詩人ごんつ~寺山修司は古びない~

ネットの海に生のことばを 言葉の洪水に肉の輝きを あらゆる停滞にフレンチキックを twitterアカウント @keibatanteiG

さっそく記事を落としてしまった。「いけないいけない」と思いつつも、やっぱり書くことがない。

書くことがないから、昨日読破した谷崎潤一郎『春琴抄』の中から印象に残った一文を抜粋します。

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春琴の死後佐助がてる女を唯一ゆいいつの話相手とし折に触れては亡なき師匠の思い出に耽ふけったのもそんな関係があるからである後年彼は検校となり今は誰だれにも憚はばからずお師匠様と呼ばれ琴台先生と云われる身になったがてる女からは佐助さんと呼ばれるのを喜び敬称を用いるのを許さなかったかつててる女に語って云うのに、誰しも眼が潰つぶれることは不仕合わせだと思うであろうが自分は盲目になってからそう云う感情を味わったことがないむしろ反対にこの世が極楽浄土じょうどにでもなったように思われお師匠様とただ二人生きながら蓮はすの台うてなの上に住んでいるような心地がした、それと云うのが眼が潰れると眼あきの時に見えなかったいろいろのものが見えてくるお師 匠様のお顔なぞもその美しさが沁々しみじみと見えてきたのは目しいになってからであるその外ほか手足の柔かさ肌はだのつやつやしさお声の綺麗きれいさもほんとうによく分るようになり眼あきの時分にこんなにまでと感じなかったのがどうしてだろうかと不思議に思われた取り分け自分はお師匠様の三味線の妙音を、失明の後に始めて味到みとうしたいつもお師匠様は斯道しどうの天才であられると口では云っていたもののようやくその真価が分り自分の技倆ぎりょうの未熟みじゅくさに比べて余りにも懸隔けんかくがあり過ぎるのに驚き今までそれを悟さとらなかったのは何と云うもったいないことかと自分の愚おろかさが省みられたされば自分は神様から眼あきにしてやると云われてもお断りしたであろうお 師匠様も自分も盲目なればこそ眼あきの知らない幸福を味あじわえたのだと。
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ご覧の通り、すごい長さです。この小説はWikipediaいわく相当に実験的な書き方をされた作品で、本来ならば句読点がつけられるべき場所に句読点がなく、カギカッコもついていなければ全体を通して改行すら一つもありません。

青空文庫で無料で読むことができますので、ぜひご一読いただければ…とは言いません。そんなありきたりな締め方はしないのが私の主義です。と、いうわけで、このブログを読んだ方は絶対にこの本を読まないで下さい。興味を持っても、です。「興味なんてくそ食らえ」の精神でよろしくお願いいたします。




コラムを始めたが書くことがない。

書くことがないが、あと30分ほどでタイムリミットになってしまう。というわけで今日の晩ご飯のことでも書くことにしよう。

メインディッシュはクジラの刺身としめ鯖。クジラは同居している彼女の実家から送られてきたもので、種類はおそらくミンククジラ。これがすんごくウマイ。クジラは牛肉とマグロを足して2で割った味という言い方をよくされる。この例えは言い得て妙で、個人的にも肉と魚のいいところを合わせたような独特の旨味を感じる。しめ鯖は会社のお歳暮で余った物をいただいてきた。賞味期限がすでに何ヶ月も過ぎていたのだが、冷凍してあったので大丈夫と判断。

クジラにはすりおろしたしょうがを付けて食べるのだが、思いつきでしめ鯖にしょうがを付けて食べてみると、これが結構相性がよかった。しめ鯖のこってり感をしょうががうまい具合に打ち消して、とても食べやすくなるのだ。期限は切れていたが、満足度は高かった。

付け合せは一昨日に作って置いてあったもやしのナムル、ほうれん草のおひたし、そして今日作った筑前煮(風の煮物)。ナムルとおひたしは少なかったので完食。筑前煮は作りたてなのでまだ味が染みきっていない感じだが、だし汁を飲むとなかなかいいお味。明日には大根や人参に味がもっと染みてウマくなるだろう。今から楽しみだ。
 
そして主食の白ごはんと味噌汁。味噌汁の具材はたまねぎとしめじで、使用する味噌は仙台味噌。今日はオーソドックスな具だが、先日は玉子を落としてポーチドエッグ風にしたりと割りと挑戦的。このあたりは土井善晴氏の影響を受けていて「味噌汁は何を入れてもオイシイ」という説を信奉している。

 

「一日一筆」というタイトルをつけたが、なかなか書くことが見つからない。見つからないので、今朝目にした何気ない風景を。

春も間近に迫った快晴の水曜朝。出勤途中に横断歩道のない小さな交差点で車が過ぎるのを待っていると、右横に一人の中年サラリーマンがいた。彼は面白くもないという顔をしながら、しかし静かにまゆをひそめて煙草をくわえていた。僕はそれを視界の端に見ながら、車のなくなった交差点を歩き出した。

「快楽に浸る男の顔は悪くない」

盛んに嫌煙ムードが叫ばれる世の中だが、僕自身は嫌煙でも愛煙でもない。ただ、出勤前から煙草をくゆらせずにはおれない男を見ながら、「煙草は快楽だ」という先生の言葉を思い出していたのである。

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