詩人ごんつ~平成最後の2019~

ネットの海に生のことばを 言葉の洪水に肉の輝きを あらゆる停滞にフレンチキックを twitterアカウント @keibatanteiG

わからないことばっかりで
2018年が終わる
それでもいいと親指立てて
今年も深夜の初詣

ようやく冬になってきた
寒波が日本を覆ってゆく
それが何だ?笑ってやるわい
明日の日差しに屈託はない

どうぞ今年もよろしく頼む
不遜を承知で申し上げる
平成最後の年越しに
ひたすら低頭する野郎

案内された客室は2段ベット4つの8人部屋だった。1人あたりのスペースは決して広くはないが、一応ベッドの横にカギを付けられるロッカーがあったので、防犯用に持参した南京錠を使ってリュックをしまい、最低限の荷物とともにSのホテルへ向かった。あちらはホステルではなくきっちりしたホテルで、アソーク駅から北に出てわずか1分足らず。おまけに隣のビルにはセブンイレブンまであるという好立地だった。

到着時点ですでに現地時刻が夜の10時を回っていたが、Sの同僚(以後『T』)はまだ仕事中とのこと。老舗の物流系企業にありがちな長時間労働体質は、僕が以前勤めていた会社と似ているようだ。お疲れ様です。

とりあえずTと合流する前に腹ごなしをしようということで、ホテルから少し北へ歩いたところにある「ガイトーン」というカオマンガイのお店へ向かった。ここは世界的に有名なチェーン店で、日本の渋谷にも支店があるほど。ある意味カオマンガイのスタンダードを形成している存在だけに、タイ上陸後初めて味わうにはうってつけだった。

『ラーン・ガイトーン・プラトゥーナム』
https://www.bangkoknavi.com/food/399/

夜のバンコクは閑散として人通りも少なく、、、と思ったら大間違い。車とバイクは「これでもか!」というぐらいバンバン行き交っており、渋滞の密度も日本の比ではない。ヘッドランプとテールランプが織りなす異国の交差点の風景は、旅情豊というより過剰なまでの熱気と明かりに気圧される恰好で、むしょうにワクワクしてくる。

そして日本とまったく違うのが交通マナー。車両も歩行者も信号無視なんて序の口で、渋滞の波の中を人々が平然と突っ切っていく(しかも結構な大通りで)。「あぶないなあ」と最初は思ったが、「郷に入っては郷に従え」の精神で、これがこの国の常識ということは、もう旅行2日目には了解された。以降は僕もガンガン信号を無視していたことはいうまでもない。

さすが東南アジア、というべききったない川を越え、左折してしばらく歩くとお目当てのピンク色の看板を発見。夜の10時をとうに過ぎているというのに、店内は大入り満員で外にわずかながら行列もできていた。店内といっても、熱帯の国らしく内外の区別のない開けっ放し。外の歩道にもいくつかテーブルが出されていた。

少々待つと、道路に出た柱の前の4人掛けへ案内された。有名店らしくメニューはしっかりしたアクリル板で、当然のように英語名も書かれている。とりあえずSが店員を呼びつけ、2名分のカオマンガイを注文。1人前50バーツは日本円にして200円行かない程度だから、やっぱり安い(当時のレートは1バーツ=約3.4円)。談笑して待つ暇もなく、日本の牛丼チェーンかと思うほどのスピードで料理が到着した。

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▲タイ上陸後初の食事。ソースには青唐辛子がたっぷり。

まずその早さに驚いたが、料理の性質を考えれば得心がいく。カオマンガイは鶏肉とご飯を炊き合わせ、きゅうりを3~4切れ載せるだけのシンプルな料理だし、注文後に必要な作業は盛り付けのみ。こういった利便性も世界中で食されている理由のひとつだろう。

ナンプラー(魚醤)ベースのソースをぶっかけてパクっと一口。うん、普通にうまい。旅行の疲れで腹も減っていたが、鶏肉の柔らかさと炊き込みご飯の優しい旨味は想像していたカオマンガイのそれだった。そこにソースに入っていた青唐辛子の辛みが加わり、いかにも東南アジアに来たのだという感じがした。

ドンムアン空港バス乗り場からA1バスへ乗り込み、バンコク市内へ向かう。のちほど何度も利用することになるのだが、タイに限らず海外の路線バスというのは初心の旅行者にとっては利用がなかなか難しく、この時も目的のモーチット駅(BTSスクンビット線)で問題なく降りられるか心配だった。タイ語の発音は耳慣れない日本人にはやはり聞き取りづらく、看板を見落とせばたちまち乗り過ごしてしまうだろうと思ったからだ。

