2004年07月17日

偉大なり麗君

日本の友人が仕事で香港にやってくるというので、最近香港ではやっている上海料理の店を予約。友人の知人を交えたメンバー6人で巨大ショッピングモールの中にある某レストランへ乗り込んでいったのでした。

ちょっとおすまししたよそ行きの上海料理のレストランとしては草分け的な存在だった(という)このレストランなのですが、木曜日の夜8時半という時点にしてはちょっと客の入りが悪いんじゃない、という印象を受けました。しかし連れの日本人に言わせると、そう閑古鳥が鳴いているようでもないとのこと。どうやら私がいままで会話、嬌声、笑い声、その他雑音がこだましているような大衆中華料理屋ばっかり通っていたので、隣のテーブルの会話が一言一句聞き取れるという状態が妙にさびしく感じてしまったようです。

そんなこんなで、普段の「夕めし」とはちょっと違った雰囲気の中でお行儀のいい「ディナー」が始まったわけなのですが、数分もしないうちに突然レストランの入り口脇のスペースにバンドが登場。ウェイトレスのお姉さんがすばやくテーブルに置いていったメニューのような小冊子を開いてみるとそこにはリクエスト用紙が...リクエスト用紙の横には「金曲備忘」という題の下に曲の題名とその歌の出だしが書かれていたのでした。しかもよく見てみればこれすべてテレサ・テンの曲。

いやはや偉大なり麗君。若くして亡くなった台湾の歌姫の栄光いまだ衰えずといったところでしょうか。

面白いのは香港の人にとってテレサ・テンはよそ者だということです。といいますのも台湾人のテレサ・テンの歌はほとんど北京語で歌われているので、広東語をしゃべる香港人にしてみれば、ちょっとした外タレ。要するに日本人から見たテレサ・テンとか欧陽斐斐などと似たような感覚なんですね。

1993年の香港映画のヒット作「甜蜜蜜」では同名のテレサ・テンの曲を上手に狂言回しとした秀作です。物語としては大陸から香港へやってきた若いカップルのラブストーリーですが、この作品の中でも二人を結びつけるテレサ・テンの歌は香港からみた大陸、悪く言えばちょっと垢抜けないけれども純朴な中国人の思いを代表する象徴として描かれていました。

その全盛期には台湾人歌手ということで大陸では敵性音楽とされながら人目(耳?)をはばかってラジオに耳を傾けた大陸の中国人はもとより、世界中の華僑をファンとしていたというテレサ・テン。中国文化圏の中で彼女とちょっと距離を置いていたのは、北京語を田舎ものの言葉としてちょっと見下していた香港人ぐらいなものですが、その香港のおしゃれなレストランで中国人歌姫がテレサ・テンを朗々と歌い上げる時代がやってきたようです。

これというのもやはり大陸中国人の躍進が原因なんだなとしみじみと感じました。このレストランはもともと古きよき時代の上海を思わせるジャズバンド演奏が売りだったんです。でもそれは中国人以外が上海に対して抱いているイメージなんですね。それがテレサ・テンに変わったということは、最近このレストランに来る客はテレサ・テンを愛する大陸からの旅行客が多いということです。

孫文も、毛沢東も成せなかった中国統一を歌声ひとつでやりのけてしまった麗君。それこそ「時の流れに身をまかせ〜〜」じゃないですが、そんなことをしみじみと考えながら小龍包の汁をせせっていた一晩でした。

yutethebeaute999 at 06:43│Comments(0)TrackBack(0)やわらかめ 

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