偏愛曲リスト2010サロネン&フィルハーモニア管withハーン

2010年05月27日

新国立劇場『影のない女』

5月20日に行きました。もう1週間経ってしまってから書くのも何ですが、それ以上にどうも評判があまりよろしくないっぽく、ちょっと書きにくくなってます。

◇オケ
結論から言ってしまえばかなり楽しめたのですが、そもそもこのオペラは今までCDでしか知らず、舞台はおろかDVDですら観たことがない。コンサートで一部を聴いたという体験もない。なので、目の前で生でこの曲が鳴っているというだけで満足してしまった面はかなりあると思います。
あと、シュトラウスやワーグナー好きな人には「生で鳴ってるとどんな演奏でもそこそこ感動してしまう」という人が結構いると思うんですが、私もどちらかというとそう。モーツァルトやベートーヴェンではまずありえないのですが、ワーグナーなんかだと、許光俊がどこかで例えに出していた「良い酒だろうと悪い酒だろうとそこに酒があれば飲んでしまう類の酒飲み」に近いところがある。
とはいえ、シュトラウスの場合一応求める条件みたいなものはあって、例えば「響きの豊饒さ、艶っぽさ、官能性」とか「魔術的なオーケストレーションがちゃんと活きるように、各要素がきちんと整理されていること」とかいったもの。で、今回の演奏は最初この二つがやや欠けていたように思えました。
ということで、第一幕は結構いらいらして途中眠くなったのですが、第二幕辺りからオケが集中してきたのか私が慣れてきたのか、こういったことが徐々に気にならなくなってきました。第二幕の最後などかなり引き込まれました。最終的にはリヒャルト節を堪能した気分。
ただまあ、金管の強奏はちょっと勘弁してくれと思ったのも事実。

◇歌手
一番気に入ったのはバラクの妻。皇后は演奏は良かったのかもしれませんが、声が個人的にあまり好みではない。乳母は演技が鼻についたけど、あの役ならありか。皇帝は最初かなり期待させた割に、全体的にはまあ普通だった。オペラ関係なく行ったヨーロッパの都市で、たまたま歌劇場に入ってみたらやっていた公演という感じ。

◇演出
確かにそんなに冴えた感じはしなかったけど、ブーイングが出たり、「熱い」反発が多いのはちょっと意外…。このオペラに思い入れある人が多いのかなあ。
ただ気になったのはラストシーン。あとこのオペラの時代拘束的な部分の処理の仕方。この話、ちょっと打つ手を間違えると「子供を産む能力がない=悪」という理念が前面に出てしまう可能性があるわけで、これが書かれた当時の文脈でこの問題が切実だったのは確かにわかるのですが、やはり今やるならちょっと考えるべきではないかと思う。今回の演出では、そういうものをスルーするどころか、むしろ「家」を前面に出すことでかえって鬱陶しさを増強していたように思います。子供出してくるのも何だかなあ…。ベタ。
例えばマリインスキーでチェルニャコフが演出したグリンカ『皇帝にささげた命』などは、うまいこと作品を19世紀的ナショナリズムから救い出していたのですが、現代的演出に私が求めるのは変なアイデア合戦よりむしろこういうことです。
ただ、空間の使い方に圧迫感感じることも確かにあったものの、基本的にはあまり邪魔になるような煩いタイプの演出ではなかったように感じました。
うーん、4階席でオペラグラスもなかったから見えなかったものが多かったのかなあ…。パンフ見ると、演出家はこの話全部バラクの妻の妄想だったと考えてるようなのですが(クプファー演出『オランダ人』みたいなもの?)、見ても何だかよくわからなかったし…。それとも私が2000年代前半の3年間のボリショイ通いで、凡演慣れしてしまったのだろうか…。

yusuke_1974 at 22:07│Comments(2)TrackBack(1)

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1. R.シュトラウス「影のない女」op.65  [ オペラの夜 ]   2010年06月05日 11:05
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この記事へのコメント

1. Posted by dezire   2010年06月02日 16:01
4 初めて訪問させていただきます。
記事を興味深く読ませていただきました。作品を深く理解されているのに感服いたしました。いろいろ勉強になりました。私も新国立劇場でR.シュトラウスの「影のない女」を鑑賞してきました。私も初めての作品でしたが、音楽の構成力も含めて魅力ある作品に感じました。
私の感想などをブログに書きましたので是非読んでみてください。
http://desireart.exblog.jp/10678873/
よろしかったらブログの中に書き込みして下さい。
何でも気軽に書き込んでください。
2. Posted by yusuke   2010年06月07日 21:28
コメントありがとうございました。遅くなり申し訳ありません。
賛否両論の公演のようですね。私の感想は深くというよりむしろ表面的で恥ずかしいのですが…。

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