だが、その不安は杞憂に終わった。同じくドンムアンで乗り込んだ乗客の多くがモーチット駅で降りたことに加え、道連れの友達(以後Sとする)が機転を利かせて降車間際に、欧米人らしき別の旅行者に駅名の確認を取ってくれたのだ。このへんの機転の利かせ方は僕には発想もなかったので、正直すごくありがたかった。

彼はたまたま僕と同い年で、遅めの夏休みがこのタイミングで取れたため、急遽タイ旅行を決行したとのことだった。なんと飛行機から宿まですべての手はずを整えたのが旅行前日だったらしく、決断力と行動力に驚かされた。同じ飛行機に乗りながら、僕の方は往復4万円弱、向こうが3万円強だったあたりは、帰りの便の違いなのか、それとも直前ゆえに割引が利いていたのかはわからない。

Sはタイに駐在する同僚を頼ってこちらに来ており、初日からその同僚と合流して夕食をともにするとのこと。彼自身も会社の研修でタイに1か月ほど滞在していた経緯があるらしく、これほど心強いパートナーもまたといなかった。電車の乗り方から日本にも支店のあるカオマンガイの有名店の情報まで、色々なことを教えてもらった。

お互いの宿のあるアソーク駅に到着し、一旦それぞれチェックインしてから再びSの滞在するホテルへ集合という手はずで別れた。僕の取っていた「レスト・バンコク」というユースホステルはアソーク駅とプロンポン駅のほぼ中間に位置しており、事前に地図を見て想像していたよりかなり距離があった。おまけに到着時点で夜9時を回っていたため、あたりは暗くて道を何度も間違えた。初めて降り立った地での迷子は後から考えるとバカみたいだが結構怖いもので、ホテルに着けなかったどうしようと冷や汗も出た。

ただ、道を尋ねたタイの人々が一様に優しかった点には非常に助けられた。交差点で待機するバイクタクシーのお兄さんとおじさん、立派なホテルの車寄せ近くに立つキッチリした身なりのおじさんなどが、僕の不慣れな英語に熱心に耳を傾けながら助けになってくれたのだ。いずれも生粋のタイ人らしく、英語はほとんど通じない(もしくは僕の発音の問題で聞き取れないのかも)様子だったが、どこの馬も骨ともわからない男に向けてくれる態度は人助け以上の慈悲にあふれており、すでにこの旅行の成功というか、旅行先のチョイスが間違っていなかったことを確信させるには十分すぎるものだった。

そんなこんなでタイの方々に迷惑をかけつつ、2~3回ほど入る道を間違えながら、なんとかホステルへ到着。大通りから2本入ったかなり細い道の先で、暗いだけでなく隣のビルが工事中でほぼ廃墟のようになっており、なんともおっかない雰囲気ではあった。ただホステル自体は非常に現代的な作りと清潔な室内で、チェックインを済ませて荷物を降ろすとようやく安堵の気持ちが胸を浸した。


空港で荷物をピックアップし、市内へ向かうためのバス乗り場を探す。バンコク市内には空港が2つあり、1つが最もメジャーなスワンナプーム空港、もうひとつが僕の降り立ったドンムアン空港だ。スワンナプームの方が設備は最新鋭で、エアポートレールリンクという市街地直通の便利な列車も通っているため、空港のクオリティという点では上位に来るだろう。ただ、最近はやりのLCC(格安旅行会社)は多くがドンムアン空港発着となっており、実際僕の使ったノックスクートもドンムアン空港を拠点としていた。こちらはスワンナプームと違って市街地へ直結する交通網がないため(正確にいうと市街地につながる民営バスがいくつかあるのだが、勝手がわからないのでいきなり使うのはちと怖い)、BTS(バンコクスカイトレイン。「防弾少年団」ではない)の最寄駅であるモーチット駅までつながるバスを探す。

ちなみにだが、恥ずかしながらこの年齢まで1人で海外旅行へ行った経験がなかった。学生時代に何度か海外渡航の経験はあったものの、航空券の予約も含め、全部先輩や友人にほとんどおんぶにだっこ状態だったので、正直ビザの取り方すらおぼろげだった。「せっかくの長い休みだから、海外旅行ぐらい一人でできるようにしておこう」というのが旅の目的のひとつで、とくに空港と市街地の行き来は最初の関門だけに、しっかり準備をして間違わないよう下調べはきっちりやっておいた。下調べと言っても、ようはネットと『世界の歩き方』を使って情報収集しただけだが。

