2010年の熱狂報告偏愛曲リスト2010

2010年05月05日

ポゴレリチ事件@ラ・フォル・ジュルネ

既にあちこちで言われているように、これは一つの事件でした。

とはいえ、ポゴレリチの演奏が変なのは別に今に始まったことじゃなくて、3年前のリサイタルのときも散々言われていたと思います。
あのときから話題になっていた彼の演奏の異常な点、特に「強弱のコントラストを思いきり強調する」「止まりそうになるくらいテンポを落としていく」といった点などは、基本的に今回も一緒でした。
ただ今回は、それを先日のフィラデルフィア管との共演と同じく「相手がある」状況下でやってしまったこと、そして「ラ・フォル・ジュルネ」という最高にハッピーなお祭り(普段からクラ聴く人がこの催しについて語る際には、何かしらタブーが意識されるような気がする)の中でやったことに大変なインパクトがありました。あの演奏を、真昼間に5000人の善男善女が集まって一緒に聴くという状況は、少なくとも日本では空前絶後では。

終演後にはブラヴォーとブーイング、拍手と怒号が飛び交う。怒りのあまり何か叫んでいる人もいましたが、よく聞きとれず。いや、そもそもブーイングすらこの音楽祭の中で今までに出たことあるんだろうか。

演奏自体は終始魔が潜んでいるという雰囲気で、私はひたすら惹き込まれました。とはいえ、後で考えると全体を通して驚くほど破綻のない演奏だったので、単に奔放にやってるのではなく綿密な計算の上に築かれたものだとは思います。
それだけに、乗れない聴き手にとってはひたすら「何やってんだ」という感じになってしまうところがおそらくあって、だからこそ怒りに身を震わせる人もいたんだと思いますが、まあそれはどんな名演でもあることでしょう。
(ついでながら、このマスタークラスの様子などを見ると、作曲家が楽譜に記した指示にすごくこだわる人だというのがよくわかる。まあプロだったら当然で、今さら言うまでもないんでしょうが)。

以前のリサイタルと同じく、舞台には楽譜を持って登場。興味深かったのは、スクリーンに映ったその表紙がШОПЕНと、キリル文字表記だったこと。もし彼が、モスクワ留学時代からずっと同じ楽譜を使い続けていて、今回の演奏に関する指示もそこに綿密に記しているとすれば、彼にとってあの曲の演奏があのようでしかあり得ないという強い信念の表れと言えるかもしれません。アバドと共演した時もあれを使ったのだろうか。

チチナゼ&シンフォニア・ヴァルソヴィアも素晴らしかったです。
とはいっても、結構評判高かったっぽい前半のエルスネルは私はひたすら眠かったのですが(やはりああいうのはピリオド・アプローチでやってほしい)、後半で一転。主張のある音でありながら気品もあり、スターの通り道に極上の絨毯を敷くかのようにソリストをしっかり支えていて、職人魂を感じました。

yusuke_1974 at 19:40│Comments(0)TrackBack(0)

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