞こえてきます。

京子「こいつはね、結衣って言ってね、私の嫁なんだよー!」

結衣「おいこら」

京子「いてっ! もーう、結衣にゃ~ん!」

生徒A「歳納さんってばおもしろーい」

綾乃「……」

千歳「……杉浦さんも、本当はあの歳納さんみたいにみんなと仲良くしたいんやろ?」

綾乃「でも……私……センスがないから……またきっとみんなに……」

千歳「センスがあるとかないとか、関係あれへんよ?」

綾乃「……えっ?」

千歳「大切なのは、仲良くしたいと思う気持ちや」


48: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:34:56.23 ID:tTnPGCkf0
綾乃「気持ち……」

千歳「そうやで、気持ちが大切なんよ。……杉浦さん。杉浦さんは……私と仲良くしたいと、思ってくれるか?」

綾乃「……名前……聞いてない……」

千歳「あ、これはうっかりさんやったなー!」

綾乃「……プフッ」

千歳「もぉー、笑わんとってやー。私は池田千歳。……千歳で、ええよ」

綾乃「千歳……」

千歳「そや!」

綾乃「私は……杉浦綾乃。……綾乃で、いいわ」

千歳「よろしゅうな、綾乃ちゃん」

綾乃「……よろしくね、千歳」

千歳「……そういえば。さっきの質問の答え、まだ聞いてないで?」

綾乃「あ……えと……えっと……」

千歳「そっかー、綾乃ちゃんは私と仲良くするの嫌かー。ならしゃあないわー」

綾乃「そ、そんなことない!」


58: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:41:31.57 ID:tTnPGCkf0
千歳「ほーぅ?」

綾乃「うぅ……えっと……私も千歳と仲良くしたいけど……」

千歳「……けど?」

綾乃「私……センスがないから……つまらないから……」

……嫌われるのが、怖い。

千歳「……なんで、自分がそんなにつまんない人間やって決めつけてしまうんや?」

綾乃「だ、だって……」

じゃあ、あなたは私の趣味を知ってもなお、私を受け入れてくれるっていうの!?

千歳「……自己紹介の時、趣味はないって言うてたけど……」

綾乃「!!」

千歳「……あれ、ウソやろ?」

あなたは、そうやって――

綾乃「……そうよ! ウソよ! 私、本当は――」

いけない、私。また二の舞を演じるつもり?

駄目だ。踏み止まれ。それ以上は――


61: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:48:17.36 ID:tTnPGCkf0
綾乃「罰金バッキンガム」

千歳「!?」

綾乃「こ、こっここここここれが私の趣味よ! 私の趣味は、こうやって勉強しながら単語でダジャレをつくって覚えるのが趣味なのよぉー!」

終わった……。

千歳「……プッ」

ほら、やっぱり笑われた。

千歳「罰金バッキンガムって……」

綾乃「な、なによ!?」

千歳「確かにそれは……なぁ?」

綾乃「だから言いたく――」

千歳「でも、かわいくてええやん?」

綾乃「……へっ?」

千歳「かわいらしてくて、いいと思うで。その……罰金バッキンガム」

綾乃「どこが、かわいいのよ……。だって罰金バッキンガムなのよ!?」


64: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:53:13.84 ID:tTnPGCkf0
「……プッ」

さらにどこからか、含み笑いが聞こえてきました。

京子「結衣ぃ、いきなりどうしたの?」

結衣「だ、だって、向こうで罰金バッキンガムって……ブフッ……面白くて……ププッ……つい……」

面白い? 私のダジャレが……面白い?

京子「罰金バッキンガムだとー? 誰だー、私の結衣を罰金バッキンガムで笑わせたやつはー!」

千歳「ここやでー! ここにいる綾乃ちゃんが考えた渾身のダジャレや!」

綾乃「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょっと、千歳!」

人が、わらわらと私の前に集まってきます。

「なにその罰金バッキンガムって。テレビで流行ってるのー?」

綾乃「いや、その……自分で考えたというか……なんというか……」

「なにそれ、かわいー!」

綾乃「うぅ……はずい……」

「寂しい夜は罰金バッキンガムで決まりだね!」

綾乃「ってなんでよー!」


66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 00:55:18.71 ID:5lMe+Err0
寂しい夜wwwwwwww


69: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 00:59:04.48 ID:tTnPGCkf0
塾で散々バカにされた私。

センスがないと笑われた私。

そんな私の目の前に、今は人が集まってきてくれています。

京子「綾乃ぉー、罰金バッキンガムの他にもなんかないのー?」

結衣「いきなり呼び捨てかよ! ……ごめんね、杉浦さん。こいつは京子。私は結衣。よろしく」

綾乃「……よろしくシックスフラッグス」

結衣「ブフーッ!!」

京子「なんだそれー! もっとおしえろー!」

綾乃「うぅ……」


70: 忍法帖【Lv=37,xxxPT】 :2011/09/25(日) 01:01:49.64 ID:I+w/+efq0
さすがにそれはないわ綾乃ちゃん・・・ワロタけど


71: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 01:01:50.45 ID:tTnPGCkf0
千歳「よかったなあ、綾乃ちゃん」

綾乃「……」

千歳「綾乃ちゃん……」

綾乃「……よかっただなんて思ってないないナイル川なんだからっ」

千歳「ツンデレかー?」

綾乃「ち、ちちちがうわよ! ……でも」

千歳「?」

綾乃「……ありがと」

千歳「どういたしまして!」


73: ◆bebTWfYpeo :2011/09/25(日) 01:06:52.45 ID:tTnPGCkf0
私は、どうやら思い違いをしていたようです。

嫌われるのが怖いから仲良くしない。

笑われたくないから話しかけない。

そんなのはただの逃げ。損をして終わるだけ。

歳納京子は、今日が初対面だというのに誰にだって親しげに話しかけています。

千歳は、こんな親しみにくそうな私にも、仲良くしようと話しかけてくれました。

その二人にとっても、きっと笑われたり嫌われたりするのはとてもイヤなことだし、やっぱりツラいことなのでしょう。

でも、そうやって何事にも踏み出せなければ、結局は何もできずに終わってしまう。

それだったら、思い切って勇気を出して、ほんの一声かけてみればいい。

そう、「友達になろう」と一声かけてみれば、それでいいのです。

私の一番大切な友人、池田千歳は中学校に入ったばかりの幼い私にそう教えてくれました――


千歳「なら、思い切って歳納さんに『恋人になろう』と一声かけてみればええんとちゃう?」鼻血ダバー

綾乃「ナ、ナナチュラルに人の回想を読まないでよー!!」



おしまい


74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 01:08:27.67 ID:bp9W4Fk60
えっ…?

お、乙…


75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 01:08:43.79 ID:KfmSHnb8O
千歳はかぁええなぁ~



76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/25(日) 01:08:49.67 ID:roR3vBOQ0
乙カレーライス