空港内をしばらく歩くと、目的の6番出口があった。入口前にブースがあってそこに何組かの外国人観光客が並んでおり、バス券でも販売しているのかと思ったが、下調べではバス代は乗り込んだ後に添乗員的な人が回収に来るということだったので、とりあえずスルーして脇の椅子に座る。バスの前に、一応Wi-Fiがつながるかどうか試したかったのだが、なかなかつながらない。使っているギャラクシー(サムスン製)は中古のせいか妙にポンコツで、ちょっとぶつけるとすぐ電池が切れたりするが、Wi-Fiの接続もイマイチで正直困った。インフォメーションセンターで話を聞き、オープンのプラットフォームを何個か試してみてようやく接続が保たれたのでひと安心。タイは基本的に日本よりもWi-Fiの普及が進んでおり、ホテル&ホステルはもちろん街中でも無料で使えるところが結構ある。成田空港で海外用Wi-Fiを頼もうかどうか迷ったが、無駄な出費を減らせたのはまあよかった。

6番出口付近のバス乗り口はA1~A4まで4つあり、モーチット駅を通過するのはA1またはA2のバス。僕が到着したときにはA1乗り場にすでにバスが待機しており、早速乗り込むことに。ここでバス乗り場のおばさんと話す一人の日本人らしき男を発見した。見た目の雰囲気から察するに、年齢は僕と5つ違わないぐらい。声を掛けたところ、彼も一人旅で市街地へ行く途中らしかった。しかも、どうやら似たような場所に宿をとっていることが判明。おまけに向こうは日系企業の現地駐在員の友人がいて、自身もタイに来た経験があるとのこと(前回はスワンナプーム空港から来たらしい)。しかもバスの中でさらに話を聞くと、僕が以前勤めていた企業と同業で、交流はないが互いに似たようなバックボーンを持っていた。うーん、なんというか日本は(世界は?)狭い。一も二もなく旅の道連れが決定し、1人旅で己を鍛えるという願望はいきなり神様のおぼしめしによって頓挫する形になった(もちろんめちゃくちゃ助かったのは言うまでもない)。


7時間あまりのフライトを終え、無事にタイへ到着。情けない話、飛行機に乗る時はどうしても「もし落っこちたら、、、」と考えてしまうので、なんとか片道をクリアできてほっとひと息ついた。目的地近くなると、飛行機ってたいがい乱気流に突っ込んでガタガタしない?雲の上から下を通過する時に起こるんだろうけど、なかなか心臓に悪い…。まあそれはともかく、今回使ったノックスクートは格安旅客会社ながら乗り心地は上々だった。機内はとても清潔で、かつ前座席との空間もかなり広く取られており、堅苦しさはほとんど感じなかった。閑散期とはいえ往復4万円なら御の字で、CAさんも美人で言うことなし。タイ旅行の際はぜひノックスクートをご利用くださいませ。

機内からタラップに降りると、さっそく日本とは別物のムワッとした空気が全身を取り巻く。うーん、あっつい…。タイは熱帯に属しており、寒い時期でも気温が25度~30度前後。日本から着てきたパーカーを脱いだものの、それでもまだ全然暑い。そういえば、今着てるのも含めてズボンは全部長ズボンだったような…。まあしゃあない、現地で買えばいいだろ、ということで、入国管理ゲートを越えて正式に入国完了。

預けた荷物が回転寿司みたいにコンベアに乗って出てくるエリアでリュックを待っていると、オレンジ色の袈裟を来た坊さんの集団がぞろぞろと歩いてきた。「おお~タイの坊さんだぁ」と心の中でバカっぽい歓声が上がった。

今回の旅の目的はいくつかあったけど、ひとつは仏教施設をはじめタイ人のメンタリティに触れることだった。タイは仏教を国教としており、国民全体が非常に信仰に篤いと聞いていた。メチャクチャ個人的な話だけど、最近宗教やら信仰やらの大切さを実感する機会が多かったので(うさんくさい話ではない…はず)、そのへんのタイ人の感覚というか、信仰の習慣やそこから生まれる人間性がどう日常生活に現れているのかを肌身で感じたかったのだ。

後々十分すぎるほど実感することになるが、タイ人はほんとうに優しい人が多い。『地球の歩き方』には「スリに注意」「話しかけてくるヤツは信用するな」的なことを結構書いてあったけど、ほんとにそんなことする人がいるんだろうか?と疑ってしまうくらいいい人ばかりだった。道を聞くとほとんどすべての人が親身になって考えてくれるし(言葉が通じないケースは多いが)、微笑みというかがっつり笑顔で受け答えしてくれるので、話しているだけで気持ちがいい。もちろん防犯意識は大切なので警戒しなさすぎるのも問題なのだけど、少なくとも「人のよさ」という意味ではタイはぜひ旅行にオススメしたいすばらしい国だと心から思う。ぜひみなさんも一度はタイを訪れて、カオマンガイとトムヤムクンをしこたま食ってお金を落としていきましょう。


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